ファイル共有にポジティブな態度をとるアーティストの発言集

リリー・アレンのアンチパイラシー・ブログ『It's Not Alright』にたくさんのアーティストからアンチ違法ファイル共有のコメントが寄せられているので、それに対抗して『P2Pとかその辺のお話』でこれまで紹介してきた親ファイル共有コメントを集めてみたよ、というお話。アーティストの中でも単純にFAC or Lilyで分けられるわけじゃなく、いろんな意見があるってことで。

Noel Gallagher(ex-Oasis

「そもそもロックスターがてめぇのアルバムを買ってくれって迫るなんてかなりダセェよな。キッズなんてアルバム買うだけの金もないんだぜ?だから、もしタダで手に入るってんなら、やっちまえ!でも、Oasisのレコードはダメだからな、そいつは法律違反ってモンだ。」
Kaiser Chiefsを思う存分痛めつけてやってくれよ。あとPigeon Detectivesもだな。でもOasisのだけは盗むなよ!」

ノエル・ギャラガー「アルバムがタダで手に入るってんならやるしかねぇよな。でもOasisのは勘弁な」 :P2Pとかその辺のお話
Robin Pecknold(Fleet Foxes )

「僕は、数百、数千のレコードをダウンロードしてきたよ。なら、どうして誰かが僕らのアルバムをダウンロードしていることを気にしなきゃいけない?気にするほどのことじゃない。要は、人間1人、どれくらいのお金が必要になるか、ってこと。誰かがそれについてとやかく言うのを聞く度にウンザリさせられるよ。僕個人としては、ね。」

Fleet Foxes:違法ダウンロードが僕らミュージシャンを育てている :P2Pとかその辺のお話
Franz Feldinand

Franzは、BBC Radio1の40周年記念を祝うコンピレーションのために、1977年のDavid Bowieのシングル、Sound And Visionをカバーした。…(訳注:コンピレーション)全体としては、特にチャリティというわけでもなさそうなので、さぁ、今すぐブラウザをLimeWireに向けるんだ、お前たち。

Franz Ferdinand、最新トラックはLimeWireで、と推奨 :P2Pとかその辺のお話
Duffy

「いつだったか誰かに聞かれたのよ。違法ダウンロードをどう思うかって。私はね、『あのさー、そんなこと気にしてなんかないわよ』って感じ。だって、そうしてるのはほとんどがキッズたちでしょ?その子たちが大人になって、お金を稼ぐようになれば、きっとレコードを買ってくれるわよね。それにね、(訳注:違法ダウンロードのおかげで)音楽がみんなの生活の一部になってるじゃない。」
「えっと、だからね、2つのやり方があるとして。何にだって良い面も悪い面もあるの。それは違法なアクセスを作りだすんだーって人がいてもね、それでも私は、もっと大きいところでうまくいってるんだって思うの。わかる?基本的に、それはみんなにアクセスできるようにしてくれる。だから、とってもポジティブなものだと思うし、それで何が傷つくの?って思うの。」

Duffy:「違法ダウンロードは音楽を生活の一部にしてくれている」 :P2Pとかその辺のお話
Joss Stone

「音楽は共有されなきゃいけない。[…] 私が音楽で好きじゃないところは、それに結び付いたビジネス、そこだけ。今、音楽がフリーであるのなら、そこにはビジネスはない、そこには音楽だけがある。だから、私はそれが好きだし、私たちは音楽を共有すべきなのよ。」
「いいのよ。もし誰かがそれを買ってくれたとして、それを焼いて、友達と共有する、本当にクールよね。気にすることはないのよ。私の音楽を聴いてくれるのなら、どうやってそれを聴くかってことは気にしないわ。私のライブにきて、聴いて、最高の時間を過ごせたって思ってくれるなら、それはサイコーなのよ。だから、私は気にしない。彼らは聴いてくれる、それが、幸せってものよ。」

Joss Stone:「音楽は共有されなきゃいけない」 :P2Pとかその辺のお話
Trent Reznor (Nine Inch Nails)

オーストラリアでのふざけたYearZeroの価格設定。恥を知れ、UMG。YearZeroは34.99オーストラリアドル(29.10米ドル)で販売されている。人々が音楽を盗むのも不思議はない。同じ店でAvril Lavigneのレコードは21.99オーストラリアドル(18.21米ドル)で販売されている。

