北京オリンピックは『海賊P2Pライブストリーミング』に再び火をつけるか
もうすぐオリンピックが始まる。私はそれほど興味を持ってはいないのだけれども*1、気にはなっている。ちょっと違った角度で、ね。
見たい試合が見れない
日本の場合、日本である程度視聴率の取れる試合が優先して放送されるし、他の国でも、自国で視聴率の取れる試合が優先されるだろう。まぁ、お金を出して放映権を買っているわけで、視聴率の取れない試合を流しても仕方がないところもある。日本ではそれほど人気のない競技だったり、人気はあるけれど日本が絡んでいない試合となれば、放送されにくいだろう。しかし、それでも需要がゼロというわけではない。その試合を見たい、という人は存在するだろう。
見たい試合を何とかして見る
前回のドイツワールドカップでも同様の状況だった。競技としてはサッカー1つではあるが、「○○対××の試合が見たいんだが、どの放送局でも放送されてないんだ」という人が、世界中にあふれかえった。しかし、それはそれぞれの国で放送されていない、のであって、世界のどこかでは放送されていた。であれば、「どこかの国で放送されている試合を見れればいい。」
それを可能にしたのが、個人が中継可能なP2PTV*2であった。Sopcast、TVants、PPLive、PPStreamなどのソフトウェアによって、世界中の「誰か」が中継している試合のライブ放送を視聴することができた。
その後、こうした個人が中継可能なP2PTVは、スポーツのライブ放送を中継し、世界中に配信するために利用されるようになった。もちろん、それ以前にもそうした利用がなされていたのだが、ワールドカップという世界中の人々が注目するような大イベントでより多くの人が「つかえる」ツールだという認識を持ったことだろう。
「北京」オリンピック
この手の、勝手ストリーミングが可能なP2PTVソフトウェアの多くは中国国内で開発され、配布されている。前回のワールドカップで起こったちょっとしたP2PTVブームが再び過熱するとしたら、おそらくは次のオリンピックだろうと以前から考えていた。つまり、北京オリンピックで。
スポーツ団体がこうした勝手ライブストリーミングに対して、何の心配もして来なかったわけではないし、無許諾のストリーミングに対する対抗策も考えてきただろう。そのような状況であれば、中国側も自国産のP2PTVに対して、何かしらのアクションを起こすのではないか、と考えていたのだけれども、今のところはそういった話を聞こえてはこない。
違法ライブストリーミングに対するアクションではないけれど
ただ、こういった動きもあったようだ。
インターネットテレビ業界のトップ「PPLive」は上海でこのほど、中国中央テレビ局(CCTV)と提携し、五輪競技大会の生中継を行うことを発表した。PPLiveは今年初め、▽映像のライブ中継▽映像の共有化▽映像や文字による情報サービス▽参加型エンターテインメント――を一体化した「PPLiveスポーツコミュニティ」の概念を打ち出していた。新華社のウェブサイト「新華網」が伝えた。
インターネットテレビの「PPLive」、五輪生中継へ--人民網日文版--2008.07.22
もちろん、これが海賊ライブストリーミングに対処するもの、という位置づけかどうかはわからないが、正式にライブストリーミングを行うことによって、海賊ストリーミングを無価値にしてしまう、ということにもなるだろう。
もちろん、どの程度の競技、種目がストリーミングされるのかにもよるのだろうけれどもね。もし、ほんの一部だけのストリーミングであれば、まさにそのPPliveを利用して海賊ストリーミングがなされるのではないか、と思うのだが。それに対しては、どのような手を打つのかというのも気になる。
余談
この辺のことは、先日のBitTorrentを利用したSwarmplayerがP2Pライブストリーミングのトライアルを開始したよ、という記事を訳している最中に思いだしたのよね。P2P Nextは、BBCをはじめとする多くの放送局から支援や注目を集めているけれど、しかしそのテクノロジーが一般に利用できるものであるとすると、PPliveをはじめとする、これまでのP2PTVの役割を継ぐものとなるのではないか、と思うところもある。