P2Pじゃないとできないこと:収益性の低いコンテンツディストリビューション

P2Pでなければならない理由はなんだろうか、という疑問にユーザの視点から考えてみたいと思います。

P2Pじゃないとできないことって何でしょう? 実は帯域がもっと取れるようになる、スケーラビリティが高い、(サービス提供者として)コストを低減できる、とか、技術的にはいろいろあるわけですが、エンドユーザから見える、「サービス」、「アプリケーション」として、P2Pじゃないと実現できないサービスって、何でしょうね。Skypeとか、Winnyとか、ほんとにP2Pじゃないとできないの? とか。

P2Pじゃないとできないことって何ですか? - effyの日記

論点がずれるかもしれませんが、誰がそれを配信するのか、という点から見ると、ユーザから見たメリットをつかみやすいと思っています。
たとえば、Steal This FilmはISOフォーマットを含めた複数の形式で同映画を配信していますし、Trent Reznorは、NINのアルバムを24/96、Apple Lossless、FLACなどのフォーマットで提供しています。他にもPublic Domain Movie Torrensのように、パブリックドメインコンテンツをBitTorrentを介して提供するサイトもあります。おそらく、P2Pを利用しなければ、こうした形式でのコンテンツ提供はほとんど不可能だったと思っています。
これらのコンテンツ提供に共通している部分、それは収益性の低さであると考えています。逆にいえば、収益性が低くともP2Pを利用することで、その配信が可能になるということでもあります。
もちろん、収益性は変化するものですし、P2P以外でのディストリビューションにかかるコストも種々の要因によって変化を続けるでしょう。Jamendoも同サイトがホストするコンテンツのメインの配信形態を、BitTorrent/eDonkeyでの配信から、HTTPダウンロードに切り替えています。また、ファイルサイズの大きいビデオコンテンツでも、多数のビデオ共有サイトがその配信の受け皿となっている部分もあるでしょう*1
ということを考えると、未来永劫P2Pでなければならない、とか、P2P以外のオプションが考えられない、といったという理由は存在しないのかもしれません。ただ、それでも現状においては依然としてP2Pを利用するメリットは存在すると考えています。STFでいえば、Google Videoでも見ることはできますが、P2PなくしてはそれをISOフォーマットで手に入れることはできなかったでしょうし、NINのアルバムもMP3では手に入ったけれど、FLACでは入手できなかったでしょうから。
あくまでも収益性の低いコンテンツの配信に限った話ではありますが、なぜP2Pでなければならないのか、という問いに対する私の考えでした。よりテクニカルな視点からの「サービス」「アプリケーション」としてのP2Pの有用性に関しては、他の方にお任せいたします。

*1:その中でも最も大容量のコンテンツをホストしてくれるStage6がなくなったのは非常に残念ですが