「CD買おうぜ」って呼びかけて何が悪い
■ 「CD買おうぜ」 ネットに対抗、若手音楽家ら呼びかけ- asahi.com
若手ミュージシャンたちがCD買おうぜ運動をしているとかいうニュースなんだけど、かなり批判されてる。
■ はてなブックマーク - asahi.com(朝日新聞社):「CD買おうぜ」 ネットに対抗、若手音楽家ら呼びかけ - 文化
個人的にはアルバムCDって媒体は、PVなんかのような音楽と付随して価値が生み出されるものなのかなって思う節もあって、その良さをアピールするってこと自体にはそれほど批判的には見てはいない。
んー、どうしてもラッダイト運動のように見えてしまうから、批判が集まりやすいのかもしれないけど、そういうアンチテクノロジー的な運動というよりはノスタルジーとかそういう類のものなんじゃないかな。もちろん、単に懐かしんでいるだけじゃなくて、自分たちが味わってきたCDの良さを若者に伝えていきたい、その出会いを提供したい、っていうところなんじゃないかと。
あと、asahi.comの編集が、音楽産業におけるCDと音楽配信という構図を当てはめてしまっているので、音楽産業への反発がもろにこの運動に降りかかってるような気もする。でも、この運動自体はレコード産業やらCD店やらの意向を受けてるわけではないみたい。
大手CD店などから「運動に協力する」と打診もあるが、今のところ断っている。「大企業の販売促進にしてしまっては、多くの人に届かない。制作者が草の根で活動することに意味があるはずだ」と考えるからだ。
asahi.com(朝日新聞社):「CD買おうぜ」 ネットに対抗、若手音楽家ら呼びかけ - 文化
で、この運動を興し、中心的に活動しているのは、SOULSMANIAっていうファッションブランドだとか(記事にでてくる秦拓也さんってこのブランドの人なのかな?)。SOULSMANIAのサイト内にこのBUYCDs運動の要旨が書いてあって、
・SOULSMANIA発、文字通り「CDを買おう!」という運動
(”CD”と言っているのは一番身近なパッケージだから。LPも含む)・LP→CD→データ
フォーマットが進化し、パッケージとしての音楽作品売上が減少している
「アルバム」という作品を通して音楽を楽しむという概念がなくなりつつある
〜曲単位のデータのみのやりとりって味気なさすぎでしょ?!・作品をつくっているアーティスト側としても、もちろんジャケットを含め
一つの作品として楽しんでほしいと考えている・しかし利便性を追求するあまり”余計な”趣をどんどん削いでゆく今の世の中
・もしあなたが音楽を愛しているのなら、せめてその愛しているものの周り
SOULSMANIA BUYCDs
だけでも、余計な趣に飾られたカラフルで味のあるもので満たそう!
かつ、アーティストに正当な対価を!
< BUYCDs >とは文字通り、“皆さん CD を買いましょう!”という運動です。
配信が主流の時代の中で、もはやこの流れは止められないし、否定はできませんが、
音楽の聞き方や楽しみ方を携帯での着うたや PC配信しか知らない世代に、この運動をきっかけに<“ CD を買う楽しみ”を少しでも知ってもらいたい!>
というシンプルなメッセージが込められています。
例えば、ジャケットのアートワークを含めてアーティストの気持ちを感じる事ができたり、
BUYCDs LIVE!
