CarTorrent:車同士を繋ぐP2Pネットワーク、交通情報等の共有と伝達

Mario Gerla、Giovanni PauらUCLA Engineering's Network Research Labの研究者達は、車同士を互いに通信させる無線ネットワークの構築に取り組んでいる。このネットワークでは、道路安全情報、エンターテインメントコンテンツ、ナビゲーションツールといったものを相互にやり取りすることになる。
彼らは2004年、BitTorrentなどのアプリケーションからヒントを得て、こうしたアイディアを思いついたのだという。

"We had the idea from BitTorrent, and decided to extend BitTorrent to cars under the name of CarTorrent. One of our dreams had always been to apply the technology to civilian applications," says Gerla. "Imagine you're driving to a beach resort and want to find out what the best beaches are. You could stop at a gas station and download several video clips from an internet access point, but that's not very convenient."

Peer-to-peer network invites drivers to get connected - The Guardian

確かに、単順に車でWifi通信ができるだけでは、アクセスポイントを探さなければならないという不便さが生じる(まぁ、それでも便利といえば便利なんだけど。ちなみに、このCarTorrentはWifi帯域以外の帯域を利用するとのこと)。それに対して研究チームは、車同士の無線ネットワークプラットフォームで解決可能だと述べている(また、早ければ2012年には稼動開始できるという)。このネットワークは100メートルから300メートルの範囲内を走行中の車両同士をつなぎ、広範囲に広げていく。そのようなネットワーク内にあっては、たとえドライバーがアクセスポイントの範囲の外にいたとしても、インターネットから情報をダウンロードすることができ、また、そうしてダウンロードされた情報を他のドライバーと共有することができるという。
ただ、こうしたコンテンツ配信のみの用途だけではない、と研究チームのGarlaは言う。

"There will be immediate benefits in driving safety as well as in content distribution. Car-to-car communications can be used to avoid accidents by alerting the drivers of imminent danger. To prevent a crash we must act in fractions of a second. We are currently collaborating with vehicle manufacturers to help reduce accidents and fatalities on the road. For this latter application, vehicles are equipped with sensing devices, such as radars and video cameras."

事故等に関する安全情報を相互に提供することで、事故の回避に役立つ、という側面もある、と。近接した車両同士を結びつけるメリットとしては、こちらのほうが大きいかもしれない。
また、更なるメリットとしては、このネットワークは現在のセンサーネットワークにおけるメモリ、処理、ストレージ、エネルギーの制限を持たず、個々の車両に分散される。
このプロジェクトのスキームでは、車両は主に3つの情報−安全情報ナビゲーション(路面の凍結状況、交通渋滞、前方の事故情報)、コンテンツ配信(ローカルな情報、アトラクションに関する広告やビデオ)、都市監視(後に警察にフォレンジックな捜査を可能とするような情報の収集)をやり取りするという。
既に研究チームはTOYOTABMWからの協力を取り付けている(あくまでも「研究」の協力かと)。当面の課題としては、そのコストと、業界標準としての実装である。もし、これが標準的な機能とならなければ、安定したネットワークを構築することは難しくなってくる。
その他にも、自分がどこにいるのかを知られたくないドライバーにとってはプライバシーの侵害への懸念が強まるだろうし、悪意を持ったドライバーが嘘の交通渋滞情報を流す、ということもあるかもしれない。ネットワークを構築する上で、そうした問題をクリアしていかなければならないだろう。
また、業界標準だけの問題ではなく、既存の車両で利用してもらうことも必要となるだろう。現在のところ、このネットワークに参加するために必要な機材は500ドル程度になると見込まれている。ハイテクを好むドライバーはすぐにでも受け入れてくれるだろうが、その一方で進んでテクノロジーを受け入れるのを嫌う人は多い。
確かに、ほとんどの車両が利用していない状況で、この機能を実装したところで何の意味も無い(たまにすれ違う同士を見つけるという喜びもあろうが)。やはり、業界標準として生産される車の大半に実装され、そのような車両が増えることで、より多くの人がその機能を便利だと思うようになる、そうした状況になる必要がある。おそらくは、そうなるまでは大半のドライバーが進んで受け入れるということは無いと思う。非常に便利なんだけどね。