米国ネットラジオの進展を阻む既存ラジオ局のロビー活動

米国ネットラジオPandoraのブログにあわただしい書き込みがあったのは、9月26日のこと。

Pandora、SoundExchabge、RIAAによる1年間の交渉の末に、Pandoraやインターネットラジオを救う著作権使用料に関する合意に達することができて、ようやく安堵しているところです。でも、それが達せられようかとしているまさに今、既存の大手ラジオ放送局は、私たちの進歩を阻まんとする、ひそかなロビーキャンペーンを開始しています。
昨日、連邦議会議員のJay Insleeと複数の支持者たちによって、私たちが必要とする時間の延長をもたらす法案が提出されました。しかし、Clear Channelなどのラジオ放送局を代表するNational Association of Broadcasters (NAB)は、この法案を絶対に通すなと、議員たちに強力な圧力をかけ始めました。私たちは、この1日の間、何とかしてこの圧力に抗さねばなりません。
これは、既存のラジオ放送の独占に対して、オルタナティブを提供するウェブキャスティング企業を、押しつぶそうとする大手ラジオ企業の露骨な試みでしょう。
どうか、今すぐにあなた方の議員に電話をかけ、H.R. 7084, the Webcaster Settlement Act of 2008を支持するよう依頼してください。NABの圧力に屈しないためにも。

昨年は、米国中小ネットラジオが終わりを迎えるのではないか、とまで騒がれたライセンス料に関連した議論も、1年の時間を経て、RIAA、SoundExChange、そしてウェブキャスターらが何とか妥協できる見通しを立てた、というところだったのだが、ここへ来て既存のラジオ局からの横やりが入った、という状況だった、と。
そこでPandoraはこの議員に電話をかけてくれ、あなた方の地域の議員に支持を求めてくれ、という草の根運動を依頼した。その辺のお話がTech Mom from Silicon Valleyさんのエントリにて書かれていて、いろいろと面白かったのでぜひとも読んでいただきたいのだけれど、一応、この顛末を言っておくと、この記事にもあるように、この「The Webcaster Settlement Act」は無事に下院を通過した。Pandoraからも27日付のエントリで

We're thrilled to let everyone know that the House bill passed! Thanks to your incredible support we were able to overcome the NAB's efforts to derail us. Phone calls rained into the congressional offices over the past 36 hours. Just amazing.

Pandora

と、お礼が述べられている。
まぁ、何が興味深いって、ロイヤルティの問題をようやくクリアしたかと思ったら、次は既存の放送局が前に立ちふさがってきたというところだろうか。1つのことをなすにもさまざまな「抵抗勢力*1」と闘わなければならない、という現状を端的に表しているようにも思える。
26日付けのエントリの最後にこう記されている。

まさに今が分岐点なのです。この大きな草の根による抵抗だけが、トップ40ラジオに支配されない次の50年をもたらしてくれるのです。今がまさに明確な態度を打ち出し、ラジオ放送メディアの完全な支配を打破するときなのです。

もちろん、PandoraはPandoraで既存ラジオ局とは別の利害があってこそ、こういった発言をしたということも忘れてはならないのだけれど、ただ、既存ラジオ局は既存ラジオ局なりの道理で、少なくとも我々が望んでいるオンラインラジオを排除しようと試みた。そして、ユーザはユーザなりの道理で、その是非を判断して行動した。もちろん、その行動がどれだけ結果に反映されたのかはわからない。でも、こうした行動はないよりはあった方が良いだろう。日本でももしかしたら、こうした潜在的な可能性があるのかもしれない。だからそのためにも、

「誰かを叩いて引きずりおろす」というネガティブな方向だけでなく、「何かを支持して新しいものを世に送り出す」というポジティブな方向でも、力を発揮するようになってほしいと思う。

パンドラが難関を突破!そして「アメリカ版電凸」の感想 - Tech Mom from Silicon Valley

と思わずにはいられない。

*1:懐かしい言葉だけど