私のiPodにお前らの音楽が入ってると思うなよ!

久々に私的録音録画補償金制度のお話。

iPodなどの携帯音楽プレーヤーと、テレビ番組を録画するハードディスク内蔵型レコーダーに「著作権料」の一種を課金する制度改正の骨子案を文化庁がまとめた。8日の文化審議会に提案する。
( 中 略 )
同案では、携帯音楽プレーヤーとハードディスク内蔵型録画機器を挙げて「課金対象にするべきだ」と初めて明言する。一方で、メーカーに配慮して、録音・録画の機能がある機器でも、パソコンのような汎用性の高い機器や、携帯電話のように別に主な機能がある機器への課金は見送ることにした。

asahi.com:iPodに「著作権料」上乗せ 文化庁提案へ - 文化・芸能

音楽配信でいえば携帯電話(着うた)が利益を生んでるんだけどね。まぁ、こちらのほうはDRMががっちり機能しているだろうし、課金したんだからDRMなくせ!なんて話になれば大変だよなぁと思ってみたり。
業界内の一部の人たちのお小遣い稼ぎという側面が強そうなこのお話なんだけど、いつまでたっても腑に落ちないんだよなぁ。結局のところ、デジタルデッドコピーのせいで不利益を被るよね、だから補償が必要なんだよっていう「制度があること」が根拠にされていて、もともとの根拠だった不利益を被るよね、が現実味がなくなってきている感もある*1
たとえば、ハードディスク内蔵型録画機器っていっても、利用のされ方としてはテンポラリーな録画がほとんどだと思う。単にテレビ画面に出力されるのが電波を受信した直後か、そのしばらく後かだけの違いでしかなくて、それによってどう不利益が生じるのかがわからない。HDDの記録領域が無限にあって、恒久的に、子々孫々に至るまで伝えていくことが可能だ、というなら不利益が生じているというのも多少は理解できるが、現状では見て消されるだけのものにすぎないだろう。
それでも、長期間保存したいコンテンツがある、という人もいるだろうけど、長期間の保存に既存のHDDレコーダーって不向きだよね。普通はDVD-Rに焼いて保存するよね。で、DVD-Rは補償金とってるよね。それでいいんじゃない?欲かかなくても、と思うんだけど。
でも、個人的には、JEITAの主張するように

(1)DRMなどでコピーが制限されている場合や、(2)自分で購入したCDを携帯プレーヤーに取り込んで聴く「プレイスシフト」、(3)放送を録画して自由な時間に見る「タイムシフト」――などは、権利者の経済的不利益にはつながらない

「DRMあれば録音録画補償金は不要では」――JEITAが立場を説明 - ITmedia News

って思ってるからなぁ。でいて、後者の2つの利用が、デジタルデバイスがますます便利になることで、ますます重要を高めていくのも不可避だろうし、それに対応していくことがスタンダードになるんだと思うよ。対応できなきゃ、ユーザからはそっぽを向かれるし、うまく対応すればユーザからの支持を得られる。どのようにデジタルコンテンツをマネジメントするか、つまりどのような利用をユーザに提供するか、許諾するかもまた、1つの競争の要因。iPodや携帯プレイヤーのケースもそうで、DRMによる制限が可能であり*2、既存のDRMスキームの雲行きが怪しくなりつつある中、「え?DRM緩和してほしい?ならお金払ってよ」という無茶ぶりをしてくる。勝手に既存のDRMスキームを作り上げておいて、それを崩したければ…なんて談合みたいなものだよね。いかなるDRMを付与するか、ということに対しての自己決定権がないわけじゃないのだから、それを緩和するにしても、既存のDRMスキームを取りやめるにしても、はたまた現状を維持するにしても、もっと強化するにしても、それによって引き起こされた結果は自己責任として許容されなけれならない。補償を求める必要はあるのか、とすら思える。
それを拒否してなお、補償金を求めるのだ、制度的に解決するのだというのであれば、それはフェアなトレードでなければならない。つまり、金をかけるなら制限をかけるな、ということ。

著作権団体の「秘策」は、6月2日から導入する方針の「ダビング10」の拒否だ。

asahi.com:iPodに「著作権料」上乗せ 文化庁提案へ - 文化・芸能

なんてのも馬鹿げた話で、結局はDRMを緩和したけりゃ金払え、ってだけの話。ある意味ではその緩和分が補償金で賄われる、と。ダビング10にしただけでそれだけの不利益被っているのかしら。
で、ようやく表題のお話。

私のiPodに入っている音楽

真面目な話、全部Creative Commonsライセンスで提供されているものなんだよね。大半がJamendoからダウンロードしたもので。昨日はNine Inch Nailsのアルバムを入れたけど、これもCreative Commonsライセンス。
そもそも共有/利用を認めます、というコンテンツに複製による補償金が必要なのかとか、もし私が改めて補償金込みのiPodを購入したとして、彼らに補償金がわたるのだろうか、という疑問がある。
私にしてみれば、そもそも補償金など支払う必要がなく、そして支払ったとしても支払われるべき人々に補償されないというのであれば、何のためにお金を支払わされるのだろうと思える。補償金が支払われないのは申請しないのが悪いんですよ、といわれるかもしれないが、それは支払いを必要とは考えていない人々にとっては無用の議論であるし、私や私と同様の人々が支払わなければならない理由にはならない。
そういえば以前、Appleまがいの人がよいことを言っていた。

「アップルを私的録音録画小委員会から閉め出し、欠席裁判で物事も決める閉鎖的な体質を持つ文化庁の典型的な隠蔽体質を良く表している。(中略)はなから『結論ありき』の審議会運営をする著作権事務局には真摯な姿勢は微塵も感じられず、もはや公平公正な著作権行政を運営する適切な省庁とは言い難く、速やかに著作権行政を他の省庁に移管することを強く望む

アップル、文化庁を激しく非難--「私的録音録画補償金制度は即時撤廃すべき」:ニュース - CNET Japan

全く同意したい。
追記:Appleからと言われていたこのパブコメAppleが否定して、公式に撤回されたんですよね。はてブコメントで指摘されるまで、すっかり忘れていました。ということで、Appleまがいの人、ということにしました。Orangeさんですかね。

*1:もともと現実味がないけど

*2:そして現にそうしている