OCNがユーザの利用制限を公表、30GB/日以上のアップロードが対象

OCNが一般加入者(OCN光・OCN ADSL)向けに利用制限を開始するとのこと。とりあえず、概要を簡単に説明すると、

  • 30GB/日以上のアップロードを行う一般ユーザが対象
  • 対象となったユーザには利用改善要請通知が送付される
  • 状況が改善しない場合には、利用停止、契約解除となる
  • ダウンロードは対象としない

とのこと。個人的には、いかなる手段であれISPがどのような帯域制御を行うのかが明確にされているのであれば、ある程度の規制を許容することはやぶさかではない。

帯域制御の背景

NTT.comのニュースリリースより

一部のお客さまが他のお客さまに比べて大量のデータをインターネットに送信することによって、回線帯域を占有される状態が続き、その結果、他の多くのお客さまの通信速度や通信品質が低下する事象が発生しています。

個人向けOCNサービスにおける大量データ送信制限の実施について | NTT Com 企業情報

まぁ、この辺の話はいつものこと。前段には回線設備増強にも努めているけれど、と前置きされている。
個々のISPがどの程度こうした「過度の利用」によって混雑しているのか、というのはわからないけれど*1トラフィック全体としては占有されているということはしばしばデータで示されている。
また、ISPの内幕についてのもうすこし突っ込んだお話は、effyさんの「OCNの1日30GBの上りデータ総量規制は良心的か」というエントリにて説明されている。こちらは必読です。

1日に30GB以上のアップロード

NTT.comのニュースリリースでは

1日に30ギガバイト(GB)*3以上のデータをインターネットに送信しているお客さまについては、利用制限の対象となります。

として、とりあえずの「過度の利用」の線引きを30GBにおいたようだ*2。その30GBという線引きは「OCN個人ユーザー全体の利用状況や総務省が2008年2月に公表したインターネットトラフィック状況などを踏まえて決定」したとのこと。さらに

同数値に該当するOCN個人ユーザーは、想定値で数千人程度を見込んでいるという。

OCN、個人サービスで送信制限を実施。1日30GB以上の送信が対象に

とのことで、ユーザ全体からみると、そこまで多くはない。まぁ、だからこそ、一部のユーザが帯域の多くを占有しているといわれ続けてきたわけだけれど。
で、ほとんどの人は、では30GBってどのくらい?と思われるだろうが、その辺もNTT.comのニュースリリースではきっちり注釈でカバーされている。

*3:1日あたり30GBの目安
DVDに格納されるデータ量(1枚約4.7GB)を1日に約7枚データ送信した際の容量となります。また高画質デジタル画像(1枚あたり約6Mと計 算=1,200万画素を超えるデジタルカメラで、記録方式を最高画質(JPEG)とした時の容量の目安)をメールに添付して、5,120通以上を送信する ことに相当します。

まぁ、結構な量だよね。ただ、Blu-ray(1層)だと1枚程度、っていうとあれだけど。
それはともかくとして、1日にそれだけの量をアップロードするユーザといえば、おそらくP2Pファイル共有ユーザを想像するだろう。確かに人気のコンテンツをBitTorrentでダウンロードしつつ、Ratioの上限を設定しないままに放置しておけば、30GB/日の制限を超えるのは、それほどありえない話ではない。WinnyやShareなどでもそうかもしれない。
もうちょっと具体的には…

1日は86400秒なので、30GB/86400秒=2.84Mbpsになります。つまり、上りが2.84Mbpsになるようなアプリを1日中動かしていたら、契約解除です。

OCNの1日30GBの上りデータ総量規制は良心的か - effyの日記

とのこと。P2Pを利用したビデオストリーミングサービスのJoostでは、アップロードは「1時間に最大105MB(換算すると238kbps)」程度とされており、Joost程度であれば、丸一日視聴していても問題はなさそうだ*3。ただ、もっと高品質な画質のものであれば、この制限にかかるほどの転送量となりうる。

最近ではP2Pは動画コンテンツをよりスムーズに視聴するための技術として認識されつつあります。動画の配信アーキテクチャによってだいぶ変わりますが、比較的高速な回線につながっているポイントでは、配下に2〜5ノードぐらいのPCがつながると思われるので、たとえばDVD画質の動画を配信する場合は上りの帯域は8〜20Mbpsになるでしょう。つまり、ライブ中継を3時間ぐらい見ていたらISPから契約解除すると通告された、なんてことが現実に起こりかねません。

