otsuneさんにお返事に書いた
「まねきTVは違法です」と放送専門誌で書いてたTBSの人みたいに根拠なく「白々しい」「健全だとは思えない」と書いているなぁ。ちゃんと論理的な根拠を書けば良いのに。
はてなブックマーク - 「百度は著作権侵害コンテンツをホストしてはいない、インデックスしてるだけ、YouTubeやニコ動とは違う」と言い切るのもどうかと - P2Pとかその辺のお話@はてな
さすがに気の抜けたエントリだっただけに厳しい突込みが入りました><otsuneさん宛ではあるけど、説明が足りない部分が多かったので補足しておきます。
で、根拠を。まずは「白々しい」と思った理由から。一番には、単純に感情としてなんで大した論理性はないけれど、その感情に至る過程をば。
Baidu.comのMP3サーチ、GoogleのYouTube、そしてニコ動、これらのサービスは白か黒かグレーか、と問われれば、少なくとも今はどれも「黒ではない」。
で、その上で細かい法解釈は別としても、この中で一番黒に近いだろう存在は、Baidu.comだと思っている。
確かにYouTubeもいくつか訴訟は起こされているし、おっきいところではViacomの訴訟があるけれど、それでもYouTubeはセーフハーバー条項を掲げてウチはきちんと法律を守っているサービスですよ、と言える。ニコ動はと言えば、日本にはセーフハーバーもないし、YouTubeに比べるとあやふやなところもあり、一部の人たちからは問題視もされているが、それでも今のところは(訴えられずに)何とかやっていけてるし、JASRACとも提携したり、一方的ではあるが著作権侵害コンテンツへの対処を宣言しているように、徐々にではあるけれども、軌道に乗ろうとしている。
じゃあ、Baidu.comはと言えば、昨年、著作権裁判で勝利を収めたものの、それと同時期に同様のサービスを提供しているYahoo! Chinaが著作権裁判で敗訴している。その両者の判決の違いは、中国著作権法の改正前であるか、後であるかの違いが大きいとされている。Baidu.comは改正前に提訴されており、Yahoo! Chinaは改正後。そして、一度はBaidu.comに敗れたチームIFPIが、Baidu.comに対して再び訴訟を起こし、審理が開始されたと言うのが現状*1。
そういった事情を踏まえて、少なくとも私の中ではBaidu.comが一番黒に近づいているグレーだろうなぁという認識がある。
そんなブラックへのゴールに最も近いと思える*2Baidu.comが、そのゴールを切るかどうかもわかっていないYouTubeやニコ動をつかまえて、ウチはインデックスしてるだけ、アチラはホストしてるじゃない?、と相対的に自分たちをまだいいほう、相手方をもっとひどいほう、と印象付けようとしているのはどうなの?と。
この問題ってインデックスよりホストのほうがひどいっていうような程度問題ではないだろう。インデックスしていようと、ホストしていようとその国の法律を遵守していればなんら問題ないわけで、二つを並べて相対的にどちらがひどいといえるようなことでもないと思っている。もちろん、Baidu.comがYahoo! Chinaと異なり、中国の法律を守っているんだ、だからウチのサービスが違法だとされることはない、と叫ぶのは勝手だと思うし、サービスプロバイダとしては正しいスタンスだと思える。ただ、そこに他社サービスを引き合いに出して、彼らのほうがもっとひどい、と思わせるような発言をすることにゲンナリする。
ここまでは建前のお話で、次に本音の部分。「権利は侵害されないように」と言いながらも、結局のところ彼らはどんなアーティストのどんな楽曲がダウンロードされているかは良く知っているだろう。そりゃもちろん、機械的にやってることもわかっている。ただ、人気検索ワードランキングまで載せて何1つ知りませんと言うわけでもないだろうに。
こうした二段構えの主張に「白々しさ」を覚えるというところだろうか。もしくは「ヘイ、ブラザー。抜け駆けはいただけないぜ?」という感じか。自分とこの正当性だけを言わんとしてるなら、「気持ちいいこといってくれるジャナーイ」とロッキーくんばりのリアクションでもできようものを。
続いて、「健全だとは思えない」について。
