Lime Wire社、非公式海賊版LimeWireの配布中止を求める:ホント、P2Pファイル共有界隈は地獄だぜ

先月26日、米連邦地裁よりLimeWireの配布、サポートの停止を命じられたことで、「LimeWire終了のお知らせ」が世界中を駆け巡った。アクティブユーザ数は別にしても、世界で最もインストールされているP2Pファイル共有ソフトウェアの終了は、大きな衝撃をもたらした。

しかし、それから1ヶ月と経たずして、LimeWireは復活を遂げた。もちろん、Lime Wire社からのリリースではなく、謎の海賊組織『MetaPirate』の手によって。

MetaPirateがリリースした『LimeWire Pirate Edition(LimeWire海賊版)』は、LimeWire 5.6ベータをベースにしているが、Lime Wire LLCサーバとの通信を遮断、遠隔設定*1の無効化、インストール時のAskツールバーの除去、LimeWirePRO全機能のアクチべートなど、単に復活するどころか、大幅な改善が加えられている。

「『や、やったか…?』←やってない」を地でいくフラグ回収に思わず吹き出してしまったが、これに反応したのがLime Wire社。同社は、10月26日の差し止め命令以後、サイトおよびLimeWireクライアント上に「Legal Notice」を掲示し、LimeWireのサポートおよび配布の終了をアナウンスしていたのだが、これに新たな文言を追記している。

(前略)最近、インターネット上にLimeWireの名を冠した無許諾のアプリケーションが出回っております。弊社は、いかなる方法であれ、著作物をアップロードまたはダウンロードするために、LimeWireのソフトウェア、名前および商標を使用するすべての人々に対し、それを中止するよう求めます。なお、著作物の無許諾のアップロードおよびダウンロードは違法行為となります。

このメッセージがどの程度強いものであるかはわからないのだが、Lime Wire社にとっては、先の差し止め命令*2に従っていることを明確にしなければならない*3ため、同社とは無関係であること、むしろこうした活動の中止を求めていることを、明示しておきたいという意図があるのかもしれない。もしくは、Lime Wire社に残された「LimeWire」というブランドを勝手に使うな、ということかもしれないが…。

さて、Lime Wire社側から活動の中止を呼びかけられた謎の海賊団体「MetaPirate」はどうでるのか。Ars Technicaの報道によると、彼らのプランに変更はないのだという。

「現在、LimeWireが法的プレッシャーを受けていることを考えると、彼らがLimeWire Pirate Editionの配布を止めるよう要請してくるのは理解できる。しかし、LimeWireGPLでライセンスされており、それゆえ我々は配布を続ける権利を有している。LimeWire Pirate Editionはフリー・ソフトウェアですよ。いろんな意味でね。」

LimeWire: Seriously, don't blame us for new "Pirate Edition"

実際、LimeWireGPLでライセンスされており、この主張にウソはない。ただ、Lime Wire社はその名前を使うな、ともいっているわけで、そうなると著作権ではなく商標権の問題になりそうなものだが…。

Lime Wire社との関係以外にも、レコード産業がこれを見逃すのかという問題もある。これについては、

「ご幸運を。7つのプロキシを越えた先で待つ。」

LimeWire: Seriously, don't blame us for new "Pirate Edition"

とのこと。好戦的ねぇ。

LimeWire Pirate Editionについて

この非公式海賊版LimeWireの配布元にはリンクをはらない方が良いかなと思ったものの、いずれ広まるだろうことを考えると、そうした配慮は意味がないのかなと思ったりもする。その一方で、非公式海賊版LimeWireがあるという情報だけを流して、それがどこにあるのかを明示しなければ、アドウェアスパイウェアてんこ盛りの「偽」非公式海賊版LimeWireの餌食にもなりかねない。

というわけで非公式海賊版LimeWireにリンクをはる…

…前に、1つお話を。LimeWireユーザの多くは、違法音楽共有/ダウンロードを目的にしているんだろうけど、もうそういうのは止めにしませんか?共有するにしても、JamendoArchive.org などでクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下で共有されている曲の中から、素晴らしい曲を見つけ出して、それを共有してみませんか?と思うですよ。

