DRM:綺麗なジャイアンの言い分を真に受けちゃいけないよ

id:gnorthy033さんより先日の「DRMは大規模違法ファイル共有を防ぐため、という勘違いに反論する」というエントリにレスを貰ったので、再び返信。こんな風にレスを貰えると嬉しい。

(引用注:DRMの)不便性にも理由があって、ソフトウェア上でクラックを防ぐにはどうしても
ITMSならITMSのセキュリティのシステムを利用したプレイヤーでないとならないのだろう。
ITMSで購入した楽曲がiPodでしか再生できないのは不便極まりないけれど、そういう理由なら致し方ない。
理想は理想だが

DRMは不完全だと思う - engaget Japanese

AppleDRM技術FairPlayは既にDVD Johnことヨン様によってクラックされている。
それに、Appleが頑なにDRMの互換運用、FairPlayのサードパーティへのライセンスを拒み続けたのは、単に自社の利益を守りたかっただけだろう。AppleDRMの開放はiPod/iTSの市場支配を崩壊させることにもなりかねなかったわけで。Amazon MP3から大幅に遅れて、Appleも完全DRMフリー化に乗り出しているが、既にAppleは60億曲のDRMedファイルをばらまいており、それがユーザをiPodに縛り付ける鎖となっている。また、ユーザがiPodを選び続ける限り、そのデフォルト管理ソフトウェアとしてiTunesが利用されることになり、iTSへの導線を確保し続けることができる。
結局、レコード産業の思い描いたデジタル・リストラクション・マネジメントは、Appleによって華麗にハックされ、うまく利用されたということ。もちろん、それによってApple音楽配信市場の基礎を築いたわけで、レコード産業としては感謝しているところもあるのかもしれない。皮肉を込めていえば、過剰な制限を課す現状のDRMを死に追いやるきっかけを作ったという点では、ユーザもAppleに感謝すべきなのかもしれないね。

DRMそのものを不要だと批判してしまうと、やはりネット上で一瞬にばらまかれてしまうだろう。
後、DRMは手渡しばかりではなく、やはりネット上での複製配布を禁止するためという意味は大きなウェイトを占めていると思う。

DRMは不完全だと思う - engaget Japanese

が、現実に全く機能していないわけで、それを堅持しなければならない理由などもはや存在しない。iPodでもiTunesのライブラリでも、そこにある音楽ファイルのほとんどはDRMのかけられていないファイルだ。
また、オンライン配信にのみ理不尽なDRMを掛けたところで、オンラインでの違法流通の歯止めにはならないことは明らかである。「ばらまかれてしまう」のではなく、「ばらまかれている」のだから。しかも、そのオリジナルとなったファイルは音楽配信によって得られたファイルでもない。にもかかわらず、オンライン配信にのみ過剰な制限を課すべしというのであれば、あまりに不条理ではないだろうか。
それでもなくてはならぬというのであれば、それこそ「理想は理想だが」だろう。

なんにせよ、DRMが不完全だからDRMそのものを否定するという意見はある意味参考になった。

DRMは不完全だと思う - engaget Japanese

オンライン音楽配信での「正規購入者に不便だけを強いるDRMを批判している」のだが…。
NBC Directや当初のBBC iPlayerによるダウンロードサービスにDRMが施されていること、JoostやHulu、現行のiPlayerなどのストリーミングサービスでもコピーを制限するようなシステムになっていること、Napsterを初めとする聴き放題のサブスクリプションサービスによる利用制限に対してまで、批判しているわけではない*1。むしろ、その場合には、消費者に新たな、多様なサービスをもたらすものとして、必要不可欠であるとすら思っている。「正規購入者に不便だけを強いる」ことを批判しているのであって。

*1:一部にWindowsオンリー、IEオンリーといった副次的な制限があることは批判するが。