携帯フィルタリングへの反応に思うこと:子供がみんなイノセントってわけでもないよね

 NTTドコモKDDIau)は2月1日から、ソフトバンクは1月中旬から、未成年者が新規契約した端末の携帯サイト閲覧機能に、フィルタリング(アクセス制限)を適用し始めた。大人が一方的に決めたこのルール。子どもたちは「まぢわかんない」「一部の悪い大人のせいで迷惑」などと、携帯サイト上でまざまな声を挙げている。

「まぢわかんない」「悪い大人を取り締まって」――携帯フィルタリングに未成年者の反応は - ITmedia News

実際にモバゲーを見て歩いたわけじゃないので実際の声がどんなものかはわからないけれど、ここで取り上げられているものを見る限りでは、非常に興味深い意見がたくさんある。

 「業者を取り締まるよりも使用者に規制をかけるほうがよっぽど楽だからフィルタリングをかけるんだと思います。根本的な解決にならないと思います」(14歳男子)

14歳といえども、なかなかクリティカルな意見を持っている。まぁ「楽」といえばネガティブに聞こえるけど、「経済性」とか「効率性」とかいえば多少それっぽく聞こえるから不思議なもんで。ただ、だからといって何でもかんでもローコストなやり方でいけばいいというわけでもないけどね。
そもそも、未成年者の保護ってのは、コスト度外視な部分もある。まぁ、社会として長期的な損失を回避するために、短期的なコストを惜しまないってのが正しいのだろうけど。ありがた迷惑な部分もあるかもしれないけど、よい部分も悪い部分も、未成年者の保護は未成年者のためだけに行われているわけじゃないんです。元凶の部分を何とかする根本的な対処も重要だけど、そこから未成年者を引き離すための予防的な対処も必要なのよ。

 「未成年者を規制するより有害サイトを取り締まってほしい」(15歳女子)

この辺の意見はわからんでもないのだけれど、問題はともすればそのモバゲー自体が有害サイト扱いされているということ。あと、違法サイトは取り締まれるんだけど、有害サイトは取り締まれないのが現状な訳でさ。私達に迷惑だから違法化せよってのも考え物だし。

 「出会いを求めたり悪いことをしていないわたしにしてみればいい迷惑。大人が闇サイトや出会い系サイトを作らなければ、子どもだって安心して使える。犯罪の根本をつぶさなきゃいつまでも犯罪は減らない気がします」(17歳女子)

昔から私はこの手の「大人が悪い」的な論調が好きじゃないんだ。ダーティな大人を強調したところで、大人がみんなダーティなわけでもないし、子供がみんなイノセントなわけじゃないんだから。フィルタリングの背景には、学校裏サイトとか言われてる存在もあるわけで、それは大人が悪いっていっていれば済む問題でもないわけ。まぁ、そういったサイトを気軽に運営させる業者が悪いって言われそうだけど。
犯罪の根本を〜という意見には賛同したいけど。ただそれも、完全になくすることは不可能なので、そこに接触することを抑制するための手段も必要にはなるだろう。

 「クラスにフィルターしている人がいます。本当に不便です。危険なサイトだけでなく、進学関係のサイトも見れないです」(17歳男子)

この辺の問題を考えると、ホワイトリスト方式ではなく、ブラックリスト方式でのフィルタリングのほうが、利便性なんかを考えるとよいのかなと。ただ、進学関係のサイトはPCからでも見れるだろうに、とも思うのだけれどね。

 「モバゲーで被害にあった人知ってるけど、その人も『遅い』って泣いてたよ。フィルタリングがうざいと言ってる人も、犯罪に巻き込まれたら、自己中な考え方は通らないことが分かると思う」(今年高校卒業予定の男子)

ただ、問題はなぜ巻き込まれたかって所にもあるのかなと。

 「出会い厨にホイホイ付いていく馬鹿どもが悪いんだろ。正常な思考を持つ未成年なら出会い厨なんか相手にしないし、有害サイトに関わらない。架空請求はシカトする。常識のない連中のせいで健全な未成年が被害を受けるのは納得いかない。普通に使えば便利なものを、悪いように使う人が増えすぎ」(17歳男子)

こうした意見もあるわけでね。まぁ、そもそも9割9分の人はほとんど関係なくて、1%にも満たない被害者となりうる人をより少なくするためのフィルタリングだからねぇ。
あと、リテラシーを高めるために、無菌状態よりは多少雑多な環境の方がいいって意見もあるけど、なかなか難しいところだよね。問題は、その雑多な環境に適応してリテラシーを高められるだけの抗体を持たない人がいるってことで。

 「もっと早くやるべきだったと思う。自殺オフ会とか裏サイトの詐欺とか、携帯を使った事件がしょっちゅうニュースになってる。規制はもはや当たり前では」(未成年の男子)