OCNの1日30GBの上りデータ総量規制は良心的か - effyの日記

もちろん、現状ではこうしたサービスや利用が一般的ではないとはいえ、今後こうした利用によって制限にかかってしまうということは考えられる。

P2P以外にもユーザに影響はある

OCNだけど、そこまで使っていないから問題ないや、P2P使ってないから問題ないや、という人、OCNじゃないから大丈夫という人もいるかもしれない。ただ、全く影響がない、というのは気が早いかもしれない。
本当にごく一部の利用者ではあるのだろうが、P2Pファイル共有ユーザ以上に帯域を消費している人たちがいる。それは自宅にサーバを立て、アップローダを運営している人たち*4。そうした人たちの中では、100GB/日は余裕で超えているところも少なくないわけで*5、そういった人たちがOCNに加入していた場合には、そのユーザにも影響は出るかもしれない。また、こうした総量制限が他プロバイダでも行われるようになれば、そうした影響は目に見えるものになるだろう。
ただ、OCN側でもそうした利用を全く認めないというわけではないようで、P2Pファイル共有であれ、自宅サーバでのアップローダであれ、制限を超える利用に関しては、企業向けのサービスを推奨している。こちらの方は今回の制限には含まれないようだ*6

思うところ

私としてはこの制限にかからないから、というわけではないけれど、帯域制御の基準を明確にする、という点は評価したいし、そうした方針はOCNユーザとして支持したいところではある。
もし、これがもう少し厳しい制限であったとしたら、私もISPの乗り換えを検討したであろうが、だとしても、それでOCNどうこうということはない。むしろ、乗り換えるにしても、その選択肢となる他ISPが帯域制御に関する情報を提供しないことにこそ、腹を立てると思う。
なんだかかなりOCNに肩入れをしているように思われるかもしれないが、少なくともほどほどにP2P*7を利用する私にとっては、転送そのものに制限を課していないであろう*8OCNはそれなりに評価できるISPだと思っている。確かに制限を公表して、8月1日からそれが開始されることになるけれど、この制限にかからない、ほどほどに利用するユーザであれば、私は利用者としてOCNをお勧めするよ。

ただ、少し良くわからないところもあったので、以下に箇条書きにしておく。時間があればOCNに問い合わせて聞いてみたい。

不明点
  • 通知はどのようにして行われるのか
    • 書面orメールor電話?
    • 当然、ユーザとしては連絡可能なメールアドレスを伝えていなければならないのだろうが、実際にはそうして登録したアドレスをほとんど利用していないということがある。そうしたユーザに対してメールで通知しても気づいてもらえないこともあるかもしれない。
  • 制限容量を超えた時点で、自動的に通知対象となるのか、それともそうした利用がある程度継続していることが確認された時点でそうなるのか
    • 一時的に制限を超えるという人もいるかもしれない。ほとんどありえない話だろうが、オンラインバックアップなどで、相当な量のアップロードを一時的に行う可能性もある。こうしたユーザであれば継続した過度のアップロードは行うことはないはず。
  • 制限の緩和は行われるのか
    • 現在では、30GB/日という利用が「度を超えた利用」といわれてもなるほどと思えるが、今後ますますリッチな、大容量のコンテンツをユーザ間でもやり取りするようになると思われる*9。また、プレスリリースでも「お客さまのご利用状況にあわせて回線設備の増強」を行うとしており、いずれ状況に応じた柔軟な制限の緩和(つまり上限の押し上げ)が必要になると思われる。
  • 1日のUL量が30GBっていつからいつまでの期間?
    • こちらに関しては、ダウンロード板のISP規制情報報告スレ Part77にて問い合わせたユーザの報告が寄せられている。それによると、一日とは任意の24時間であり、特に区切りはないようである。つまり、その時点までの24時間の間に30GBを超えるアップロードをした時点で対象となりうる、ということらしい。
  • 加入者が現在の転送量を知りうる手段は
    • 上記スレッドにて報告されているが、現状ではOCN側からそうした確認するためのサービスを提供することはない?
  • こうした総量制限以外の帯域制御は行っていないのか
    • 現状では、体感的には行っていないように思えるし、行っていたとしても、それを体感できない程度であれば、ユーザとしては不満はない。ただ、それでも行っているのであれば、その情報は明確に開示すべき。

*1:数年前の古いデータはあった気がするけど

*2:DTIだと15GB。修正:DTIは総量規制をやめて、P2Pファイル共有ソフトに対する「通信負荷の高まる時間帯において帯域の制限を行う「クオリティ規制方式」へと変更」している。。

*3:ただし、この記事は2007年5月のものであり、現在も同様であるかどうかはわからない

*4:アップローダじゃなくても、自宅サーバにてデータをホストしている人たちも。まぁ制限にかかる人といっても本当にごく一部だとは思うけどね。

*5:数百GB/日というところもある。

*6:もちろん、お高めだけどね。

*7:ほとんどがBitTorrent、しかもJamendoばかり

*8:たぶん、あくまでも私の体感として

*9:P2P技術が用いられたサービスを利用することも含めて