それに、最近では、違法P2Pファイル共有のリスクはますます高くなってきていますよ。今年2月には、LimeWireと同じGnutella系クライアントCabosのユーザ*4著作権侵害で逮捕されていたり、日本レコード協会RIAJ)は、8月に14人10月に10人LimeWire/Cabosユーザについて情報開示請求を行っていて、民事上の責任を問われることになります。RIAJがこの活動に本腰を入れてきたら、ますますその人数は増えるでしょう。

ますます高まる違法ファイル共有のリスクを考えると、違法な目的で使用することはお勧めできませんし、個人的には「止めよう!」と言いたいところです。ただ、自らの共有物をきちんと管理し、共有が許諾されているもののみを共有し、違法にアップロードされているであろう著作物には触れないようにすれば、LimeWire/Cabosでは合法的な利用が可能です。

ただし、「LimeWire/Cabosでは合法的な利用が可能」であることを錦の御旗に掲げ、その影でこっそりと違法な行為を行うのであれば、クリエイティブ・コモンズなど我々に自由な利用を許す作品を提供するクリエイター/アーティストを、そしてそれを支えようと奮闘する人たちを、愚弄し、その未来を狭める行為であると私は考えます。

改めましてリンクをはる

とはいえ最終的には、個々人の自己の責任に帰するわけで、「はは、良い子ぶりやがって」と違法共有、違法ダウンロードをしちゃう人もいるかもしれない。仕方がないとは思うけれども、「うるせーくそったれが、こっちは本気じゃい!」と思っちゃうのも仕方ないよね。

自由な共有、それにより生み出される文化、そしてそれを支える人々の気持ちを踏みにじり、アーティストやクリエイターに全く還元されないことも全く気にかけず、高まる刑事・民事的措置のリスクがある中で、それでも違法共有/ダウンロードをするというのならば、それは自己責任でどうぞ。

■ LimeWire Pirate Edition(Win / Linux / Mac)

LimeWire Pirate Editionについて

LimeWire Pirate Editionは、人気のファイル共有アプリケーションLimeWireの最終ベータ版をベースにした、無料のオープンソースソフトウェアであーる。2010年10月、Lime Wire社がLimeWireの提供を停止しやがってので、我ら海賊猿の一群は、捨て去られた船によじ登り、帆を立て直し、大砲をピッカピカにして、そいつをコミュニティにタダでリリースしたってわけよ。Gnutellaネットワークに永遠の輝きを。

LimeWire Pirate EditionはピュアP2Pソフトウェアであーる。Lime Wire社のサーバにも他の企業のサーバにも依存しない。アドウェア?なんだそれ。スパイウェア?うまいのかそれ。遠隔での監視?シャットダウン?やれるもんならやってみろ。*5

*1:三者による遠隔操作

*2:LimeWire社は「LimeWireまたはそれに類似した(無許諾の著作物の共有を)可能にし、助長し、容認し、援助し、誘惑し、奨励し、または誘引するシステムならびにソフトウェアに、いかなるかたちであれ関連したコンピューター・サーバーおよびウェブサイトにおける、直接的又は間接的な活動、援助、活動の支援」を禁じられている。(PDF

*3:損害賠償額が跳ね上がりかねないから

*4:CabosだろうがLimeWireだろうが、同一のGnutellaネットワークなので、摘発のリスクはほぼ等しい

*5:ちゃんと翻訳すると「LimeWire Pirate Editionについて−LimeWire Pirate Editionは、人気のファイル共有アプリケーションLimeWireの最終ベータ版をベースにした、無料のオープンソースソフトウェアです。2010年10月、Lime Wire社がLimeWireの提供を停止した後、我ら海賊猿の一群は、捨て去られた船によじ登り、帆を立て直し、大砲を磨き上げ、それをコミュニティに無料でリリースしました。Gnutellaネットワークを生かし続けるために。LimeWire Pirate EditionはピュアP2Pソフトウェアです。Lime Wire社のサーバにも他の企業のサーバにも依存しません。アドウェアスパイウェアも含まれてはおりません。遠隔での監視やシャットダウンもできません。」