YouTube, me, your music.

YouTubeにアップロードされた、とある音楽ビデオと、それにまつわるメールのやり取りのお話。

とある13歳の少年が、NYのチップチューンバンドAnamanaguchiの曲に出会った。彼は大層気に入り、みんなにも聞いて欲しいと思って、勢いそれをYouTubeにアップロードした。

それから2年、15歳になった少年は、YouTubeで8-bitミュージックを探していた。ふと、その中に、かつて自分がアップロードしたビデオのサムネイルを目にする。アップロードしたことすらすっかり忘れていたAnamanaguchiのビデオ、中でもHelix Nebulaという曲のビデオは既に50万ビューを超える人気のビデオになっていた。彼が投稿した他のビデオも、未だに視聴され続けていた。

この2年の間、少年は著作権について学んだ。そして、過去のアップロードが著作権侵害に当たることも理解した。そこで彼はAnamanaguchiのPeter Berkmanにメールを送った。「自分はこのチャンネル(ビデオ)を削除した方が良いのか?」と。

メールを受け取ったPeter Berkmanはこんな返事を返した。

僕としては、僕らの音楽を愛してくれているのなら、僕らの音楽を自由に共有する権利があると思っているよ :)

チャンネルはそのままで構わない。YouTubeは実に素晴らしいもので、僕も見るのが大好きだし、Helixのビデオについたコメントも楽しんでるんだ。しょっちゅうチェックしてるくらいにね。

ありがとう!
Peter

ANAMANAGUCHI

著作権侵害をしてしまったと過去のアップロードを悔やむなら、問い合わせなどすることなく即座に削除してしまえばいい、という考えもあるかもしれない。

でも、勝手にアップロードしたからといって、勝手に消してしまって良いのだろうか?もちろん、アップロードされたこと、そのビデオがYouTubeに存在していることを望まない人たちもいる。そういう場合は、確かに消した方がいいし、そもそもアップロードもしない方がいい。

しかし、インディペンデント・ミュージシャンのAnamanaguchiにとって、このHelix Nebulaのビデオは、自分たちの存在や曲を広めてくれる有り難い存在なんだと思う。もちろん、未だにこの曲は無料で提供され続けていて、YouTubeで聞かれたとしても、それほどのダメージはない。だからOKというところもあるんだろうけども、それ以上に、一リスナーの勝手アップロードとはいえ、50万超のビュー数、1500超のコメント、4,500超の高評価がつけられた動画は、ソーシャル/バイラルな世界における貴重な財産となる。

チップチューンや8-bitに興味を持った人が、近いうちに出会うであろうビデオ、それはキットバンドにとっての強みになる。もちろん、このビデオほど人気ではなくても、たくさんのビデオがアップロードされていて、それもチップチューンや8-bitを掘り下げていくリスナーたちがいずれ出会うビデオになる。それもまた、それぞれが財産になっているのだろう。

今のご時勢、ファンはエンターテイメントを与えられ、その見返りにお金を渡すという、単なる消費的な存在以上の役割を担い始めている。そういう意味では、このメールのやり取りを公開したことは、バンドにとってもファンにとっても、良いことなのかなと。

余談

私自身、Anamanaguchiのファンなので、このやり取りを見てなんだかうれしくなった。上記のビデオを聞いて気に入った方は、彼らの音楽を掘り下げてみてはいかがでしょう?