ニコ動にアップされた「ダウンロード違法化 絶対阻止」ビデオに補足するよ

ニコニコ動画でダウンロード違法化に反対するビデオがアップロードされていた。なかなか熱いビデオで視聴数もかなりなものなので、うれしい限りなのだけれども、ちょっと気になる点があったので、順次見て移行と思うよ、というお話。
【再生60万で】 ダウンロード違法化 絶対阻止 【 ハルヒ虎 】 - ニコニコ動画
著作者のはるひこ(ハルヒ虎)の人には「許可を得てはいない」のだけれども、突っ込みも兼ねてテキスト起こし。問題があればコメントくださいな。引用箇所を除いて削除しますから。
なかなか興味深い内容なので、テキスト自体をどこかにアップしてもらえれば幸いです(もうどこかにあがってるのかな?)。

ダウンロード違法化
絶対阻止!!

お忙しい中、ご試聴いただきありがとうございます。
この動画は、あまりに舐めきった法改正を阻止するためのものです。
言っておきますが、本気で阻止しにいきます。
ダウンロード違法化問題にかなり詳しい人でも
新たな発見が一つくらいあるはずです。
(なかったらすいません)。

  • ”ダウンロード違法化はしょうがない”と思っている人。それは印象操作によるものです。真実を知っていきましょう。
  • ストリーミングは問題ないからニコニコできるし俺には関係ないや、って思っている人。騙されてはいけません。
  • ネットでは話題になってるけど、そういやテレビでダウンロード違法化についてあまり見たことないな、と疑問をお持ちのあなた。
  • なぜアップロードの摘発件数はこんなにも少ないんだろうか、と疑問をお持ちのあなた。

この動画を見てください。怒りで手がプルプルしてきます。

目次
1章 海外のダウンロード違法化の実態
2章 アメリカの例から考える日本
3章 ダウンロード違法化は違法サイトからのダウンロードを後押しする
4章 このままだとニコニコは見れなくなる
5章 突込み処
6章 マスコミの闇
終章 ニコニコ・2chによる逆転劇

1章 海外ダウンロード違法化の実態

文化庁は、ダウンロード違法化をする理由の一つに”国際条約や先進諸国の動向を見ても、ダウンロードは違法化すべき”ということを言っている。
では、具体的には海外での先行事例はどうなっているのだろうか?この辺りのことは、曖昧にされたままだ。

アメリカ

アメリカでは今、ダウンロード違法化により大きな社会問題が起こっている。その主体となっているのが……。

全米レコ○ド協会 RIA○
日本でいうJA○RAC
一体RIA○が何をしているかというと

個人的には、こういう主張の場合、伏字はあまりよい印象をもたれないと思うんだけど・・・。
あと、日本でRIAAにあたる団体はRIAJなんだよね。JASRACはあくまでも委託された著作権を管理し、著作権料を徴収する団体。確かにユーザから目の敵にされているところは似ているけれども、団体としての有り様はまったく異なる。

大学生狩り

ファイル共有ソフトで違法に音楽ファイルをダウンロードしたと思われる大学生に、大学経由で
著作権侵害フィアルをダウンロードしましたね。○○万円払ってください。払わないなら告訴します。」
と疑わしいというだけで片っ端から連絡しているのだ。
なぜ、大学生に、なにか。次のような狙いが考えられる。

ここは原文ママです。まぁ、思われるというとあてずっぽうのようだけれども、実際の手法を述べると、MediaSentryやMediaDefenderといったP2Pファイル共有ネットワークを監視し、ユーザアクティビティとそのIPアドレスを記録するアンチパイラシー企業に著作権侵害ユーザの情報収集を依頼し、その情報を元にISP(大学の場合は大学のサーバを管轄している部署)に対し、当該ユーザの情報を開示するよう請求、然る後に和解を提案、それがうまくいかなければ訴訟、という感じ。
ただ、ここで指摘しておきたいのは、RIAAが追及しているのはアップローダだということ。しばしば海外の記事では「違法ダウンローダ」という言葉でファイル共有ユーザを示すことがあるんだけど、P2Pファイル共有の特性上、ダウンロードしたものがそのままアップロード可能な共有状態になることから、こうした表現がなされていると思われる。おそらく、意図的に著作物を配布して回るアップローダ像とは異なり、消極的ながらP2Pファイル共有ソフトウェアの特性上、ダウンロードを目的としながらもアップロードに加担している人って意味合いがあるんじゃないか、って勝手に思ってる。
なので、根本的な部分の指摘になるんだけど、RIAAが大学生やKazaaユーザを追及しているのはあくまでも当該のファイルを送信可能状態においていることに対して、だと思うんだけど・・・。

  • 時間も金もなく、訴訟を諦めて和解金で解決、という選択をしてくれる可能性が高い。
  • 親がお金を出してでも訴訟だけは回避させようとする可能性が高い。
  • 就職前の大事な時期、揉め事を回避したがる可能性が高く和解に傾きやすい。

