クイズ:違法ファイル共有を激減させたユニークな方法とは?

Inside Higher Edという高等教育関係者向けのサイトに掲載されている、ミズーリ理工大学の違法P2Pファイル共有対策がなかなか興味深い。
今現在もRIAAから大学に向けて大学キャンパスネットワーク内からの違法ファイル共有に対して、警告状が送付され続けている。大学側は様々な手を講じて、そうした警告状を送付させまいとしているが*1、いずれにしてもキャンパスネットワーク内からの違法ファイル共有が絶えることはない。
ミズーリ理工大学もまた、そうした大学の1つであった。先学期、同大学がレコード産業から受け取ったデジタルミレニアム著作権法に基づく著作権クレームは約200通であったという。
しかし、他の大学では依然としてそうした警告状が送付されている中、ミズーリ理工大学が今学期受け取った警告状はほんの8通にまで減少した。いかにして同大学は著作権侵害クレームを大幅に減少させることができたのだろうか。
同大学のシステムセキュリティアナリストのKarl F. Lutzenは、学生のネットワーク利用を管理する同大学の一風変わった方法を公開している。

どのP2Pネットワークからファイルのダウンロード(またはアップロード)を行うためにも、学内から接続するすべてのユーザは、著作権侵害についてのオンラインクイズを答えなければならない

というものであるという。これは1度回答を済ませればよい、というものではなく、学内からP2Pネットワークに接続するごとに行わなければならない。たとえばどんな種類の作品が著作権で保護されているか、とか、CDをコピーすることと音楽をダウンロードすることに違いは何か、といった問題が出される。
そしてそのクイズに全問正解することで、6時間の間だけP2Pネットワークへのアクセスが可能となる。これは合法的なテレビ番組、音楽、電子ブックをダウンロードするためには十分な時間だろうと考えているようだ。こうしたP2Pの利用は、月に8回までと限定されており、休暇中でも最大で20回となっている。やはりその都度、このクイズに回答しなければならない*2
これまでに見てきたP2P制限の中では最もユニークなものだなぁと思える。Lutzenはこのように述べている。

「このような考えは、教育または研究目的でのpeer-to-peerプロトコルを認めるという方針を持っていたためです。[それが合法的な用途で用いられているか限りは]利用されることで何ら問題を引き起こすことはありません。このソリューションは、多かれ少なかれ、教育的、技術的なコントロールを通じて、その方針を実施するというものです。」

また、細かい点でも工夫が凝らされているようだ。Lutzenは学生には問題を暗記するという選択肢もあることを示唆しているが、問題の解答はしばしばアレンジされており、きちんと理解していないと解けないようになっている。

といっても

こうした取り組みによって、学生たちが自律的になったがゆえに著作権侵害が減少した、ともいい難い部分もある。同大学では著作権侵害によって大学のポリシーに違反した場合には、初回であれば14日のインターネットアクセスの禁止、2回目であれば28日のインターネットアクセス禁止と地域での奉仕活動が課される。そういった規則を設けてもいる。
また、この方策は単純に教育という点にのみ向けられているわけではなく、P2Pの利用を月8回、それぞれ6時間ずつに制限することも含まれているし、利用の度にクイズが出されるという面倒さもある。さらに、こうしたクイズの提示自体が、大学側からモニターされている*3という感覚を持たせるのかもしれない。
学生が著作権をきちんと理解できたから、ということはなかなかに考えられるものでもないのだけれど、それでもそうした質問に継続して答えることで、その回答に一貫した行動を取るよう緩やかに方向付けられたとも考えられる。
なぜ、学生たちはP2Pネットワークを介した著作権侵害をしなくなったのか、という明確な答えを出せるほどシンプルなやり方ではないにしても、現状の大学当局の抱える問題を緩和する現実的な方略としてはアリなんじゃないかなと思える。そして、いずれにしても結果として著作権クレームを減少させることができた、ということは事実のようだし。
もちろん、全く問題がないとまでは言い難いけど、大学側がこうした施策を行うという事情も、ある程度は理解できるしなぁ。
(via Slashdot

*1:たとえば、キャンパス内からのP2Pネットワークへの接続を禁止するとか、大学自体がRIAAに対して反発するとか

*2:このクイズはランダムに出題され、毎回異なるらしい。もし全問正解できなくても数分後には再度挑戦することができる

*3:非常に緩いものであるけどね