MGMT vs. サルコジの著作権侵害問題、終結:スリーストライクへの強烈な皮肉?

以前スリーストライク法導入を推し進めていたサルコジ大統領や彼の所属政党、国民運動連合(UMP)が、米国のバンドMGMTの楽曲「kids」をオンラインビデオや政治広告キャンペーンに無断で使用していたのは著作権侵害だとMGMT側が抗議していた件が、ようやく解決したとのこと。半月ほど前の話題なのだけれど、前回のエントリの余談に書こうと思ったら、結構なボリュームになったもので。

一時は

UMPはこのことを認めたが、故意ではなく間違いから起きた出来事だと主張、著作権侵害の象徴として1ユーロを申し出た。MGMTはアーティストや作家の権利を冒涜し、侮辱しているとしてこの申し出を拒否。同バンドは弁護士を通じ全額の支払いを求め、支払われなかった場合、UMPを相手に訴訟を起こすとした。これを受け、UMPの幹事長は同バンドに支払いを約束したそうだ。

サルコジ大統領の政党、著作権侵害は故意ではないとインディーズバンドに1ユーロをオファー - スラッシュドット・ジャパン

と、泥沼に陥りかけていたが、この支払いに関して合意に至ったようだ。BARKSによれば、UMPから3万ユーロ(約390万円)の和解金の提示があったという。

これに関しては、先月末、MGMT公式サイトのニュース欄に"MGMT Waterloo with France fini!!"というタイトルでMGMT側からのコメントが掲載された(強調、改行はheatwave_p2pによる)。

2ヶ月ほど前に掲示板を通じて告知した件(フランスの政党UMPによる著作権侵害)について。通常ならMGMTは音楽と政治との混同を避けるスタンスをとっている、だがUMPはアンチパイラシー法を通そうとしておきながら、その一方で俺たちの許可なくMGMTの楽曲を勝手に使おうというのだからふざけた話だ。
俺たちは、音楽へのアクセスがミュージシャンとファン、双方に利益をもたらすものだと信じているし、それが俺たちの音楽を世界中に広めることを助けてくれたのだと確信している。それに、俺たち自身も音楽にアクセスできたおかげで個人的な音楽のコレクションを広げることが出来た。
俺たちは何も「典型的なアメリカ人」になろうなんざ思っちゃいないし、莫大な銭やらチンチラのコートやら超高級車が欲しくって訴えたんでもない。
その代わり、UMPが提案してきた和解金は、アーティストの権利団体に寄付させてもらうことにするよ。ありがとうフランス、料理は美味かったよ。セシボン MGMT

MGMT Waterloo with France fini!!

本当にイカしたコメントだ。全編にわたる皮肉がたまらない。いくつかこのコメントを日本語訳して伝えるニュースもあったのだが、スリーストライクへの強烈な皮肉についてはあまり触れられていないのが残念。彼らは「We believe that access to music benefits both the musicians and the fans, and has undoubtedly helped spread our music around the globe, while also expanding our personal musical collections.」と明確に『音楽へのアクセス』について言及しているのだが、これはスリーストライクポリシーへの反発ととって間違いないだろう。ミュージシャンとしても、リスナーとしても、音楽へのアクセスがもたらす恩恵を強調しているのだから。

アーティストのため、とスリーストライクポリシーを推進し、音楽へのアクセスを奪おうとするサルコジらは、自分たちアーティストに断りもなく楽曲を勝手に使い、手違いだったんだとして1ユーロでなかったことにしてくれという。それに対してふざけるな!と反発し、手にした和解金はアーティストの権利団体に募金する。そうすることで、ようやくアーティストに報いることが出来よね?といわんばかり。

でも、リスナーとしての私は、海賊行為は認めたくはない。海賊行為があることすら積極的にでも、消極的にでも認め、現実として許容してくれるアーティストには何としても報いたい。ライブに行く、というのも1つの報い方ではあるが、なかなか来ちゃくれないからCDだのTシャツだのを買うことにしよう。

あと、宣伝もね!


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