米国ファイル共有裁判:P2Pネットワークでの証拠収集には私立探偵ライセンスが必要?

RIAAに代わり、違法ファイル共有ユーザを追跡し、証拠を集める企業は多い。例えばMediaDefenderやMedia Sentryといった企業。しかし、そういった企業が、レコードレーベルなどから依頼され、証拠を収集する活動は、果たして法的に是認されているものなのだろうか?
Rolando Amuraoは、LimeWireを利用して528曲の楽曲を違法に共有を行っていたとして、複数のレコード会社から訴えられている。その裁判の中で、Amuraoの弁護士Richard Altmanは、Media Sentryによって収集された情報は、違法に収集されたものであるとして、それらを除外するよう求める申し立てを行っている。その根拠としては、Media Sentryはクライアントの依頼によって調査を行っているにもかかわらず、私立探偵のライセンスを有していないからなのだという*1

"Plaintiffs proceed in these copyright infringement cases based upon evidence of file-sharing or distribution derived from investigations conducted by Safenet, Inc., a private company operating under the name of Media Sentry," Altman's motion stated.

PC World - Fight Erupts Over RIAA Efforts to Nab Music Pirates

こうしたMediaSentryをはじめとするアンチパイラシー企業は、P2Pネットワーク上で、そのユーザ(のIPアドレス)とその活動を監視する。その後ISPに対し、裁判所の召喚状によって、当該のIPアドレスが当該の活動時にどの人物に割り当てられていたのかを明らかにするよう求める。そして、そのIPアドレスが割り当てられていた回線の契約者が著作権を侵害していると仮定され、「推定被告人」として訴えられているのだと、Altmanは言う。
MediaSentryが、レコードレーベルに代わってこうした活動を行うのであれば、同社はニューヨーク州法で義務付けられている私立探偵ライセンスを必要とする、ライセンス無しに得られた証拠やそれに基づく証言は、ニューヨーク州法の違反であり、却下されなければならないとAltmanは主張する。
彼はニューヨーク州法においては、個人のアイデンティティ、習慣、行動を調査し、裁判に用いられる証拠を収集することは私立探偵としての活動にあたると、Compterworldとのインタビューで述べている。また、この申し立てに対する判断が下される前に、原告側はこの訴訟を取り下げ、Amuraoの娘を追及する可能性があると述べている。
Recording Industry vs The PeopleのRay Beckermanによると、こうした申し立ては初めてではないという。現在係争中のものもあるが、このような申し立ての末、裁判が取り下げられるケースや、その後に和解にいたったケースもあるという。

ハイテク犯罪捜査入門 捜査実務編―図解・実例からのアプローチ

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*1:日本においてはこうしたライセンスは無いが、米国では州によってこうしたライセンスが必要となる。