音楽は世界を変えるんじゃない

「音楽で世界を変えることができた時代は過ぎ去った。今、この時代にそういう考えを持つのはあまりにも世間知らずだと思う。」自作のドキュメンタリー映画CSNY Deja Vu』がベルリン国際映画祭で特別上映されるにあたり、記者会見でニール・ヤングそう語っている

暗いニュースリンク: ニール・ヤングの悲痛なメッセージ:「音楽で世界は変えられない」

うーんと、果たして彼のいう時代に、音楽は世界を変えることができたのだろうか。
彼の指しているかつての時代ってのは、おそらくウッドストックとかその辺の時期のことなんだと思う。まさにこのCSNYとしてウッドストックに参加しているし、そのすぐあとに、CSNYでYoungは『Ohio』っていうものすごく政治色の強い曲を衝動的に作っている(名曲なので機会があれば是非聞いてみて!)。この曲はすぐ様リリースされるのだけれども、当時の(ヒッピーライクな)若者達の支持を集める一方で、ラジオ局からは放送禁止ソングにされたりもした。
そう、理想主義、刹那主義的なヒッピーと現実主義の大人たちって対立だったのよね。確かにその当時、音楽はヒッピー達を魅了したけれど、その一方で大人たちを変えることはできやしなかった。

ライブの最中、『Let's Impeach the President(大統領を弾劾しよう)』が演奏されると、喝采とブーイングの嵐に会場が分裂し、憮然として途中退出する聴衆の姿などを見ることができる。

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ヒッピー達は大人になったんだよ*1。理想を持っていても飯が食える時期をとっくに通り越して、理想だけをもって生きていくことのできない現実に直面して、それぞれに学び、適応してきた。その結果が、「喝采とブーイング」なんじゃないのかな。
それでいいんじゃないのかな。音楽は世界を変えることができないにしても、人を変えることはできる。だけど、変わった結果までには干渉できない、そういうことなんじゃないかと思う。ヒッピーやその文化に触れていた人たちだって、今となっては保守的になっている人もいるだろう。でも、そうした人を一時的にであれ、あの時代の若者の考えに触れたことは、少なからず今の彼らを変えたんだと思うよ。

ニール・ヤングは、しかしそれでもドキュメンタリーを制作する意義はあったと語っている。「あれをやらなかったら、昔のヒッピー達が思ったことを喋ってるだけになるところだった。そんなの誰が気にする?」「論争を巻き起こすのが目標だった。このフィルムでそれがある程度実現できると願っている。」

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まぁ、失望しているというよりは、彼なりの挑発って感じなんだろうけどね。

*1:もともとヒッピーじゃなかった人たちもいただろうけど