Nine Inch Nails:真のファンが搾取されるのでは「人々が音楽を盗むのも不思議はない」とUniversalを批判 :P2Pとかその辺のお話

中国における特殊な事情を考えると、合法的なチャネルを通じて西洋の音楽を入手することは容易ではないようなので、我々のファンに1つ提案をしよう。もし、君たちが我々の合法的なCDを見つけ、購入するのであれば、あなたからのサポートに感謝を示すだろう。しかし、それを見つけることができないのだとすれば、インターネットからダウンロードすることのほうが、海賊盤CDを購入するよりも、より許容できるオプションであると考えている。

Trent Reznorから中国のファンへ:海賊盤を買うな、ダウンロードしてくれ :P2Pとかその辺のお話

ただ最近では、Trentはファイル共有よりも、アーティスト自らの手で音楽を提供することを推奨している

Steve Knightley(Snow of Hands)

「私たちの音楽に価値を見出してくれた人々は、親切にもCDのコピーを作り、私たちのことを広めるための努力を費やしてくれているんです。そしてそれを受け取った人はその後、私たちを見るためにチケットを買い、そのライブの晩に私たちのCDを買ってくれるのです」
「こうしたプロセスを『海賊行為』と呼ぼうと思えばそうなのかもしれません。しかし、私にとってそれは、親切な行為なのです。私たちのオーディエンスのサイズもレコードのセールスも上昇させてくれるのですから。ライブの後、オーディエンスと話しているときにいつもこう言っています。もし、あなたが何がしかの方法でそうするというのなら、気持ちよくやっちゃってください!ってね。」

英国:フォークデュオ Show of Hands「海賊行為は私たちを支えている」 :P2Pとかその辺のお話
Moby

KazaaユーザだったJammmie Thomasが200万ドルの賠償を命じられたことについて。

「音楽を聞いたことで人々を罰するのは、音楽ビジネスを守るための方法として絶対に間違っている。恐らく、音楽産業は音楽ファンに対処するために『リスペクトされるよりも恐れられることを良しとする』アプローチを採用したのだろう。」
「それが事実かどうかはわからないが、、『リスペクトされるよりも恐れられることを良しとする』やり方は、消費者による選択を考えればサステナブル(持続可能)なビジネスモデルとは思えない。『アーティストが良いレコードを作るのを助け、消費者に素晴らしいアルバムをリーズナブルな価格でお届けして愛されることを良しとする』新しいモデルってのは考えやしないのか?」

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Gary Lightbody(Snow Patrol

The Pirate Bay判決について。

「彼らは投獄されるべきじゃない。あれで1年もぶち込まれるなんてイカレてるよ。その処罰は、やったことに対して妥当じゃないね。」
「これは、我々が我々自身にもたらしているものであり、自分で創りあげた世界で生きていかなければならない、ということ。音楽は全ての人に開かれている。もし、音楽を手に入れる方法を知ってるなら、やっちまえ、って言うね。」

Snow Patrol:The Pirate Bayへの判決は「行き過ぎ」と非難 :P2Pとかその辺のお話
Matt Heafy(Trivium

「自分自身のTriviumのCDを作るんだ。それを誰かにやれ。メールでも、アップローダーにでも、Zipにするでも、FTPででも…やっちまえ。インターネットや急激に進む進歩によって、現代の日常はせせこましく流れていく。音楽もそれにあわせなきゃいけないし、次のレベルに進化しなきゃいけない、いまはまさにそんなときだ。自分自身が何者であるのか、自分がどんなタイプのファンなのか、それをみんなに伝えなきゃいけないんだ!」

Snow Patrol:The Pirate Bayへの判決は「行き過ぎ」と非難 :P2Pとかその辺のお話
Corey Taylor(Slipknot

「連中はアルバムセールスが減ったのをダウンロードのせいにしたがっているが、実際にはレコード会社の過ちだね。」
「俺はプロダクトのクオリティの問題だと思うね。レコード会社がレコード契約だとか、てめぇらのとこのレーベルだとかに縛られたストリートでクソなムック(くだらないもの)を配んのをやめるってんなら、クズなアルバムでももうちっとは売れんじゃねぇの?能なし共でもな。」

SlipknotフロントマンCorey Taylor:音楽が売れねーのをダウンローダーのせいにすんな、クソしか売らねぇレーベルが悪いんだろ :P2Pとかその辺のお話
MGMT