しかも、RIA○は、明らかに無関係な人間に対して訴訟を起してるケースでも控訴してくる、という例も報告されているため、無実の人でさえ和解金を払いたくなってしまうのも無理はない。

この点に関しては、断言できるほどではないのだけれど(RIAAは誤った告訴を行ったことを認めてはいないが、そう思われるケースで訴訟を取り下げている。まぁ、誤りを認めると手法自体の信頼性が問われちゃうからね)、そういった側面があるだろうとは思われる。RIAAの行っているKazaa裁判のすべてを追いかけているわけじゃないので、すべてのケースを把握しているわけじゃないけど、Wifiネットワークを無断で利用されていた人が、無断で利用していた人のファイル共有活動によってRIAAに訴えられたというケースもある。

長期の裁判で無駄にする時間とその間にかかる莫大な訴訟費用、弁護士費用を考えれば、30万円ほどならそれで済ませたいという人の方が多いだろう。
さらに、本当に著作権侵害行為が行われていたのかをRIA○が確認すらしていないケースも明らかになってきている。こういう行為から考えると、彼らは勝訴を目的としているわけではないのだろう。

この辺は特に問題になる部分。未だに曖昧だったりするところでもある。RIAAIPアドレスと共有リストがあれば十分というスタンスを取っているけれども(もちろんそれ以外の証拠があればそれを示すけど)、上述したようにWifiを無断で利用されても、その回線の契約者が訴えられているように、当該の回線で行われた著作権侵害に対して、回線契約者が全責任を負わされて告訴されるというのはおかしいじゃないか、という批判もある。この辺は、RIAA側にしてみれば、たとえISPからIPアドレスをもとに回線契約者の個人情報を取得したとしても、その人が実際に著作権侵害にかかわっていたのかどうかまではわかりようがない。だから、子供がKazaaを利用していたために親が訴えられるというケースも多々見られる。そうしたケースでは、親の責任を問えないという判決が下されたりもするのだけれど、その場合RIAAは親への追求をあきらめ、そのターゲットを子供にシフトしたりする。
といっても、こうした回線を誰が利用しているのかはわかりようがないという主張は、恣意的に用いられることもあり、昨年Kazaa訴訟初の陪審裁判となったThomasのケース(24曲の楽曲の著作権侵害に対して、2200万円以上の損害賠償を命じる判決が下されている)では、Thomasの弁護士は、彼女は問題となった日にLANパーティを行っていたんだ、なんて無茶な主張がなされていもいる(MACアドレスレベルで特定されていたようで、容易に反論されることになったみたいだけど)。
なので、確認していない、という問題も確かにあるのかもしれないけれど、ことの本質は、確認し得ないレベルのものをどう扱うのかというところにある。ちなみに、ドイツでは先日、こうしたファイル共有著作権侵害訴訟において、たとえ家族の一員(たとえば子供)が著作権侵害行為を行っていたとしても、その回線契約者(親)が責任を問うことはできない、という判決が下されている。

戦いを挑まれたら何年でも付き合う、というスタンスを示しておくことで”RIA○に狙われたんなら、諦めて和解金払ったほうがいいよ”という雰囲気を作ることこそが真の狙いに見える。
その推測はおそらく正しいだろう。というのも、RIA○は"オンライン訴訟差し止めサイト”なるものを解説しているのだ。要するに、ここでお金を払えば訴訟しません、というサイトだ。これこそが、真の狙いといわんばかりのサイトではないか。

この辺に関しては同意。RIAAの目的は、訴訟というコストをかけずに追求するユーザの数を増やすことだと思っている。

RIA○はすでに2万6千件もの訴訟をしているらしいので、このサイトもさぞ潤っていることだろう。
何も大学生だけではない。12歳の少女や(実質は親から金が欲しいのだろうが)老人であろうと、ほぼ無差別にターゲットにしているのだ。
これほどまでの社会的混乱を起こしておきながら、成果として確認されているものはほとんどないのがアメリカの現状のようだ。

無差別にターゲットにしている、というのは正しい。1つは上述したような回線契約者が誰であるのか、ということをRIAAは事前に判断し得ないという事情がある。しかし、訴訟が進展するにつれて誰がファイル共有を行っていたのか、ということが明らかになり、それが年端もいかない子供であっても訴訟を継続するという点でも無差別だといえる。この辺は意見の分かれるところだろうけれど、年端もいかない子供の行った行為に対して直接責任を求めるというのは、私は倫理的に許容し得ない。

売上が上がってきているのかどうかすら疑わしい。もしダウンロード違法化の成果があるのなら、その成果こそがすべてと言わんばかりに、文化庁や権利者側が示してくるはずだろう。しかし、彼らは海外の具体的事例にはほとんど触れていない。

