AT&T、増大するトラフィックに従量課金によって対処することを示唆

AT&Tの最高技術責任者のJohn Donovanが、増大するトラフィックの問題について言及している。同社も他のISPと同様に、ごく一部のユーザがそのキャパシティの大部分を占有しているという状況にあるようで、1%のユーザがネットワーク利用の20%を占め、5%のユーザがネットワーク利用の40%を占めるのだそうだ。
AT&Tは、こうしたトラフィックに対処するためにComcastのような帯域制御ポリシーを持つ代わりに、従量課金制によってユーザの行動を変化させることで対処する方針をもっているようだ。この従量課金制のテストは今秋より開始される予定であるという。
Donovanはこうした重要課金制を導入する意図について、このように述べている。

"It's almost a taxation issue," Donovan said, comparing the overhead required to support the top 1 percent with the annual taxes the corporation must pay. "Traffic on our backbone is growing 60 percent per year, but our revenue is not," he said.
Usage-based pricing trials will be, he says, an attempt to encourage greater efficiency in the way customers use capacity.
"I don't view any of our customers, under any circumstances, as pirates -- I view them as users," Donovan said. "A heavy user is not a bad customer." What he wants to do is gently encourage more efficient usage of his network, and usage-based pricing may be one of the ways that happens.

AT&T Embraces BitTorrent, May Consider Usage-Based Pricing | Epicenter from Wired.com

確かに従量課金制そのものは時代に逆行している感があるが、個人的にはその運用に失敗さえしなければ、つまりそれが時代のデマンドにマッチした料金形態であれば、何ら問題はないと考えている。Time Warner Calbeのプランが馬鹿げて見えるのは、その料金形態が時代に全くマッチしていない数年前のものとしか思えないものだったというだけで、過度な利用を続けるユーザにだけ、より多くの負担をしてもらおうというのはそれほど違和感を覚えるものではない。もちろん、そういったユーザであっても、安定して抱えられるほどのキャパシティを持つべきだとも思うが、それでも対処しえない部分は当然あるだろう。
むしろ、たとえばBitTorrentを利用しているというだけで、帯域食いのユーザだとみなされ*1通信を抑制されるよりは、適度な利用であればその利用の意図や動機を問わないといった方が、望ましいと思える。もちろん、「適度な利用」という部分をどうとらえるのか、というのが非常に難しいところではあるが。
Donovanはこうした措置がP2Pトラフィックへの対処において、絶対に必要だと確信しているわけではなく、ユーザがオフピークの時間帯を利用した自己調整を行っていることも認めている。たとえば、AT&TネットワークでのBitTorrentの利用は午後4時ころにピークに達しているが、その時間帯はその他のトラフィックはもっとも低い。
ただ、こうした措置が必要なのはそれ以外の要因(たとえば、無線インターネットのアップグレードなど)によるトラフィックの増大という部分もあるみたい。ただ、リッチコンテンツに対する需要がますます増大すること、そういったサービスを展開せざるを得ないことを理解している、ということを考えると、それほど馬鹿げた提案をしてくることはないだろう、と思いたい。
それ以外の点で気になる言及としては、AT&T著作権団体の要請に応じて、著作権侵害トラフィックのモニタリングを行うのか、という点。Donovanは、そういったモニタリングは技術的には可能であり、ディープパケットインスペクションを利用して、特定のアプリケーション、特定の著作物をターゲットすることもできなくはないという。ただし、現在そういったモニタリングを個々の加入者のレベルで行っているかという点に関しては、否定している。
ここでは言及されていないが、以前、AT&T電子指紋を利用したネットワークレベルでのフィルタリングを導入する可能性について示唆している。

*1:若しくは泥棒ユーザだからどう扱ってもよいだろう的な暗黙の考えの下