「俺たちは、音楽へのアクセスがミュージシャンとファン、双方に利益をもたらすものだと信じているし、それが俺たちの音楽を世界中に広めることを助けてくれたのだと確信している。それに、俺たち自身も音楽にアクセスできたおかげで個人的な音楽のコレクションを広げることが出来た。」

MGMT vs. サルコジの著作権侵害問題、終結:スリーストライクへの強烈な皮肉? - P2Pとかその辺のお話@はてな
Fran Healy(Travis

違法ファイル共有に関しては、アルバムを購入しようとする人と、友人から録音してもらおうという人がいる、ということでしょう。たとえインターネットがなくなったって、それは変わりません。だから私は、心配で夜も寝れないなんてことはないのです。では、おやすみなさい。

Travis、ファンを著作権侵害クレームの脅威から守る :P2Pとかその辺のお話
Dave Peters(Throwndown)

「俺らのファンがアルバムを手に入れてくれたり、気に入ってくれることはうれしい。でも、俺が学んだ哲学は、もしお前らがCDセールスを支え続けることは、オールドモデルを延命させるってことだ。それは、俺のみたいなのが、音楽で飯を食っていこうとしたら、年間9ヶ月はツアーに出てなきゃならないってことなんだよ。」
「もし、キミらが本当にバンドをサポートしたいと思ってるのなら、アルバムを『盗んで』くれ...レーベルの息の根を止めるのを手伝ってくれないか。そして、ライブにきたときにはTシャツでも買って、一緒に歌ってくれ。」

「俺達のアルバムを盗んでくれ、レーベルの息の根を止めるのを手伝ってくれないか」 :P2Pとかその辺のお話
Andre'(The Pragmatic)

「ファンはライブに行き、グッズを購入し、もっともな理由でバンドをサポートします。我々の世代は、ますます音楽に対しての飽くなき欲求とともに育ったのだと思っています。自分がしたことは自分がよく知っています。私は大好きだったアルバムをたくさんダウンロードして、そして製品も購入しました。気に入らないアルバムもたくさんダウンロードして、そして削除しました。Napster / SoulSeek / BitTorrentのおかげで知り、大好きになったバンドは数えきれません。ファイル共有は決して音楽を盗むことに関するものではありませんでした。それは大好きなアルバムを見つけるためのものでした。」
「レーベルは不満を言って、たった1ドルのために彼らの熱狂的なオーディエンスを訴えるでしょう。私は彼らを責めることはできません。彼らはそうやって自らの会社を興したのですから。彼らにとって変化は脅威です、とくにそれがコントロールできないときには。でも実際のところ、もしNapsterが登場しなければ、私はミュージシャンにはなっていなかったでしょう。誰も称賛することはないでしょうが、Napsterは現代の驚異的な音楽文化を促したのだと思っています。これからのアーティストにとって、P2Pネットワーク上で自らの音楽のプロモーションを行わないという選択肢は、ますます露出を得るのを難しくするだろうと思っています。」

ファイル共有に未来を見出すアーティストたち :P2Pとかその辺のお話
Mr.Suitcase

「インターネットが機能しているとき、ファイル共有に対して文句をつけるとか、対抗するという理由などあるだろうか。我々は、今ここに、ファイル共有が『ある』という帰結に至ることができるのみなんだ。私にとって、制作者と消費者というトップダウン構造がぼやけはじめ、創作されるすべてのものが、ただ体験されるために存在するのではなく、新たな創作を作り上げる1つの要素として存在する、私はそうした考えに強く惹きつけられている。それはファンタスティックなこと!テクノプロデューサーのThe Fieldが私の楽曲を使って、素晴らしい作品『Istedgade』を創ったとき、私は心の底から興奮した。」
「『ファイル共有のせいで。アーティストは…できなくなる』、『ファイル共有のせいで、これからは誰も…なるだろう』、私はそれとは正反対の考えを持っている。デジタル時代の持つ創造的な(beautiful)側面、それは録音されたすべてのものが、リミックスされ、調整され、修正されることにあると考える。」

