児童ポルノを共有していた国内LimeWireユーザ逮捕、と腑に落ちないLimeWireのシェアとユーザ人口
実のところ、米国だと児童ポルノを共有しているLimeWireユーザの逮捕はそれほど珍しくも無いのだけれどね*1。でも、日本国内はこれまで児童ポルノに関してLimeWireを利用してやりとりしていたことで逮捕に至ったケースはなかった。
ライムワイヤー使い児童ポルノ公開 初の逮捕 - MSN産経ニュース
LimeWireを利用して児童ポルノを共有していた北海道の男性が、児童買春・ポルノ禁止法違反容疑で長野県警に逮捕されたとかなんとか。同県警によれば、「ライムワイヤーを使った児童ポルノ公開の逮捕は全国初」だという。
追記:同県警のハイテク犯罪対策室が7月にサイバーパトロールで発見した同容疑者を発見したことが、今回の逮捕に繋がっているようだ。
この逮捕については、「きちんとした捜査であれば」支持したい、というくらいにしておいて、それ以外で気になった箇所について。
県警によると、ライムワイヤーはファイル交換ソフトとして世界で90%近いシェアがあり、約300万人が利用している。
ライムワイヤー使い児童ポルノ公開 初の逮捕 - MSN産経ニュース
なんか色々おかしい。ファイル共有ソフトとしてのLimeWireのシェアはそこまで大きくはないし、ファイル共有ユーザもそこまで少なくはない。たとえば、先日、世界最大手のBitTorrentトラッカーThe Pirate Bayは、常時2,500万ピアのトラッキングを達成したとアナウンスしており、世界のファイル共有ユーザ人口が330万人程度ということはないと思われる。
色々と勘違いしているのでは?
「ライムワイヤーはファイル交換ソフトとして世界で90%近いシェア」という部分については、おそらくは間違っている。少し変則的なデータではあるが*2、以前に紹介した記事にあるように、ファイル共有ソフトのインストール率では、LimeWireは世界の各地域で多くとも3割弱であることが示されており*3、ファイル共有ソフトのマーケットシェアでは37.19%であるとされている。少なくとも、別の調査によって異なる結果が示されたとしても、BitTorrentやeDonkeyを差し置いて、LimeWireが90%のシェアを占めるとは思いがたい。ちなみに、日本でもLimeWireのシェアは2割弱*4。
ただ、Gnutellaサーバント*5として世界で90%近いシェアというのであれば、理解できなくもない。もちろん、これに関してのデータがあるわけではないのだが、LimeWireと非LimeWireのGnutellaサーバント(たとえばFrostWireやCabos)の比率だといわれれば、想像を超えるものではないかなと。
また、ファイル共有人口に関しても、ACCSらの調査から私が計算した「2007年度調査における日本国内のファイル共有ユーザ人口」でも、550万人程度が現在利用者だと推測されたし*6。
ただ、LimeWireの世界のP2Pマーケットシェアの4割弱で、BigChampagneが2,3年前に言っていたようにP2Pファイル共有人口が1,000万人程度の規模だというのであれば*7、LimeWireの利用車が世界で300万人、というのは当たらずも遠からず、というところなのかもしれないけど。
うーん、実際どういうソースを元にこういう発表を行なったんだろう?
追記:読売の記事では、
情報セキュリティ会社「ネットエージェント」(東京都)によると、ライムワイヤーは、ネット上でユーザー同士がファイルを無料交換できる米国発のソフトで、世界的に普及率が高く、1日に約360万人が利用している。
児童ポルノ動画をネットで“公開”…容疑の男を逮捕 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
とあり、これなら理解できる範囲かなぁ。300万人というのは、Gnutellaネットワークに常時接続しているユーザ数、なのかな。