「着うた」が使用済み携帯電話の回収、リサイクルを阻む

 使用済み携帯電話の回収、リサイクルが義務化される可能性が高まっている。
 使用済み製品の回収とリサイクルを義務付ける「資源有効利用促進法」は現在、自動車や家電、パソコンなど14種類を対象に実施されている。対象となる製品は、メーカーに回収とリサイクルの必要があり、消費者が費用を負担する。この法律の対象品目に今後、携帯電話が追加になる見通しだ。

経産省、使用済み携帯電話の回収およびリサイクル義務化を検討:CNET Japan

これってどちらかといえば、リサイクルしなきゃならん、という消極的なものというよりは、レアメタルを再利用したいという積極的なもののような気がする(参考:asahi.com)。なので、わざわざ消費者に費用負担をさせてハードルを高くするというのはどういうおつもりか、と思ったりもする。まぁ、一律購入時にリサイクル費用を払わせようとするのだろうけど、既存の使用しなくなった携帯電話を回収しようとするなら、これ逆効果としか思えないのだが・・・。それとも、携帯電話の場合は、費用負担を求めないとか?
asahi.comの記事を読む限りでは、販売店が買い替え時などに古い機種の回収を呼びかけることを義務付けるというもののようで、費用負担の方針があるというわけでもなさそう。CNETの記事は現在の「資源有効利用促進法」の枠組みでの説明なので、そのまま携帯電話にも適用されるわけではないのかもしれない。
さて、使用しなくなる携帯電話といえども手放したくはないと考える傾向が強まっていることは既に示されている。

ここ数年、端末の高機能化に伴ってメールや写真などの保存用に手元に置く人が急増。通信各社などでつくる「モバイル・リサイクル・ネットワーク」によると、回収実績は00年度の1362万台から06年度は662万台に半減した。

asahi.com:使用済み携帯電話、「回収呼びかけ」販売店に義務づけへ

もう1つ言えば、携帯電話が破損、紛失した際の予備という理由でとっておく人もいるだろう。カードの差し替えをするだけで再び利用できるわけだし*1
昨年行われた調査によると、以下の理由で使用済みの携帯電話を手元に残しておくのだという。

写真やメールが残る端末を「コレクション・思い出として残す」が35%と最も多く、端末の多機能化・高性能化で「電話帳として利用」(14%)、「データのバックアップ用」(12%)、「デジカメ」(5%)、「ゲーム機」(5%)、「目覚まし時計」(16%)などの用途で利用している人も多いことが分かった。

「思い出を手放したくない」--携帯電話リサイクルの回収台数、減少傾向続く: CNET Japan

1つにはデータの保存のために、1つには機能を利用し続けるために、というところだろうか。そのほかにも「個人情報がもれることが心配」という回答も多い(13%)。そして、「何となく」という消極的な理由も22%と多くを占めた。
データの保存という点で考えると、携帯電話に蓄えられるデータは一時的なもの、いうスタイルを定着させる必要があるのかなとも思える。まぁ、PCその他のデバイスとの連携を促進して、それらのデータストレージは他のデバイスが補完するという形にするといいのかも。現在でも、そういった利用は専用ケーブルなどを利用すれば可能ではあるけれども、実際のそのような利用をしている人がそれほどいるとも思いがたい。さらに、このようなデータのバックアップができないデータも存在している。着うたとアプリ。お金を支払って購入したのに、携帯と一緒に捨ててください、と言われてもおいそれと納得できるものではないだろう。
機能的な部分での継続的利用というのは、おそらくは手放すときにはそう思っていても、実際には新機種に完全に乗り換えてしまったという人のほうが多そうな気もする。少なくとも、買い換えた機種でも同様の機能があるだろうし・・・しかもより高機能になって。目覚まし時計として利用する、というのはわからないでもないんだけど、そのために充電し続けるというのも面倒な気がするけど、どうなんだろう?
個人情報の問題は、以前からしばしば問題になっていて、メールや写真などのデータが残った状態の携帯電話が売買されている、という報道を目にした人も多いだろう。正規のショップで回収されたものはそういうことはまずないのだろうが*2、一部悪質な代理店などで、そうしたデータ入りの携帯電話を横流しするといったこともあったようだ。もちろん、現在では改善したのかもしれないが、少なくともユーザの不安というものをぬぐえるような状況になっているとも思いがたい。asahi.comの記事にもあるように、正規ショップでは携帯電話に穴を開けて破壊することでデータを完全に利用できなくしていますよ、というアピールも行っているが、ユーザの不安感が完全に払拭できるというわけではないのかもしれない。
また、「なんとなく」という回答が多かったのも、せっかく高いお金を払って購入したものを、買い換えただけで捨てなきゃいけないというのはもったいない、という感情に起因する部分もあるのではないだろうか。利用できなくなったというわけでもないし、機能的にも現行の機種に完全に見劣りするというわけでもない、まだまだ利用できる範囲での新機種の購入なわけで、「新しいの購入したから要らないですよね?」と軽く言われて、OKOKと手放せるものでもないのかも。
また、現在では使用していた携帯電話を手放すメリットはそれほどあるわけでもない。回収にお金がかからないと言われても、別に手元に残しておいてもお金はかからないし、それほど場所をとるものでもない。残しておくほうがメリットがあることを考えると、わざわざ手放すという選択肢はとりづらいだろう。手放すことによるメリットが存在しなければ、デメリットだらけの携帯電話の回収に応じさせることは難しいだろう。
呼びかけることも必要だけれど、それをサポートするためには、利用しなくなる携帯電話を手放すデメリットを減じ、手放すメリットを付加しなければならないだろう。ただ、それはキャリア、メーカーの努力だけでは実現できない段階に来ていると思える。上述したように、着うたやアプリなどが新たな機種に引き継げないことが、ますます手放す際のデメリット間を高めることになるだろう。着うた、アプリは成長著しい市場でもある。より多くの人が、より高い頻度で利用するようになれば、ますます回収率の低下が進むということも考えられる。いや、むしろ避けられないといったほうが正しいだろうか。

誰も知らなかったケータイ世代

誰も知らなかったケータイ世代

*1:auは手数料かかるんだっけ?

*2:と祈りたい