モバイルコンテンツ審査・運用監視機構に失望する

NTTドコモKDDIソフトバンクモバイルウィルコムの携帯・PHS事業者4社が、モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)が認定したサイトを未成年契約者に対するフィルタリングサービスに反映させることになったとか何とか。また、上記4社は未成年契約者に対して原則ブラックリスト方式のフィルタリングサービスを適用するとのこと。
参考:携帯事業者、フィルタリングにEMA認定“健全サイト”を反映へ
簡単に言ってしまえば、ブラックリスト方式でフィルタリングかけますが、そうしてフィルタリングされたサイトでもEMAが認定したサイトなら見れますよ、ということ。これまで、EMAが認定したサイトは、「大集合NEO」、「gumi」、「GREE」、「MySpaceモバイル」、「魔法のiらんど」、そして今日新たに「モバゲータウン」、「en 高校生」が認められている
思ったのは、なんだか知らないけどいつの間にかどこかのサイトが認定されていたり、されてなかったりするんだなぁということ。もちろん、そうした情報はEMAなり当該のサイトが公表しているんだろうから、それを参照すればいいじゃないかと思われるかもしれない。
認定を受けている「魔法のiらんど」では、安全への取り組みとしてこのようなページを作っている。読んでみると確かに頑張っているなぁという印象を受ける。ただ、それはそれが実際になされていれば、の話。それを確認してくれるのがEMAというところなのだろう。実際、魔法のiらんどトップページにも以下のように認定を受けていることが示されている。

では、EMAという団体がどういう基準で、どの程度当該のサイトがその基準をクリアしているのかが知りたくなる。EMAのサイトを見てみた。

いやぁ、何がびっくりってコンテンツの大半がpdf、もしくはdoc, xlsなんだよね。最新情報に並んだものも全部pdf。なんていうか、子供たちとか親御さんが見に来ること全然考えていないんだなぁって思った。公開されている認定基準も業者向けのもので、それもやっぱりpdfで配布されている。子どもたち、親御さんが見に行ったとして、欲しい情報はソレじゃないと思うんだよね。
少なくとも認定されているサイトは一覧にすべきだし、EMAの掲げる認定基準もわかりやすい言葉で記述すべきだろう。また、認定されたサイトもどういった点で基準をクリアしているのか、という詳細も記載した方が望ましい。多くの人たちから「親も教育しなければ」という意見が寄せられているし、EMAもそう主張しているが、親がそうした教育の結果、多くの知識を得たとしても、そのときに必要とされる情報が足りなければしょうがない。
さらに欲を言えば、認定されなかったサイトもケーススタディとして、基準に照らしてどういった点が不足しているのかを明らかにするという意味では、公表する意義はあるだろう。よいところだけを知っても危険性はわからない。どこに落とし穴かがあるのかを知ることが重要なのだから。
教育・啓発が重要だというEMAの主張は同意したいが、だからこそ、そのために必要なことをEMAがおろそかにしているのはいただけない。業者ばかりではなく、EMAが守っているという人たち、その身近な人たちをもう少し気にして欲しいと思うのだが。

余談

以前のInternetWatchの記事にこのような記述がある。

「認定サイトが悪いことをしたら、EMAが責任を取るか」という問いに対しては、「我々はリアルと同じものをネットに作るだけのこと。例えば、モバゲーは東京都と同じコミュニティ規模です。東京都をすべて管理できるのでしょうか? リアルでも、教育機関や警察があっても、自動車事故では全国で年間7000人が亡くなっています。リアルでできないことはネットでも無理。我々は、車道と歩道は分け、信号を作り、警察がいて、教育プログラムがあるというように、リアルのセーフティネットと同じものをネットに持ち込みたいのです」

10代のネット利用を追う: 「母のように子どもたちを見守りたい」第三者機関のEMAに聞く

確かに、そういう側面もある。問題をゼロにするには、おそらく利用をゼロに近いところまでに制限しなければならないだろう。なるべく利用させる方向でいけば、例外的に問題が生じるということも否めない。ただ、だからといって批判を免れることはできないだろう。たとえ東京都が事故を防げないのは仕方ないとしても、それが管理上の問題から生じる事故であれば批判されるし、責任を問われかねない。同様に、EMAの認定がおかしかったがゆえに生じた問題であれば、それは批判されてしかるべきだし、信用を失っても致し方のないことであろう。それはネットもリアルも同様である。

追記

KoshianX KoshianX みんな認定拒否すりゃフィルタリングなんて「使いはじめの時に外さなきゃならないめんどうなもの」というだけの存在になるのに

そうなんだよなぁ。結局、フィルタリングがヨクワカラナイモノになってしまえば、「そんなにいうならはずしてあげようかねぇ」という程度のものになるだけなんじゃないかな。多くの子どもたちがこんなのいらない、迷惑なだけだと思えば、それはみんな親に向けられる。その時に親がどう判断できるのかってことを考えると、やっぱりリソースは足りないよ。日常的にケータイ使ってるわけでも、子どもたちがよく使ってるサイトを知ってるわけでもないんだから。
だからせめて、入口程度の情報だけは出そうよって思うんだよね。

このコラム、すごく考えさせられるんだけど、ここで出てくる『家出掲示板』だって、メディアがあおれば潜在的な被害者になる子供たち、加害者になる大人たちがますます増えるだろう。もちろん、一番増えるのはサクラを使った業者なんだろうけど、それでも多くの人が知ることによって「みんなやってるんだ」という感覚が生まれかねない。
思春期の子どもって一番ココロにスキマが生まれる時期なんだと思う。言い換えれば、一番葛藤を抱える時期。もちろん、それは親から精神的に自立する*1ために必要不可欠な時期でもあるのだけれど、だからこそ不安定にもなる。そうした時期にすべての親が常に子供たちと向き合っていられるわけでもないし、一枚上手でいられるわけでもない。
そうした最も危うげな瞬間に、どこからともなく集まってくる悪意*2から子どもちを守るために、多少強引でもフィルタリングというツールを用いる、もちろんそれは本質的な解決にはならないといわれるかもしれないが、本質的な解決を求めるのであれば時間がかかる。そのための一時的な措置という風に感じるところもあるんだよね。

*1:拒否するのではなく

*2:iedeshoujobbs.com/