ネット規制を強める韓国:ストレージサービスプロバイダに強制捜査

ソウル中央地検刑事6部は、インターネットのポータルサイト「ネイバー」を運営するNHNと、「ダウム」を運営するダウム・コミュニケーションに対し家宅捜索を行ったのに続き、映画やコンピューターソフトの違法ダウンロードをほう助した疑いで、ソウル市江南区のO社などオンライン・ストレージ・サービス業者6社に対し、8日に家宅捜索を行った、と発表した。

違法ダウンロード:ストレージ・サービス業者も捜索 | Chosun Online | 朝鮮日報

なかなか興味深い展開だ。かつて韓国ではソリバダやその他のP2Pソフトウェアが流行し、違法ファイル共有の主な舞台となっていたが、その後、これらP2Pソフトウェア、サービスを提供していた企業に対する告訴、圧力が加えられたことで、多くのユーザがオンラインストレージを利用した海賊行為に移行した(韓国では「ウェブハード」と呼ばれているらしい)。
もちろん、それまで同様にP2Pファイル共有に対する圧力がかけられる一方で、新たに問題となったウェブハード問題に対しても圧力が強められている。
現在、韓国で議論されている著作権法改正案では、

違法コピーファイルの掲載により罰金を3回科されたサイトに対しては、審議を経てサイトを強制的に閉鎖できるようにするという。サイト内の掲示物の70%以上が違法コピーファイルである場合は、直ちにサイトを閉鎖できる。
審議と閉鎖命令は著作権委員会と文化体育観光部長官が下す。日本ではプロバイダ責任制限法で、サイトの運営者には一定の免責が認められている。しかし韓国は今回、違法を野放しにすればサイト閉鎖、つまり廃業に追い込むことも辞さない処罰へと踏み込んだ形だ。

「3アウトでサイト封鎖」韓国に吹き荒れるネット規制旋風 インターネット-IT先進国・韓国の素顔:IT-PLUS

と非常に強硬な姿勢を取っており、サービスプロバイダ側の責任の範囲を、現在生じている問題を解決するというところをラインにして定めようという動きのようにも見える。
また、先月18日には、「著作権特別司法警察」なる新組織が発足されている。

著作権特別司法警察」はゲームの違法コピーなどに対応する組織。インターネットで流通する違法コピーに対して追跡を強化するほか、コピー品を追うためのシステムも構築するとのこと。 文化部所属でありながら警察権を持っており幅広い捜査が可能な「著作権特別司法警察」は、これまでの文化部が捜査権を持たず差し押さえしかできなかったという欠点を克服したとも言える存在。

隣国で違法コピーと戦う新組織が誕生(インサイド) - Yahoo!ニュース

おそらくは、発足にあたってゲームの問題への対処を掲げたが故にこうした記述になっているのだろうが、「著作権」と名がつく以上は、ゲーム以外のコンテンツにおいても、オペレーションを行っていくのではないかと思われる。
こうした中、オンラインストレージを運営する企業に対して家宅捜索が行われている、という状況のようだ。責任の範囲に関しては、どのような措置を講じていればよい、という点ではなく、実質どのような状況にあるのか、という点で判断するとした場合、多くのサービスが規制のラインに引っ掛かりかねない。
上記の趙 章恩さんの「IT先進国・韓国の素顔」シリーズの記事を読むと、韓国がインターネットへの規制に対してかなり強硬な姿勢をとっていることがよくわかる。上記に引用した点以外でも、裁判を経ずにサイトの閉鎖が決定されるプロセス、ポータルサイトに対する言論制限、スリーストライクポリシーの導入、未成年者のネットゲーム時間制限、先日話題になった、「サイバー侮辱罪」などかなりアグレッシブな内容の改正案が考えられているようだ。

余談

韓国のネットと著作権周りのお話は、非常に興味深いところが多いので、現在いろいろと調べているところです。いずれまとめた記事をかければと思っとります。