大手違法着うた配信サイト開設者逮捕、と違法着うたサイトNOW
社団法人日本レコード協会は21日(火)、公式ホームページ上で、着うた(R)、着うたフル(R)などを模した音楽ファイルを無料でダウンロードできる配信サイト『第(3)世界』の開設・運営者など2名が、京都府警察ハイテク犯罪対策室、八幡警察署、下鴨警察署に、著作隣接権侵害容疑で逮捕されたと発表した。着うたフル(R)が対象となった刑事事件は今回が初となる。
違法着うたフル(R)で初の逮捕者 音楽配信サイト『第(3)世界』が著作隣接権侵害(オリコン) - Yahoo!ニュース
あくまでも今回初となるのは着うた『フル(R)』の違法配信に対する逮捕。これまで携帯向けの違法音楽配信を行っていたケースとして、2006年11月に違法着メロ配信者がJASRACより告訴され、2007年5月には着うた配信者が逮捕されている。
多くの人がこれまで何もしてこなかったの?と思われるかもしれないが、ニュースになっていないところで実際には著作権侵害コンテンツの削除や、違法サイトの閉鎖のための活動は行われている。
2006年の着メロ違法配信サイトでも、JASRACよりは着メロを違法配信していた男性に警告、男性が応じなかったことからISPに対し、プロバイダ制限責任法に基づいて管理曲の着メロを削除させている。その後も男性が別のサイトで違法配信を繰り返したことから、提訴に踏み切っている。
JASRACは「警告を繰り返しても無視するなど、侵害の度合いが悪質な場合はやむを得ず告訴する場合がある」としている。
ITmedia News:着メロ無断配信で初の逮捕者 JASRACが告訴
というように、おそらく多くのケースは、警告によって、なりを潜めたことで告訴や逮捕にまでは至っていないのだろう*1。
また、今回の第(3)世界開設者の逮捕に関するニュースリリースでRIAJが述べているように
当協会及び会員社は、権利者に無断で携帯電話向けにアップロードされている大量の音楽ファイルの削除要請を実施しており、その数は本年9月末時点で約20万件を超えています。
社団法人 日本レコード協会|プレスリリース
と、かなりの数の違法音楽ファイルに対する削除要請を行っている。我々が知らないところで活発なアンチパイラシー活動が行われているのだろう。
違法着うたサイトについて
私としては最近今回摘発された第(3)世界を知ったのだけれど、このサイトはかなり有名なサイトだったみたいで。
News47によれば、「同サイトは約2万曲が登録され、利用者も100万人以上という国内最大規模の違法音楽配信サイト」であったという*2。確かに、『着うたフル10000曲配信中』とか『1億HIT』*3とか書いていたので、相当な人気あるんだろうだなぁとは思っていたが。ちなみにサイトはこちらhttp://www.dai3-w.sakura.ne.jp/から*4。
- 追記:asahi.comでは「登録者数が約100万人」とされている。おそらくはメルマガの登録者数だろう。
また、このサイトから上げられた利益は相当なものらしく、
藤本容疑者はサイトの広告料として2年間で約1億2000万円の収入を得ていたという。2人は面識がなく、メールや掲示板でやりとりをしていた。
「着うたフル」違法配信 著作権法違反容疑で2人逮捕
とか。億単位になっちゃうのね。
実際にリンク先を見てもらうとわかりやすいのだが、こうした大手違法着うたサイトの大半は、広告収入を狙ったものが多く、メインページやその他のページに貼られているリンクの9割以上が広告となっている。
また、楽曲をダウンロードするためにパスワードを要求するというサイトが多く、メルマガにパスワードを記載し購読させるとか、大量の騙しリンクの中に正解のパスワードが書かれたページを紛れ込ませる、といった2つのタイプがある。第(3)世界は前者。
パスワードをかけるというのも、閉鎖的なコミュニティによくある権利者に見られると困る、というものではなく、広告料を稼ぐためのものというところだろう。誰だってパスワードを取得することができるのだから。
他にも、掲示板を利用し、参加するユーザに着うたをアップロードさせるというサイトも少なくない。
違法着うたサイト巡りをして思うこと
実は数ヶ月前から、パケホーダイを利用してこうしたサイトを巡っている。これまでいろいろとケータイ文化を批判的に見てきた一方で、そうした文化がどんなものなのかよく知りもしていなかったから、それなら実際に見てみようってところで。
で、実際にこうした違法着うたサイトを巡っていて思うのは、昔のWeb割れとかアングラとか言われてた頃の雰囲気に近いなぁということ。もちろん、当時の「テクニカルな面で逝っちゃってる」ようなところはほとんどないんだろうけど、それに付随して出てきたとりあえず稼ごう的な感じのところに似ている。やけにランキングサイトのリンクを踏ませようとしたり。
個人的にはWebのこれまでを思い返してみると、いずれはこうしたサイトも淘汰されていくのかなと思える。基本的には、こういったサイトは生で楽曲ファイルをおいているのだけれど、じゃあ今Webでそういったサイトを探すとなると、それはそれで面倒くさい*5し、以前のようにその辺に転がっているというわけでもない。また、いろいろなサイトを見ていて、これほどまでにうっとうしい広告*6や、騙し、ランクアップのためのクリックやメルマガ登録強制といった面倒なものは、それを代価する、もっと快適なものが登場すれば、すぐに利用されなくなるだろう。
ただ、その代価となるものは、必ずしも合法サービスではないだろう。結局、海賊ユーザたちは携帯向けオンラインストレージなどのサービスに移行していくのではないかとも思える。管理人が直接ファイルをサイト内に置くのではなく、ユーザにアップロードさせたものをホストするという方向へ。ただ、規模としてはファイルが一カ所に整理されて集中している現状よりは、かなりマシな状況にはなるかもしれない*7。
余談
昨日、違法配信されているコンテンツのダウンロードを私的複製から除外する方向で法案を作成することが決まったようだが、これに関しては音楽産業から着うたのためにこれを押し進めるよう強い働きかけがあったと聞いている。でもねぇ…、かなりの数の着うたサイトが、サイト上に特に偽装だのなんだのをすることなく、広告踏むだけでえられるパスワードだけで、簡単に入手することができる状況にある。本当にあからさまに置いてあるのよ。P2Pファイル共有のように仕組み上、追求に困難さが伴うというわけでもない。
本当にダウンロード違法化が必要だったのか、と疑問に思えてならない。こちらの件に関しては、またいずれ。
追記
この件に興味を持った方は、RIAJが公表している調査を見てみるといいかもしれない(調査/統計を見るときは数字だけじゃなくて方法、背景なども考えながら読むといいですよ)。