Share違法ファイル共有ユーザ一斉摘発まとめ

2009年11月30日午前、警視庁や京都府警をはじめとする10都道府県警が、ファイル共有ソフトShareを利用し、映画、アニメ、ゲーム等を著作権者に無断でダウンロード可能な状態においたとして、10都道府県の10名を著作権法違反の容疑で逮捕した。このほか、1名が取り調べを受けているという。

10都道府県警におよぶ一斉摘発は意図的なものらしく、警察庁によると「同種の行為はネット上に多くあるが、事件を単発で摘発し報じられると証拠隠滅される恐れが強いため、時期を調整して同時着手した」(47news)「単発で摘発しても抑止効果が限定的」NIKKEI NETであるためだという。

現在、逮捕されたShareユーザに関しては、各都道府県警の発表に依存しているためか、情報が分散している*1。なので、以下に淡々とまとめることにする。

京都府警生活経済課ハイテク犯罪対策室・五条署

8月25日から26日までの間、映画「ローレライ」をShareで公開していたとして、京都府城陽市の会社員男性(44)を逮捕。(日本映像ソフト協会

警視庁ハイテク犯罪対策総合センター・築地署

9月30日頃、「オリコン2009・ベスト50」といったファイル名で、JASRACおよびレコード会社4社が著作権著作隣接権を持つ8曲の楽曲データをShareで公開したとして、長野県大豆島の会社員の男性(47)を逮捕。警視庁によると、この会社員はオリコンチャート上位50位の楽曲から演歌を除いたものを2007年8月ごろから毎週94回にわたってリリースしていたという。(MSN産経ニュース日本レコード協会

徳島県警生活環境課・小松島署

10月9日、アニメ「ヒカルの碁」をShareで公開したとして、徳島県小松島市の無職の男性(57)を逮捕。調べに対し容疑を認め、「ファイル交換ソフトでほかの人が公開したアニメをダウンロードしていたので、自分も提供しなくてはいけないと思った」と供述しているという。押収したPCからはDVDにして約900枚分のデータがネット上に公開されていた痕跡があるとのこと(NHKオンラインNEWS24

佐賀県警生活環境課・鳥栖

10月21日頃、テレビアニメ1話分をShareで公開したとして、福岡県筑後市のゲームセンター店員の男性(30)を著作権法違反の容疑で逮捕。容疑者は調べに対し「悪いことと知りながらやった。弁解することはない」と曜日を認めているという。押収したPCからは1500本以上のアニメのデータが発見され、他にも大量に配信していた可能性があるとして調べを進めている。(NHKオンライン

北海道警生活経済課・札幌方面厚別署

9月7日、「ドラゴンクエスト9 星空の守り人」をShareで公開したとして、茨城県取手市の無職の男性(23)を逮捕。厚別署によると「コンピュータソフトウェア著作権協会」から「ゲームソフトが無断で配信されている」と相談があり、捜査に着手したという。(SANSPO.COM

北海道警生活経済課・札幌方面北署

9月13日、「らんま1/2テレビシリーズ」をShareで公開したとして、札幌市北区の会社員男性(40)を逮捕。(コンピュータソフトウェア著作権協会

兵庫県警生活安全企画課・東灘署

10月21日から22日にかけて、Wiiのゲームソフト「Wii Music」「Wii Sports Resort」をShareで公開したとして、横浜市神奈川区の自営業男性(37)を逮捕。容疑者は調べに対し容疑を認めているという。(神戸新聞コンピュータソフトウェア著作権協会

埼玉県警生活安全企画課・大宮署

9月17日から10月1日の期間に、大塚愛コブクロの楽曲データ、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー part3」、映画「DEATH NOTE」、「DEATH NOTE the Last Name」、アニメ「らき☆すた」など映像、音楽等1000個のファイルをShareで公開していたとして、埼玉県狭山市郵便事業会社期間雇用社員男性(23)を逮捕。調べに対し「古い物なので捕まらないと思った」などと供述しているという。(MSN産経ニュース日本国際映画著作権協会

三重県警生活環境課・津署

10月11日頃、アニメ「機動戦士ガンダム00」をShareで公開したとして、地方公務員の男性(37)を逮捕。容疑者は調べに対し容疑を認めているという。押収したPCからは別のアニメも共有していた痕跡があるらしく、余罪についても調べを進めているとのこと。(中京テレビリアルタイムYOMIURI ONLINE

岡山県警生活安全企画課サイバー犯罪対策室・岡山南署

今年4月5日ごろから10月26日までの間に、アニメ「ドラゴンボール改」、「フレッシュプリキュア!」、「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」をShareで公開したとして、岡山県北区の無職男性(40)を逮捕。(日本映像ソフト協会

秋田県警察生活環境課サイバー犯罪対策室・秋田臨港署

この件については詳細が明らかにされておらず、Shareを利用した公衆送信権の侵害容疑で、秋田県由利本荘市の女性(?)宅への家宅捜索が行われたとのこと。(日本映像ソフト協会

詳細がわかったものについては、アップデートすることにします。

思ったこと

今回の件で気になったのは、全国都道府県警がますますファイル共有ソフトを利用した著作権侵害に対応してきているということ。これまでWinny、Shareなどのファイル共有ソフトを利用した著作権侵害事件といえば、京都府警の十八番のように思われてきたが、その後、警視庁、埼玉県警、千葉県警、福岡県警など*2もこうしたケースを扱うようになり、そして今回は徳島県警佐賀県警、北海道警、兵庫県警、三重県警、岡山県警秋田県警ファイル共有ソフトを利用した著作権侵害の捜査に乗り出し、容疑者の逮捕に至っている。

以前、ACCS専務理事の久保田さんは「1カ月に1件程度摘発することで、ファイル共有ソフトの利用者への抑止効果が出る」といった議論が、「警察庁が中心となり開催する協議会であった」と発言していたが、これだけの都道府県警で対処できるようになれば、その実現も不可能ではないのかもしれない。こうした流れはおそらく、京都府警が苦い思いをしつつも培ったノウハウが各都道府県警に着実に伝わっているということなのだろう。

私も海賊行為問題の解決のためには、定期的な摘発、取り締まりが必要だとは思うが、一方で利用者のニーズにあったサービスを提供すること、ただただ違法ダウンロードをするなではなく、魅力的なオルタナティブを提示することも必要だろう。一ユーザとして、少しでもそれに貢献できればと思っている。

なお、ファイル共有ユーザが国内で初めて逮捕されたのが、ちょうど8年前の今日、11月30日だった。「もうだめぽ」の生まれた日である。

*1:書き始めてから気づいたのだが、ACAの「P2Pを悪用した著作権侵害行為を一斉取締り」というニュースリリースがこの一斉取り締まりの件をまとめていたり…

*2:ファイル共有ソフトを利用した猥褻物または児童ポルノの流布は他道府県警も扱っている