DRMを規格争いの道具にするなら、もうSonyは負けを認めるべきじゃないかな

あ、moraってWindows Media DRMじゃなかったんだ

 レーベルゲートは2月1日、KDDIが同日より配布を開始したau携帯電話の統合PCソフトウェア「LISMO Port」向けに、PC音楽配信サービス「mora for LISMO」の提供を開始した。

レーベルゲート、PC音楽配信サービス「mora for LISMO」を開始:モバイルチャンネル - CNET Japan

この記事を読んで、そういえばSonyのポータブルオーディオってATRAC捨てて、Windows Media DRMにしたんだっけと思っていたら完全な勘違いで、それは欧米市場だけの話だったんだった。
そんなわけで、moraは依然としてSony製品でしか利用できない(他に対応してるとこあったっけ?もはやPanasonicもサポートしていないみたいだし)ATRACしか提供していないと。moraから楽曲を提供した場合、iPodどころかSony製品以外に乗り換えられないという悲しさ。まぁかといって、もう聞かないから買った曲が聞けなくなってもかまわないよ、とあっさり乗り換える人がいたとしたら、それはそれで悲しいけど。
更に、晴れて国内向けSony製品ユーザとなった人たちは、FairPlayは当然のこととしても、Windows Media DRMにも対応していないわけで、ATRAC(OMG)で配信しているストアを探さなきゃいけない。音楽配信によっぽど関心のある人じゃないと全く思いつかないんじゃないかな?
なんつーか、こういうことを考えずに購入できる時代が来るためには、いつになるかわからない日本版Amazon MP3を待つより他にないのかなぁと。といっても、iTSよりはmoraのほうが国内盤のラインナップはいいわけで、少なくとも国内盤の楽曲を購入したい人にとっては、SMEの楽曲のないiTSよりはmoraのほうがいいのかもしれない。ただ、それよりも、iPodという選択肢がないことのほうがつらいかも。
余談だけれど、冒頭の記事にもあるように、moraはSonyのオーディオプレイヤーだけではなく、携帯電話にも活路を見出しているみたいだね。まぁ、そうした方向性ってのは悪くなんじゃないのかと。個人的には利用することはないのだろうけど。

moraで購入したATRACiPodで聴くために

さてさて、moraで購入してしまったけれど何とか楽曲をiPodで聴きたいという人が出てくるのは、DRMの負の側面だったりするわけで、そういうときにどうすればいいか、というお話を。
もちろん、普通にはできない。ただ、一部可能なものもあるのだそうだ。moraのヘルプより。

Q:ダウンロードした曲は、iPodWMA対応機器で聴けますか?
OpenMGに対応していない機器には、直接、転送することはできません。
ただし、CD-Rへの書き込みが許可されている楽曲は、一旦、CD-Rに書き込み後、一般のオーディオCDと同様の方法でパソコンに取り込むことにより転送することが可能です。

[http://mora.jp/help/faq/faq_07.html#02:title=FAQ | 【mora[モーラ]】音楽ダウンロード・音楽配信サイト]

なんて面倒な・・・。かつてはSMEが提供していた楽曲はCDにライティングできなかったって話を聞いたことがあるけれど、今見た限りではSMEの提供曲でもCDには焼けるみたい。でも、この方法、明らかに面倒だよね。そもそもCDに焼く必要のない人まで、iPodやら他のデバイスに入れるためにそうしなきゃならないなんてあまりに不経済な話だ。
それ以外の方法では、PC出力の音をそのまま録音するというデジタルを否定するようなやり方もある(今も使えるかはわからないけど、Hi-MD Rendererを利用すれば実時間より遥かに短時間で録音できるみたい。他には、ぽけっとれこーだといった録音ソフトを利用してもいいかもしれない)。ただ、なんか腑に落ちないよね。

