「CDを売るために」アルバムの無料ダウンロード大歓迎する音楽レーベル


Beep! Beep! Back up the Truckは、2008年5月に設立されたインディペンデントレーベル。最近のネットレーベルよろしく、このレーベルも自らの所属アーティストの音源を積極的に無料配信し、Creative Commonsライセンス下で提供することで、リスナーによる自由な利用を許している(というよりも推奨している)。

Jamendo Blogによれば、このBeep! Beep! Back up the Truckは、このレーベルのコアとなった2つのバンドが、自らの音楽をプロモーションしたい、配信したいと思いながらも、既存のレーベルのあまりに制限的なルールの下ではそれもままならない、ならば自らがレーベルを設立してやろう、と思い立ったことでレーベル設立に至ったのだという。

ただ、彼らが立ち上げたのはネットレーベルではなかった。彼らはCDやレコードに対し、強いこだわりを持ち、それを販売することをレーベルのメインフォーカスであるとしている。Beep! Beep!レーベルの共同設立者Boudewijn Rosenmullerは「私たちのアルバムを目で見て、手にとって、匂いまで感じてもらいたい」からだと説明している。

そこはレコード音楽にどっぷりと浸かってきた身だからこそ、そう願わずにはいられないというところなのだろう。

彼らのスタンスを明確に示すものとして、同レーベルの公式サイトには以下のようなFAQが掲載されている。

Q. Beep! Beep!って何?

Beep! Beep! Back up the Truckはオランダのユトレヒトをベースにした、インディペンデントアーティストのプロモーション、ディストリビューションのための新しいレーベルです。私たちは、全てのディスコグラフィCreative Commonsライセンスにて自由に配信するオランダでは初のレコードレーベルとなります。このライセンスを全てのリリース作品に適用することで、オンライン上での自由なストリーミング、ダウンロードが可能になります。そして、私たちはそれを望んでいます。しかし、私たちの最大の目的は、美しいアートワークに包まれたハードコピー*1としてのアルバムをリリースし、プロモーションすることにあります。

また、Beep! Beep! Back up the Truckは、毎月“Vette Analoge Shit!”というショーケースライブを主催しており、国内外から必見のニューカマーたちが演奏を行っています。

Beep! Beep! Back up the Truckは以下のアーティストと契約を行っています。
We vs. Death, embrace fire, The Walt, Kismet, Paper Tiger, schotel van de dag and Het Gloren.

Contact information and f.a.q. | Beep! Beep! Back up the Truck

Q. 全ての音楽を無料で提供してるのに、どうやって利益を上げるつもりなの?

はじめにお断りしておきたいのは、私たちは利益を上げるためにここにいるわけではない、ということです。私たちが上げた全ての利益は、この小さな組織を維持するために、または私たちの所属アーティストに直接支払われることになります。それでもこの質問にお答えするのだとすれば、以下のようになります。

インターネット上の自由な音楽はより多くのリスナーに聞かれる、より多くのリスナーに聞かれることはより多くのファンを生み出す、より多くのファンを生み出すことはより多くのライブに繋がる、より多くのライブはより多くのグッズセールスに繋がる、より多くのグッズセールスはバンドにお金をもたらす、バンドにお金がもたらされればもっと素晴らしい自由なアルバムを作れる。

インターネットは私たちの友であり、自由な音楽のダウンロードはサイコーだ!

Contact information and f.a.q. | Beep! Beep! Back up the Truck

こうした発言を裏付けるように、彼らは自らのサイトでのCDの販売と同時に、楽曲の無料ダウンロードリンクも用意している。もちろん、Creative Commonsライセンスつきで。さらに、彼らは自らのサイトだけではなく、Jamendoや大手BitTorrentサイトMininovaのプレミアムコンテンツセクションにも、同じライセンスでアルバムを提供している。Mininovaに置いてあるTorrentのディスクリプションにも、彼らの思想が表れている。

それでも、私たちのメイン・フォーカスはハードコピーのアルバムのリリース、プロモーションにあります。私たちは無料でデジタル配信していますので、美しいアートワーク作りに力を注いでいます。あなたが、友だちにそれを自慢できるように。

つまり、時代は変わっているということです。私たちが大好きなアーティストを支えるということを忘れない限りは、これは素晴らしいことになのです。

Paper Tiger - Everyone Here (2007) : Music > Indie - Mininova

このアルバムは、私も大好きになったPaper Tigerのアルバムのページなのだが、さらにこのページでは、Mininovaでダウンロード/シードしてくれた人への感謝の気持ちとして、ディスカウント価格でのアルバムCDの提供を行っている。オフィシャルサイトでは10ユーロなのだが、Mininova経由で購入すると8ユーロに割引してくれるのだという。

私たちの全カタログは、ここMininovaで自由にダウンロードすることができます。なぜって?聞いたこともない曲にお金を払わきゃいけないなんてフェアじゃないですからね。

私たちは、torrentが私たちの音楽を届けるための素晴らしい方法であると考えています。それが、Beep! Beep!とMininovaが手を組んだ理由です。あなたが新たな音楽を見つけるために労力を割いてくれることを嬉しく思います。そこで、私たちの音楽をダウンロードし、シードしてくれたことへの感謝の気持ちとして、私たちのハードコピーのアルバムをディスカウントいたします。

もちろん、音楽を自由に聞かせることは、その音楽に更にコミットするきっかけを提供するし、音楽を自由に共有させることは、リスナーにとって自分の大好きな音楽を誰かに伝える、広めるために重要なこと。しかし、それは裏を返せばアーティスト、レーベルの側にとっても同じこと。特にBeep!Beep!やそこに所属するアーティストのように、認知度の極めて低い人々にとっては、自らの存在を可能な限り広めること、広めてもらうことにこそ、価値があるのだろう。

CDへのこだわりを持ち、そして、リスナーに対して正面から向き合う、そうした姿勢は音楽ファンとしては非常に嬉しく思う。

余談

こんな風にBeep!Beep!を取り上げるのにはワケがあって、単純に私がこのレーベルのファンになった、というのが一番強いといったところだろうか。もちろん、その姿勢もだし、彼らのリリースしている音楽もそう。

その中でも特にPaper Tigerというアーティストに惚れ込んでしまい、これはCDを購入せねば、ということでオフィシャルサイトからオーダーした*2。オランダからの送付ということもあり、到着までには時間かかったが、こうした購入の場合、待ち遠しさはイライラさせるものではなく、心躍る経験をもたらしてくれるものだ、とワクワクしながら待つ。

10日後、待ちに待ったCDが届く。CDそのものにも満足したし、アートワークやおまけとしてつけてくれたレーベルコンピなんかにも満足したんだけど…

こうした小規模なレーベルにオーダーすると、こうした自分たちの住所まで手書きなところも少なくなくて、なんか嬉しくなったりする。

なお、Paper TigerのアルバムはJamendoからもダウンロードできるので、是非とも聴いてみてね。

*1:要はCDやレコード

*2:10ユーロ+送料4ユーロ