実のところ、どういった意図でこの部分を書いたのかは正確には覚えていない。ただ、何を考えて書いたかはだいたい想像がつく。
この前段部分、今後現実にそうした建前だけで続けていけるか、という問題に関しては、一応法律は守ってるんですけどね、というだけではうまくやっていけないと考えている。その辺は、YouTubeをみても、Notice & Take Downプログラムの導入、その簡便化、そしてフィルタリングの導入、ニコ動を見ても削除プログラムの導入、一方的な著作権守りますよ宣言、そしてStage6に関わるUniversalとの一連の裁判(Stage6側が先制告訴を行い、Universal側の著作権クレームは脅迫的だ、DMCAさえ遵守していればStage6はなんら責任を負うものではないという確認を求めたものの、棄却され、さらにUniversalから訴えられている)という流れを見ていて。
ただ、グレーの状態が続くことは、いろいろと都合がよいことも理解している。どちらの陣営にしても交渉の余地が残っていることは何かと便利なものだろう。ガッチガチではなく、一定の「遊び」が存在することで、必要以上の摩擦を避けることができるかもしれない。
ただ、一部の企業や産業は、そうした遊びに対して限度を越えていると判断するところもあるのだろう。その表れとしてサービスプロバイダにプレッシャーを懸けてきているのだと思っている(それでも結果としてもたらされたのは海賊行為の拡散なのかなぁと。結局、Veoh、Youku、Daum、Pandoraなんかに拡散してるしね)。そして、サービスプロバイダ側はYouTubeのように「状況に応じた対処」を行うことでそのプレッシャーをクリアするし、一方でそれに失敗すればStage6のような状態になる。
で、なぜそんな状況が健全じゃないと思えるかと言うと、依然として黒なのか白なのかが曖昧だよなぁと。特に日本の場合に感じるんだけど(海外のことをそこまで良く知らないからでもあるけど)、どこからどこまでがセーフで、どこからがアウトなのかがよくわからない。結果としてニコ動はその存在を許されているけれど、さて同様のサービスが登場してきた際に、同じようにその存在が認められるのか、という疑問がある。
実感としてはグレーゾーン、いわば遊びの部分が大きく広がっていて、黒なのか、黒に近いグレーなのか、どちらとも言えないグレーなのか、白に近いけどグレーなのか、それとも白なのか、がわかりにくい。サービスプロバイダはどこまで守られていて、どこから責任を取らされるのか、そこが曖昧なことが私にとっては健全な状態だとは思いがたい、ということでしょうか。*3
「いいわけじみた建前」というのは結局は現状の都合のよい解釈でしかなく、そこに紛争の火種は常に残されていると感じている。どのような状態になっても、一部グレーゾーンが残されることは当然であると思うし、それくらいの遊びがあるほうが望ましいとも思う。ただ、過渡期にある今、その遊びの部分をめぐっての争いが耐えないことを考えると、それらの点について更なる議論と、明確化が必要になるのでは、と考えている。だから、トラッカーを運営し、torrentをインデックスするThe Pirate Bayに対する訴訟が起こされたことは、私にとっては1つの答えを出すための重要なプロセスだと考えるし、彼らが勝利する、敗北するにしても1つのことはクリアになる、という点で歓迎したいと思っている。
余談だけど、Baidu.comのMP3サーチが危ういなと思えるのは、「ダウンロード違法化」の問題を考えたとき。もちろん、Baidu.jpではMP3サーチは提供されていないけれどね。大手の検索エンジンが、そうした犯罪行為に直結しうるダイレクトリンクをバンバン掲載している状態で、「ダウンロード違法化」なんてことになれば、怖いなぁと思うところもある。サービスプロバイダを取り巻く状況は、ともすれば、ユーザを巻き込んでの問題にも発展しうるかなと。まぁ、これは中国の話と、日本の話がごっちゃになってるところもあるけど、漠然と思ってるって感じで。アンチパイラシーサイドがファイル共有企業、ユーザ、ISPときて、次はリンク行為をターゲットにするんじゃ?という思いもありますし。
この辺は、「ダウンロード違法化」が確定すれば、それを踏み台根拠にしてこういったリンクに対する動きが見られるかなぁと。