インディペンデントクリエイターの資金調達を助けるKickstarter、2年で急成長を遂げる
ローンチから2周年を迎えたKickstarterが、自社ブログにて、この2年間の統計について公表しているよ、というお話。
Kickstarterは、クリエイターとファン・支援者とを繋ぐ、ソーシャルなマイクロ・ファンディング・プラットフォーム。クリエイターは、自身のプロジェクトを立ち上げ、同サイトのページでプレゼンテーションし、投資を募る。投資を申し出てくれた支援者やファンには、その額に応じた(金銭以外の)「何か」(特典)の提供を誓約する。目標調達額に到達すると、誓約は成立し、支援者/ファンからクリエイターに資金が提供され、その後、クリエイターからファンに資金に応じた「何か」が提供される。
インディペンデント・クリエイターにとって、プロジェクト実現のための資金調達は、たとえ回収の見込みがあったとしても、現実的には難しい。そこで、クリエイターとファンとを直接繋ぎ、プロジェクトの実現を支援させ、クリエイターもファンもハッピー、というのがこのKickstarter。
そのKickstarterが、この度2周年を迎えた。同社はそれを記念(?)して、Kickstarterのこれまでの統計を公表してくれた。
(さっくり見たい方は、TechCrunchの記事「一般参加の出資サイトKickstarter, 2年で20000プロジェクトに$50Mを超える出資申し出あり」がオススメ)
月間誓約(Pledged)額 (April 2009 - March 2011)
まずは、月間のトータル誓約額のグラフです。このグラフは累積ではありません。(プロットされてはいませんが)4月の誓約額は3月以上となりそうです。
高解像度版月間プロジェクト・ローンチ数 (April 2009 - March 2011)
開始されるプロジェクト数も同様に上昇しています。3月には2,000をこえるプロジェクトが開始されました。4月はさらに増えている見込みです。
高解像度版誓約・回収額の合計
誓約額トータル: $53,107,672
回収額 (成功したプロジェクト): ~$40 million
非回収額 (成功しなかったプロジェクト): ~$7 million
進行中 (現在投資を受付中のプロジェクト): ~$6 million
回収率: ~85%Kickstarterはオール・オア・ナッシング投資モデルにて運営されています。投資を受けるためには、どのプロジェクトも目標額に到達しなければなりません。以下の円グラフから、このモデルがうまく機能していることを示しています。
投資を申し込まれた5,300万ドルのうち、資金調達に成功したプロジェクトにより回収されたのが4,000万ドル、また、現在進行中のプロジェクト(現在、投資を受け付けているプロジェクト)が600万ドルとなっています。残る700万ドルは、回収されなかった金額となります。申し込みはあったものの、目標額に達しなかったプロジェクトです。
さらに、資金調達が終了したプロジェクトについてみてみましょう。投資を申し込まれた4,700万ドル(回収4,000万ドル + 非回収700万ドル)のうち、およそ85%の資金(4,000万ドル)が回収されました。この85%の回収率は、この2年間、ずっと安定しています。現在進行中のプロジェクトの600万ドルについても、この85%の回収率が予想されます。
それでは、Kickstarterプロジェクトの成功率を見てみることにしましょう。
プロジェクト統計
ローンチされたプロジェクト: 20,371
成功したプロジェクト: 7,496 (43%)
不成功のプロジェクト: 9,700
進行中のプロジェクト: 3,175およそ43%のKickstarterプロジェクトが、資金調達に成功しています。プロジェクトの成功率は、40-45%の間で安定しています。この数字が「良い」のか「悪い」のかは判断しにくいのですが、私たちがKickstarterのコンセプトを練っていた段階では、5%くらいの成功率を見込んでいました。それを思うと、非常に良い兆候だと思います。
また、43%の成功率と、85%の回収率の違いについても注意しなければなりません。これは、誓約の大多数が成功したプロジェクトに向けられていることを意味しています。一方、目標額に到達しなかったプロジェクトのうち、21%は1度も投資を受けずに終わっています。
資金調達の成功に至る臨界点はどこにあるのでしょうか。1つ以上の誓約を得たプロジェクトは、成功の確率を52%へとジャンプアップさせます。しかし、資金調達がどの辺りまでいけば、プロジェクトの実現を確信できそうなのでしょう?
高解像度版資金調達目標の30%に到達したプロジェクトでは、90%以上が成功しています。上記のグラフでは、線が緑色になるほど、プロジェクトの成功率が100%に近づいていることを意味しています。
ローンチした20,000のプロジェクトのうち、目標額の90%に達しながらも、不成功に終わったプロジェクトは、たった1つでした。
さて、次はカテゴリーごとの資金調達額を見てみることにしましょう。
高解像度版映画が2,000万ドル近くにまで達し、群を抜いています。続く音楽は、1,300万ドルをこえています。13のカテゴリーのうち10のカテゴリーが、100万ドルを超えています。
カテゴリー別の誓約額
アート: $3,184,732
コミック: $943,118
ダンス: $645,492
デザイン: $3,601,851
ファッション: $554,048
映画: $19,717,790
食べ物: $1,583,063
ゲーム: $1,052,557
音楽: $13,094,547
写真: $1,679,361
出版: $2,732,501
テクノロジー: $1,748,109
劇場: $2,570,503映画と音楽があまりに突出しているので、このリストは少し歪められて見えるかもしれません。劇場プロジェクトに250万ドル超、ダンスプロジェクトに60万ドル、コミックプロジェクトにおよそ100万ドルという数字は、誇らしく思えます。
バッカー(支援者)数
バッカー: 591,773
リピート・バッカー: 79,658リピート・バッカー数は、2つ以上のKickstarterプロジェクトを支援した人の数です。これは私たちにとって、非常に重要な数字です。Kickstarterの「サプライ・サイド」を意味するのですから。彼らは単に友達のプロジェクトを支援するだけではなく、何か支援すべきものを探す人たちなのです。中には、50ものプロジェクトを支援している人もいます。Kickstarterスタッフはその好例と言えるでしょう。Kickstarterスタッフ全体で、1,590のプロジェクトを支援してきました。(私たちの給料がどこに注ぎ込まれていったかわかります。)
The Kickstarter Blog - Happy Birthday Kickstarter!
この2年間で、インディペンデント・クリエイターの7,500のプロジェクトに、4,000万ドル(32.5億円)*1が投資された、というのもすごいなぁと思うんだけど、それ以外の数字も実に興味深い。
85%の回収率と43%の成功率の差は、上記の記事にもあるように、人気のある、またはファンの多いプロジェクトに投資が集中し、そうではないプロジェクトには向かないことを示唆している。もちろん、成功したプロジェクトの方が、額が大きくなるのは当然なのだが、個人的には思っていたよりも以上の数字だったので、ちょっと驚いた。
1つ1つのプロジェクトを見てみないと結論づけることはできないのだけれども、やはりある程度のファンベースを抱えているクリエイターが強いのかもしれないなと思った。
あともう1つ気になったのは、リピート・バッカーの存在。これが多いか少ないかは判断に困るけれども、1割を超えているというのは、私が想像していた以上に多くて、これも驚いた。出会いの場ともなっているのかもしれないし、支援すること自体がある種の楽しさを生み出しているのかもしれない。
Kickstarterは、ファンクラブ・モデルの派生形と捉えられているかもしれないが、個人的には、活動を広めるためコアとしても働きうるものだと思っている。次のステップのためのね。
*1:うち5%がKickstarterの手数料?