確かにニュースにはなっているけど、ニュースの怖いところは実際以上に頻度を高く認知させるところにあったりするから、ニュースでやっているから、という理由付けもちょっと怖いところではある。

 「サイトいろいろ見られなくなるのは困るけど、被害者が出るよりはましだと思う。自分が被害者にならないと限らないし。親の同意があれば解除できるなら無意味。やるなら徹底的にやるべき」(18歳男子)

良し悪しは別にしても、こういうガッツある意見は大好きだ。前世はスパルタの市民だったんだろう。
その一方でこんなドライな意見も。

 「フィルタリングは正直イラつく。一部の馬鹿のせいで、って意見も同感。でもそんな馬鹿がいるのも事実。何かしら対策取らないと、大人も責任追及されるんだよ。我慢するしかない。大人になったら、自分同じ過ちをしないようにしよう」(16歳男子)

いやぁ、彼が「大人」になってからこの意見を見返したら、身もだえしちゃうんだろうな。たぶん、高校のころの私ならこういってただろうし。ただ、責任追及だけじゃなく、本気で(そして多少過剰に)心配している人もいたりするわけで、そうした人の意見があることも事実。
良し悪しがあるにしても、考えさせられる意見がある一方で、頭からダメだこりゃな意見もある。

 「反対。モバで読んでる小説読めなくなりし、掲示板に行けなくなるんで音楽を取る(無料の違法着うたなどをダウンロードする)こともできなくなるし、好きな芸能人のブログも見られなくなるんでかなり迷惑です」(未成年女子) 

 「うざいとそうでないとで半々。非公式サイト見れなくなって歌(着うた)とかメロ(着メロ)も金払わないと取れないのが一番うざい。でもフィルタリングで助かる人もいるのでは。ワンクリや出会いはほとんど未成年が引っかかってる。ニュースでやる出会いの事件とか自殺事件などは、規制されなければまた繰り返される」(16歳男子)

RIAJJASRAC的にはフィルタリングの効果を実感できるような意見でもある。うっかり言ってしまっているならまだわかるのだけれど、これが当たり前の発言だと思ってるなら、フィルタリングは必要なのかもなと思われるブーメラン的意見でもある。

「正直、どうだっていい」(17歳男子)
「普段の行いが良ければ親に外してもらえるからいいのでは」(17歳男子)
「別に親に頼めば済む話です。特に問題無いです。」

なんて意見も多かったらしく、まぁそれが健全だよねという感じ。そうなると、親のリテラシーも問題になってくるわけで、携帯サイトを過剰に脅威と感じる人もいるだろうし、逆に過度に楽観視する人もいるだろう。
個人的な意見だけど、携帯サイトから犯罪に巻き込まれるような子供の場合、親の監督の問題もあるのだろうから、果たして利用に過度の制限があるホワイトリスト方式のやり方がよいのか、という疑問もある。あまりに制限がありすぎて、普通のサイトすら利用できないんだ!という主張がしやすいわけで、じゃあ解除してやらなきゃねぇ、ということになる。おそらくそうした人がほとんどであろうことを考えると、結局は、みんな解除しているよという主張を認めることになり、フィルタリング自体意味のないものになりそうな気がする。on/offの二択しかないわけだからね。ならば大変だろうけど、ブラックリスト方式で、未成年者にふさわしくないサイトをしらみつぶしに排除していくしかないんじゃないかと。
ただ、ホワイトリストにも利点はある。明らかに違法だとも有害だともいえないサイトでも、排除することができるということ。ブログ、SNSなんかはほとんどの利用は問題はないのだけれど、モバゲーの件にもあったように、完全に問題を排除し得ない部分がある。そういった判断のつけにくいところをスッキリさせることもできると。
でも利用してもらえないんじゃ意味がない。個人的な落としどころとしてはやや厳しめのブラックリスト方式で、親御さんの許諾の下、特定サイトのフィルタリングを解除できるってのが最善なのかなぁと思ったり。それでも、親が子供に無関心すぎたり、過信しすぎてたりすると意味はないのだろうけど。あとは、違法サイトのブラックリストを携帯サイト間で共有できる仕組みとかも必要かもね。
最後に、悪い「大人」としての意見を言わせてもらうと、ブラックリストよりホワイトリストのほうが、いろいろといい点もあるわけですよ。ブラックリストの場合、ボランティア(自発的)で違法/有害サイトを認定していかなければならないので、資金的な問題を抱えちゃうわけ。でも、ホワイトリストであれば、ホワイトサイトとして認めてくださ〜いってサイトはごまんとあるわけで、それぞれのサイトから審査料、会費をいただくことができる。いや、もちろん運営資金ですよ。