ドイツISP、BitTorrentトラフィックへの選択的帯域制御を認める

昨年、TorrentFreakがComcastBitTorrentトラフィックに対する過剰な帯域制御を報じたことで、ネット中立性の問題を含むISPの帯域制御の問題がクローズアップされることとなった。Comcast連邦通信委員会において、その帯域制御の妥当性が問われている一方で、日本も含め世界中のISPが依然として顧客に対して具体的な説明のないままに、P2Pファイル共有アップロード/ダウンロードを制限している。
P2P Blogによると、それはドイツでも例外ではないようだ。ケーブルISP Kabel Deutschlandの顧客たちは長きに渡ってBitTorrentの利用が制限されていることに不満を述べ、自分たちの転送パターンが不自然に変化していると主張する。それによると、BitTorrentのアップ/ダウンロード速度が夕方6時を境に低下し、真夜中に元に戻るというパターンを繰り返しているとのこと。
P2P Blogの筆者Janko Roettgersが、Kabelに対して質問したところ、驚くべき回答が返ってきたという*1。Kabelは実際に何をしているのかは明かさず、同社の加入者にはファイル共有ユーザは少なく、それゆえその影響を受ける人はごく僅かだ、と消極的ながらも帯域制御を行っていることを認めたという。また、同社は、ダウンロードは一刻を争うものではないだろうとも述べている。
P2P Blogでは、「ドイツのISPが選択的なネットワークマネジメントを認めた初めて」のケースであり、今後ドイツにおけるネット中立性議論に発展していくのかどうか興味深い、としている。
うーん、個人的にはそこまでにはならないだろうなぁとはおもうんだけどね。日本でもそれほど議論にはならないかもなぁと。やっぱりこの問題はなかなかに理解してもらいにくいところがあると思うのよね。
昨日も述べたけれど、ISPは主に利用者間の公平性の確保、サービスの質の改善を理由に帯域制御を行う。ただ、前者の問題を解決するのであれば、過度の利用が見られるユーザに限定すべきであって、カジュアルユーザまで巻き込むようなプロトコル単位での制限はおかしい。また、後者の問題の解決に関しても、サービスの質の改善のために特定プロトコルの品質を劣化させるというのは、矛盾した行為にも思える。
さらに、こうした帯域制御を複雑にしているのは、Comcastのように、帯域制御によって制限されるサービスに、自社と競合するサービスが含まれる場合である。Comcastはビデオコンテンツの配信事業も行っているが、同様にビデオコンテンツを配信しているVuzeなどから競争を妨害するために品質を意図的に低められている、という批判を浴びている。
もちろん、ISPにだって限界はあるわけで、それを超えてサービスを提供しろなどといっても無茶な話なのは理解している。帯域制御を行うことで、全体としてより多くのユーザが快適な利用ができるのであれば、多少の制限は仕方がないとは思う。しかし、だからといって不公平な制限を課させるというのは納得し得ないし、そのような制限に関する情報をひた隠しにし続けることも納得のいくものではない。ISPの売り物はインターネット接続サービスであり、P2Pファイル共有が快適に利用できるかどうかという点も、ISPの売り物に含まれていると思うのだけれどもね。

*1:ソースはドイツ語だったので、内容の確認はできず・・・。