大雑把な属性に原因を見いだしても碌な説明にはならないよね

なんで前回のエントリみたいなことを書いたかっていうと、私は安易な属性への原因帰属があまり好きではないからなんだろうなぁと。たとえば、若者だから、高校生だから、大学生だから、年寄だから、貧乏だから、金持ちだから、無職だから、男だから、女だから、ゆとりだから*1、40代だから、団塊だから、ネットだから、マスゴミだから、2chだから、XXXなんだ、とかね。

ある種の属性を持ち出して、何かを説明しようとするのは、その属性がターゲットとなる現象の規定因となっている場合や、その属性のほとんど全てがそうだという場合には理解できるものであるが、そうでもないのに安直に属性*2を持ち出して、わかった気になって説明し、一般化するのは、物事の解釈を歪める行為であり、ともすればレッテルを貼ることにもなる。

たとえば、「調査の結果、○歳代では3割が違法ファイル共有を行なっている」「○歳代は他の世代に比べてファイル共有ソフトの利用率が高い」という調査結果が発表されたとする(あくまでもたとえです)。実際、この手の調査で違法ファイル共有の利用率が3割ってのはかなり高い数字なんだけど、報道や伝聞を経ることで、「○歳代は割れ厨ばっか」というレッテルを貼られることになる。

でも、本当は7割の人たちはかかわっていない(と推測される)わけで、たとえ利用率3割という非常に高いレートであっても、その年齢層全体を説明するものとはなり得ない。にもかかわらず、「○歳代で顕著」と聞いてしまうと、あたかもその年齢層全体がそうであるかのように思われてしまう。

もちろん、こうしたことは、単に伝聞の結果というよりは、「近頃の若い者は…」「これだから年寄りは…」的な考えの根底にある、他世代、他属性への理解(とそうする意志)の欠如によるところが大きいのかなと思える。だから、ネガ・ポジ両面でこうあって欲しい、こうであるはずだと望む姿を投影しちゃうのかなと思える。

年代があたかも原因であるかのように語られることもあるが、たとえその年代で顕著であったとしても、実際には年代を背景にした別の要因が根底にあるだけで、特定の年代においてその傾向が顕著になるだけだったりもする。そしてその要因は特定の年代だけの問題ではないことの方が多い。もちろん、年代に限らずさまざまな(特に広範囲に及ぶ)属性についても言えるだろう。本当に原因を探りたいのであれば、そこまで突き詰めて考えないと、本質は見えてこないよなぁと思う。

だからこそ、安易に貼り付けられたレッテルやイメージを揺るがすようなことを提示することも必要なんだろうなぁと思っている。このITmediaの記事なんかもそういった意味では非常に良い記事だと思う。

「YouTube」はラジオ代わり、CDは買わない?――イマドキ中高生と音楽 - ITmedia News

まぁ、サンプルが少ない、っていっても、聞き取り調査で(一般化できるほどに)サンプル増やすのはとんでもなく大変だし、かといって調査用紙を配ったり、ネット調査なんかにすればそれはそれで制限は出てくるし*3

結局のところ、サンプル数の少ない聞き取り記事という制約をきちんと理解できるかどうかにかかっているってことかなと思う。「今回、話を聞いたのはたった4人。これだけの結果で「中高生はCDを買っている」とか「CDをマスターとは呼ばない」と言い切ることはもちろん、できない。」と断っているし、これだけである事象を一般化しようとするなら、そりゃ読み手のリテラシーの問題だろう。

*1:ゆとり脳という言葉があるが、私はあれをゆとりレッテルを安易に貼り付ける人にこそ与えられるべきものだと思っている

*2:特に広範な属性

*3:少数のサンプルでより深く聞き出すというアプローチだって現実として有効なわけで、『ターゲットを代表していれば』サンプル数は少なくても価値あるデータを得られる。ITmediaのインタビューがそうだってわけじゃないけど、私にとっては価値ある話だったかなぁ