次世代DVD戦争とDRMフォーマットによる囲い込み

にしても・・・、不毛な次世代DVD戦争ですら終わりを告げようとしているにもかかわらず、DRMフォーマット戦争は相変わらず終わりを告げる気配がない。確かにSonyは欧米でのATRACの継続を断念してはいるが、それも欧米の市場でATRACが全く受け入れられなかったためで、moraが一定の利用者を抱えている日本とは事情が異なる。
もはやSonyの国内仕様といっても過言ではない状況にありながらも、既にここまできてしまったことで引き返せないってところなのかな?でも、ATRACに未来があるかといわれれば、正直ジリ貧であるとしか思えない。少なくとも、Sony以外のポータブルオーディオデバイスメーカーにしてみれば、ATRACなどをサポートするメリットはそれほどない。AAC/MP3/WMAさえサポートしていればコスト面でも実用面でも十分というところなのだろう。そんな中、moraがATRACを利用し続ける意味はあるのだろうか。むしろ、欧米同様Windows Media DRMを導入したほうが、ユーザにとっても、Sonyにとっても益のあることではないだろうか。
engadgetの記事に面白い記述がある。

英SonystyleでWalkmanカテゴリの製品ページを開くと、型番の下に筆頭機能として挙げられているのは「Transfer without SonicStage®」、ソニックステージ不要で転送。自社製ソフトウェアを使わずにすむことが目玉機能として宣伝されるプレーヤーもなかなかno.otherです。

ソニー ウォークマンA810・S610シリーズ はやくも値下げ - Engadget Japanese

欧州でのATRACの廃止、Windows Media DRMの導入に際して、Sonyは「Goes Open」という言葉を掲げている。一昨年の調査の時点で、16%ほどの利用状況であったATRAC(この時点で、AACは41%、WMAは28%。その後もiPodの人気には陰りがなく、NapsterといったサブスクリプションサービスはWindows Media DRMを利用している。そういった状況を考えると、ATRACが依然としてこの割合を保っているかどうかはわからない)。そういった点では完全にATRACが無視されていた欧州とは状況は違うものの、日本においても「Goes Open」が必要なのではないか、SonicStage不要の転送が必要なのではないか、とSony自身考えているところもあるだろう。
もちろん、ユーザとしてはMP3での配信に踏み切るのが最も利用しやすいのだけれど、やはり今すぐそうすることも難しいだろう。ただ、できるだけ速やかにATRAC配信の停止、ATRAC購入分についてはWMAフォーマットによる再配信、でもしたほうがよいのでは?と思うのだが・・・(ATRACWMAの相互変換が可能になってもよいのかもしれないけど、それも難しいだろうし)。
個人的にはSonyだからこそ、こういった転換をして欲しいなぁと思うんだけどね。CCCDを推し進め、Sony BMGになるけどrootkitで問題を起こし、以前のフォーマット戦争で「ベータはなくなりません」なんて大々的な広告を打ち出したにもかかわらず、VHSに敗北を認めて路線変更したって前科もある(もちろん、ベータはなくならなかったんだけど、「なくならなかっただけ」で、結果的にユーザの多くはSonyに騙されたと感じただろう)。
DRMは次世代DVD規格争いのように際立ってフォーマット同士の争いという感じではないために見逃されてしまいがちだけれど、現在のDRMの有り様を考えると構図は全く同じだろう。むしろ、際立っていないからこそ、問題なのかもしれない。iPodを、Walkmanを、Gigabeatを、iriverを購入するユーザが、それぞれ利用できる音楽配信サービス、利用できないサービスがどのように異なっているのかを理解しているだろうか。おそらく、大半の人々は買ってから気づくことだろう。
Digital Right Management(デジタル著作権管理)、それがDRMの正式な名前だ。現在のところ、DRMが管理しているのは、ユーザが利用できるデバイスとユーザが利用できる音楽配信ストアである。私達の利用しているそのDRMは、数年後も利用できるのだろうか。「ATRACはなくなりません」?それはベータのときにも聞いたよ。そして失望させられたじゃないか。

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