スウェーデン:海賊税を利用して、海賊版アルバムを制作したアーティスト :P2Pとかその辺のお話
Glenn Kotche(Wilco

違法ダウンロードに対する懸念はあるか、との問いに。

「いや、全く。それは、そうなるべくしてそうなりつつある、ってこと。人々がソフトウェアを得て、楽曲を探して、彼ら同士で交換することをエキサイティングだって思えるなら、それはすばらしいことだよ。彼らは熱心だよ。」
「前にも言ったと思うけど、本当にそう思うんだ…。俺はライブで数え切れないほど多くの人に、俺たちのアルバムを違法にダウンロードしたとか、買わずにコピーで済ませたとか言われたよ。でも、彼らはライブに来ているんだ、チケットを買ってね。そして、前に出したレコードやTシャツや他のグッズも買ってくれる。そう、彼らはバンドを、俺を、いや俺たちみんなを支えてくれてるんだよ。俺たちがCD1枚1枚からほんのちょっとずつのお金を稼ぐことより、音楽を聴いてもらうほうがよっぽど大事なことだよ。俺たちが辿り着いた答えは、みんながそれを楽しんで、そして分かり合えること、だから(訳注:新作の流出について)全く気にしてはいないよ。むしろ、それに逆らおうとする人たちのほうが考え違いをしてるんじゃないかな。それは将来あるべき形なんだろうから。」

違法ダウンロードを許容するアーティスト:「音楽を聞いてもらうことが大事なんだ」 :P2Pとかその辺のお話
Rhett Stonelake(Barcelona)

自分たちの曲がYouTubeにアップロードされたビデオに勝手に使われていたことについて。

「このビデオで僕らの曲を流してくれたおかげで、先週、僕らのレコード『Absolutes』はセールスはiTunes Storeのロックチャートをグングン駆け上がって行ったんだ。このことは是非ともみんなに知っておいてもらいたくてね。」

楽曲無断使用のYouTubeビデオ、アーティストのアルバムセールスを伸ばす :P2Pとかその辺のお話

それほど親ファイル共有ではないけど…

Bob Dylan

違法ダウンロードについてのコメント

「へぇ、いいじゃないか?いずれにしても(CDなんて)価値のあるもんじゃないんだし。」

Bob Dylanの考える音楽のあり方 :P2Pとかその辺のお話

ボブ・ディランにとっては、レコーディングそのものが大したものじゃないらしく、そんなもんコピーして何が楽しいんだ?程度のスタンス。問題だ、問題じゃない、というレベルじゃなく、どうでもいいというところか。

Kid Rock

「我々は競争の場を公平なものにしなきゃいけないと考える。俺は俺の音楽を盗んでいる人々のことは気にしない、いいじゃないか。でも、だとしたら、彼らはすべてのものを盗まなきゃいけないだろう。石油会社がどれくらい儲かっているか知っているだろうか?ガソリンが必要となれば、スタンドに行ってタンクを満タンにして、とんずら。きっとそういうこともしくじらないんだろ。」

Kid Rock:俺の音楽を盗もうと気にはしないよ、でも盗むのは音楽だけじゃないだろ? :P2Pとかその辺のお話

Kid Rockはちょっと掴みにくいけれど、相当な皮肉りっぷりなので、違法ファイル共有ユーザに対しては多少ネガティブ、それ以上に別の連中が気にくわない、といったところだろうか。

終わりに

ここまで親ファイル共有コメントばかりでストレスがたまった人もいるだろうから、リリー・アレンのアンチパイラシーブログ『It's Not Alright』よりPrefrab SproutのPaddy McAloonの痛快なコメントを。

ちょうど先週、取材のためにダラムキに向かうタクシーの中でこんなことがあったんだ。タクシーのドライバーは僕に、ほんのちょっとだけ違法に音楽をダウンロードしたことを明かした。彼はちょっとだけならいいだろうと思ったんだそうだ。目的地について、僕は彼に料金の4分の3だけ渡した。そして、こう言った。「キミのしたことは、僕をこういう目にあわせてるってことだよ。」本当の話さ。

It's Not Alright: Paddy McAloon - Prefrab Sprout

まぁ、本当かどうかはわからないけど、なかなか粋なエピソードだね。アンチ違法ファイル共有コメントに関しては、リリーのブログ『It's Not Alright』に数多く掲載されているので是非とも読んでいただきたい。こちらも興味深い発言が多い。

あと、今回のエントリは特に英国のスリーストライクポリシー導入議論とは特に関係がないので、悪しからず。今行なわれるべきは、導入後の影響とそれ(特に罰則)が適切だといえるのか、という議論だから。違法ファイル共有の是非を語っても仕方ないと思う。それにFAC vs. Lilyをみていても、違法ファイル共有を撲滅するという方向性は一致しているわけだし。