この指摘は非常にクリティカル。問題は海外でも導入されている制度だから、というものではなく、その導入されている国での実績である。他国が用いているからといって、たいした効果が見られていないのでは導入する必要はない(ただし、違法ファイル共有ユーザなどの増大に比べて、この抑制効果が小さい、という可能性もある。なので、効果が全くないとは言い難いのかも)。
むしろ、ダウンロードの違法化によって一大プロパガンダを打とうとしているであろうことを考えると、真っ当な利用まで控えられるという副作用のほうが大きいのではないかとすら思える。

ドイツでもダウンロード違法化により社会問題化しているようだ。音楽業界からの対ユーザ訴訟は既に2万件を超えているとのこと。これだけ数が膨大だと、使っている税金もかなりの額のはずだ。警察や裁判所を音楽業界だけでこれほどまでに酷使して、国民全体の利益になるはずもない。あまりにコストがかかることから、刑事当局が音楽業界を見放し始めている、という記事もあるようだ。

ドイツの話に入る前に1つだけ。ここまで議論してきたRIAAの裁判は民事訴訟であるということ。勘違いされるとアレなので。
で、ドイツ。ドイツ音楽産業団体のGEMAがファイル共有ユーザに対して徹底抗戦の構えを見せているのだけれども、その手法が問題視されている(ちなみにドイツは音楽産業だけじゃなく、ゲーム産業も海賊行為対策の訴訟を行っている)。で、何でRIAA民事訴訟なのにドイツでは刑事訴訟なの?というと、1つには非商用の海賊行為に対する処罰規定の問題(要は刑事の要件を満たすかどうか)があるのだけれども、それよりももっと重要なのは、ドイツでは氏名不詳裁判ができない、ということにある(米国ではJohn Doe(名無しの権兵衛)に対する訴訟も可能。後にISPが個人情報を開示した後に、特定の個人に対する訴訟にシフトする)。なので、GEMAをはじめとしたドイツコンテンツ産業は、まず著作権侵害に対する刑事訴訟を起こし、その過程で判明した個人情報を元に民事裁判を行う、という戦略を取ってきた。それに対し、ドイツ検察はあまりにも乱発される著作権侵害裁判に苦言を呈し、よりプライオリティの高い事件に対処するためとして著作権侵害訴訟を取り下げている。

その他の海外の例は……といっても、全部で7カ国(くらい?)しかないようだが、どこを見ても、先行事例として具体的成果が上がっているような国は一つもないようである。

さて、これらの事例のどこをどう見て文化庁
”先進諸国の動向を見てもダウンロード違法化すべき”と思ったのだろうか。もっともらしく聞こえる言い方をしているだけで中身など何もないではないか。中身がないどころか、騙していると言っても過言ではない。こういう言動は明らかに”印象操作!”だ。最後まで見てもらえれば分かると思うが、こういった印象操作・情報操作のような言動が平然と繰り返されているのだ。

「こんな大げさな例、訴訟大国アメリカだからだろ」と思うかもしれないが、そんなことはない。日本でも"立証してからじゃないと訴訟できない”という法律はないのだから、まったく同じようなことができてしまうのである。違法ダウンロードは、裁判で決着をつけるまでは誰もが疑わしい以上、ネットユーザは誰でも訴訟リスクを背負うことになるのだ。それは、レコ○ド協会からとは限らない。さらには、架空請求のネタとされることも間違いないだろう。

まぁ、文化庁と一緒になってこれを推し進めている人たちは、おそらくダウンロード行為に対して訴訟を起こすってことはないだろうと思う。目的はプロパガンダなのかなと思うし(その効果を高めるために訴訟を起こすということは考えられるけど)。でもって、やはり民事でここまで大掛かりなことができるのは、訴訟大国アメリカだからってのはやっぱりあると思うよ。日本ほど訴訟に対する敷居は高くないだろうからね。日本の場合、訴訟を起こすリスクってとても大きくて、失敗すれば戦略の建て直しを迫られるし、成功してもパブリックエネミーと呼ばれるほどに訴訟を乱発しない限りは効果はないわけで、そうしたさばさばした感覚は日本的ではないんじゃないかなと。でもって、日本でのファイル共有ユーザに対する民事だけではなく刑事訴訟の少なさも、負けが許されない訴訟というプレッシャーやリスクがあるのかなと思う(以前はパブリックエネミーになりたくないのかなと思ってたんだけどね)。
追記:あと、米国RIAAのように大規模な訴訟戦略を行えるだけの資金がないというのもあるんじゃないかと。
ただ、それを意に介さない著作権者がいれば、米国同様の状況に陥るのかもね。
あと架空請求に関しては確実にあるだろうなぁと思う。おそらくメアド認証必須の違法着うたサイトが山ほど登場するだろうね。
とりあえず、RIAA関連の話題で気になったところが多かったので、今日はここまで。