CD を買ってから家に帰って袋を空けるまでのワクワク感であったり、部屋を片付けてたら出てきたCDから
「これかなり昔にアイツに借りたやつだなー」って思い出が溢れてきたり。。。
細かい部分には思うところがあるが*1、CD好きの私としては大筋では納得できるかなーと。まぁ、音楽配信が主流になりつつあって、その流れは止められないって認識があるからこそ、廃れゆくCDの魅力をもう一度見直そうよ、ってことなんじゃないのかな。「CD or Die」ってわけでもないでしょ。「ネットに対抗」ってのもasahi.comの煽りだろうしね。
すごい反響だー!でもみんないろいろ考えてるんだね〜。ネットに対抗とかかかれちゃったからね、全然そう言わけじゃないんだけど。まあいろんな意見があっていいんじゃんか。おれはこれからもパッケージドミュージックを残していきたいと思ってるけどね。
Twitter / 秦 拓也
音楽配信はダメだー!ってんじゃなく、CDはCDで魅力あるよ!ってことなんだろなって思った。音楽産業全体がCDこそ未来!というなら終わってるなーと思うけど、CD好きがCD愛を広めようとするのならもはや個人の嗜好の話であって、伊達と酔狂だけあればいいじゃないの。
CD馬鹿
CDって何がいいんだろね。CDに限らずレコード盤もそうだけどさ。CDにはアートワークがあります、ライナーもあります、って言っても、音楽配信の方がもっと多くの情報を詰め込めるし、インターネットに繋がることで無限の広がりを持たせることもできる。むしろ、CDは1つのフィジカルな作品として完結した世界観を作り出すところがいいのかな。音楽データだけあればいいって言ったって、アートワークがない「No Image」だけのCover Flowも寂しいじゃない?そういったものをCDに求めるって感じなのかな。
音楽データを物理媒体から引き離して考えることができるようになったのはここ数年のことだけど、それまではそれが一緒になってるってのが当たり前だったんだよね。便宜上一緒だったとも言えるんだけど、少なくともその過程で、その組み合わせの中に価値が生み出されたのかなと思う。大好きなミュージシャンのTシャツを買う、みたいな部分も入ってるのかも。もちろん、その価値は万人が等しく有するものではないだろうけど。
そんなCD馬鹿の私が大好きな音楽レーベルにBeep! Beep! Back up the Truckってオランダのレーベルがあるんだけど、彼らも極度のCD馬鹿だったりする。どれくらい馬鹿かっていうと、CD売るために音源は無料(クリエイティブコモンズライセンス)で提供するくらい。ネットレーベルではなく、CDを売るためのレーベルにしたい、だから音源はタダで結構、気に入ったらCD買ってね、というスタンス。確かに知らないアーティスト、聞いたことのないアルバムをCDで購入するなんてことはあり得ないからこそ、まず音楽を聴いて好きになってもらうと*2。
ある意味では、音楽データだけではなく、CDそのものに何かしらの魅力を感じているからこそ、こうしたレーベルを立ち上げ、運営しているのだろう。まぁ、カセットテープ売ってたりもするけどね。
「私たちのアルバムを目で見て、手にとって、匂いまで感じてもらいたい」
「CDを売るために」アルバムの無料ダウンロード大歓迎する音楽レーベル - P2Pとかその辺のお話@はてな
というBeep! Beep!レーベルの共同設立者Boudewijn Rosenmullerの発言もCD馬鹿が極まっちゃってるなという印象すら覚えるが、だからこそ愛おしくすら思える。そんなBeep!Beep!のリリースしているアルバムは公式サイトで全カタログ絶賛無料配信中。個人的には、Paper Tiger、The Black Atlantic、Kismetがお勧め。
音楽配信は時代の趨勢…?
おそらく今後は、CDから音楽配信へとますます移行していくんだろうけど、そのプロセスはどうかっていうと、メジャーレーベルにとってはお先真っ暗ってのが本音なんじゃないかな。PC向け音楽配信ってシングル購入が優位でアルバム購入はその10分の1以下。日本レコード協会調べでは、2009年はシングル4251万ダウンロードに比べ、アルバムはわずか255万ダウンロードに留まっている*3。アルバムでもってるレコード産業にとっては、あまりに恐ろしい数字だろう。もちろん、アルバムはCDでという層が少なからずいることも反映されているのだろうけど。
では、CDはというと、2009年はシングル4489万枚、アルバム1億6516万枚*4。数量でいえば音楽配信とは比べものにならないんだけど、ご存じの通りCDは2桁の右肩下がり続行中かつPC向け音楽配信は2桁の右肩上がり継続中なわけで、その辺の焦燥感がこの運動に繋がったのかなとも思える。とはいえ、それでもCDアルバムは十分売れてるし、1990年前後のレベルに戻ったといえばそれまでのような気もする。
レコード産業が期待を寄せる音楽配信ってのは、単純に着うたのことを指していて、2009年は着うた1億5708万ダウンロード、着うたフル1億4289万ダウンロード。数量だけだと携帯向け音楽配信はPC向け音楽配信の10倍程度、金額でも8倍程度。asahi.comは「ネットに対抗」なんて煽ったけど、この運動がアピールしたい層は着うた世代*5なんじゃないかなと思えてくる。
レコード産業としては、こうした状況を踏まえ、さらに着うたはCDシングルは喰ってもCDアルバムは喰わんだろうという希望的観測のもと、着うたへのフォーカスを強めてきた。着うたフル先行配信、独占配信とかはまさにその象徴とも言える。ただ、その期待の星 着うた、着うたフルも最近では天井をうった感があって、さぁこれからが地獄の幕開けだ!というところなんじゃないのかな。PC向け配信は確かに2桁成長を続けてるけど、その伸び率じゃCD右肩下がりのレコード産業を支えきれるものじゃない。何らかのブレイクスルーが必要そうだけど、どうすんのかね。