ニワンゴ、JASRACと提携:違法アップロードされてる楽曲にも著作権料が配分されるの?

4月1日、という微妙な日ではあるが、ニワンゴJASRACとの楽曲使用に関する包括契約を結んだ。これによってニコニコ動画利用者は、JASRACの管理する楽曲を合法的に演奏することができ、そうした利用から著作権者に利益が渡ることになる。

演奏してみたが合法的に

昨年から、日本音楽著作権協会JASRAC)さん管理楽曲ニコニコ動画SMILEVIDEOでの使用について、一生懸命に話し合いを重ねてきましたが、ついに契約を締結する事ができました。
これで、JASRACが管理する楽曲について、ユーザーの皆さまが自分で演奏したり、自分で演奏しながら歌ったりした動画作品を、SMILEVIDEOへアップロードする事が可能になります。

ニコニコニュース‐JASRACとの契約締結のご報告

良し悪しは別にしても、既に現時点でJASRAC管理楽曲を演奏するビデオが数多くアップロードされており、この提携によってますますそれが加速する、かどうかはちょっとわからないが、少なくとも著作権者に、ひいてはクリエイターに利益がもたらされることになるだろう。
同様にJASRACとの契約を結んでいるeyeVioは、ニコ動に先駆けてJASRAC管理楽曲の利用を可能とする予定であったが、eyeVio側のトラブルによってそれが遅延している間の出来事であった。あー、何かもったいない。
もちろん、JASRACの扱っているのは作詞、作曲に関わる「著作権」であり、著作隣接権者からの許諾が必要な音源を利用することはできない。

 ユーザーは、JASRAC管理楽曲を自分で演奏したり歌った動画を、合法的に投稿できる。CD音源やプロモーションビデオなどをそのままアップロードする行為は、従来通り認められない(別途、著作隣接権者の許諾が必要)。

ニコニコ動画、JASRAC曲の演奏動画が投稿可能に - ITmedia News

ニッチなジャンルのクリエイターにも収益が

また、もう1つ気になるのは、ニワンゴから支払われた著作権料(ニコニコ動画を通じて発生した売上全体の1.875%)がどのようにして分配されるのか、ということ。支払いに関しては利用の回数等を問わず、一律支払われることになるのだが、少なくとも、ニコ動画側が統計情報を提供すれば、その分配はより正確なものとなる。

 詳細な方法は未定だが、ニワンゴJASRACに対し、二次利用された楽曲とその閲覧数などの統計情報も報告する。JASRACはこの統計情報を基に、音楽著作権の使用料を各アーティストなどに配分する

JASRACとニコニコ動画がついに契約、楽曲の二次利用が可能に:ITpro

とされており、世間一般ではそれほど利用されていない楽曲でも、ニコ動では頻繁に利用されているものも多いということを考えると、ニッチなアーティストに対する収益ストリームができた、というのはなかなか面白い。もちろん、JASRACから著作権者に渡るという点で、なので、それ以降の契約に絡んでの問題から、実際のクリエイターが満足できるようになるかどうか、というのは別のお話になるのかもしれない。また、これによって莫大な額の収入が舞い込んでくると言うほどでもないだろうが。ただ、それでもこれまでに比べると格段によい状況になったと言える。

ふと疑問に思うこと

著作隣接権者に許諾を得ないもの、たとえばCD音源だとかPVなんかは認めら得ない、というのは理解しているけれど、ただ、実際にそれらを利用した(もしくはそれそのままの)ものが、依然としてニコニコ動画内には数多くホストされている。権利侵害である以上、それらは削除されるべきなんだろうが、ただ、そうしたビデオであっても著作権が利用されていることには変わりないだろう。
では、この提携によってそうした著作権はクリアできたけど、隣接権的に問題があるよ、というコンテンツに対しても、著作権料の分配が行われるのだろうか。もちろん、権利侵害コンテンツである以上、それは公開されるべきものではないのだけれど、現実問題としてそうしたコンテンツの扱いってどうなるのかなぁというところが気になる。
個人的には権利侵害にはそれ相応の対処が必要だとは思うけれども、それとは別に使用料の分配があってもよいとは思うんだけど。

なんにしても

無断で使われている状況から、少しでも利益が配分される、と言う状況が進んでいるはよいことだと思える。
もちろん、依然として問題はクリアされていない部分が多いけれども、こうしたビデオ共有サイトと著作権管理団体の提携が進むというのはユーザ側からもコンテンツ産業側からも望ましい方向といえる。先日は、YouTubeを運営するGoogleとジャパンライツクリアランス(JAC)との提携があったり、JASRACはこのニコ動以外にもeyeVioYahoo!Japanとも契約を結んでいる。また、YouTubeとも以前交渉を継続しているようだ。
著作権の場合、いかにユーザが演奏等で利用しても、既存の主だったビジネスとバッティングすることも考えにくく、そうした点では無断で使わせるのではなく、そこからキチンを支払いをしてもらうという方向に持っていけていることは、将来的にも明るいことだろう。
ただ、こうした権利処理が進んでいる一方で、音楽では隣接権が絡んでいるもの、ビデオでは著作権者、著作隣接権者からの許諾を得ていないものが、依然として多数アップロードされている。そうした状況にあっても、それらのコンテンツは、包括的な利用許諾契約を結べるというものでもなく、以前として問題は山積している状況といえるだろう。