国内P2Pファイル共有関連の逮捕の歴史
最近は、P2Pファイル共有に関連して逮捕者が出ることは、それほど珍しいことでもなくなったが、とりあえずここいらでこれまでの個人の逮捕等事例について時系列に沿ってまとめてみようと思う。
P2Pファイル共有に関連しての逮捕・検挙といえば、著作権侵害ばかりが目立ちがちだが、実際にはわいせつ、児ポなどでも逮捕者を出しているおり、著作権以外での検挙事例についても挙げていく。ただ、P2Pファイル共有ネットワークから入手したソフトウェアイメージ等を利用して海賊版販売を行なったケースやファイルローグのような法人を相手取ったケースなどは除外した。
2001年11月
「もうだめぽ」などもよく知られている、ファイル共有ソフトを利用した著作権侵害で世界初の逮捕。アドビの「Photoshop」等ソフトウェアの著作権を侵害した容疑で専門学校生、大学生の男性2名が逮捕された。また、ACCSによると、この2名の男性は結果的に、他ユーザを圧倒するほどのヘビーユーザであったためにターゲットとされた、という。
うち専門学校生は、後に音楽ファイルの公開も判明し、JASRAC、レコード会社からも告発されたとのこと。その後、京都簡裁で罰金40万円の略式命令。なお、大学生は家裁に送致されたようだ。
2002年3月
■ WinMXユーザ、わいせつ文書陳列の疑いで逮捕
WinMXを利用した猥褻文書陳列容疑での摘発はこれが全国初となる。
2002年7月
WinMXユーザ3名がおとり捜査の末に、児童ポルノ画像を公開していたとして書類送検。どのようなおとり捜査だったのかはよくわからない。
同課などは「マル秘」というタイトルの“おとり”画像を流し、ファイル共有ソフトのネッ トワークに接続。3人がそれぞれ、わいせつ画像を公開しているのを確認した。画像は、いずれも同じ少女の画像だったという。
2003年9月
■ エステ顧客データを公開したWinMXユーザの情報開示命令
流出した某エステサロンの顧客データをWinMX上で共有していたユーザの情報を開示するようISPに命令。
WinMX・プライバシー・民事
2003年11月
■ Winnyユーザ、ゲームソフト・映画の著作権侵害の疑いで逮捕
Winnyでは初となる逮捕。Winny上で「スーパーマリオアドバンス」や「ボンバーマンストーリー」等GBA用ゲームソフトを共有していたユーザ、「ビューティフル・マインド」等映画を共有していたユーザがそれぞれ著作権侵害の疑いで逮捕された。
2004年1月
■ WinMXユーザ、わいせつ物陳列の疑いで逮捕
「わいせつ画像は県内の県立高校1年の実在しない女子生徒名になっていた」とあるので、児ポ絡みとも考えられる。
■ WinMXユーザ、わいせつ図画陳列の疑いで逮捕
「インターネットのホームページにわいせつな画像5点を掲載、不特定多数の利用者がファイル交換ソフト「WinMX」を使って閲覧できるようにした疑い」とあるのだが、サイトとMXで公開していた、ということなんだろうか?被写体となった被害女性からの相談により逮捕か。
WinMX・わいせつ・北海道警・1名
2004年3月
■ 個人情報リストを公開していたWinMXユーザの情報開示命令
BIGLOBEを運営するNECに対し、個人情報リストを公開していたWinMXユーザの情報を開示するよう命令。東京地裁は「WinMXを通じて、原告の氏名や年齢、住所、電話番号などが記載された個人情報リストが流出し、プライバシーが侵害された」と認める。
WinMX・プライバシー・民事
2004年5月
Winny開発者の47氏こと金子勇氏が著作権法違反幇助の容疑で逮捕される。確かにWinnyは著作権侵害を容易にしている部分もあるが、かといってこの時点での開発者の逮捕は無理矢理過ぎる感がある。
一審は有罪判決が下されたが即日控訴。現在も係争中。
- ウィニー開発者に罰金刑 京都地裁: 京都新聞(2006/12/13)
- 「Winny」開発者の金子勇氏に罰金150万円の有罪判決 (2006/12/13)
- Winny開発者、改めて無罪主張 控訴審始まる - ITmedia News (2009/1/19)
2004年11月
■ レコード会社各社、音源を公開したWinMXユーザの情報開示請求
RIAJメンバー企業がISP13社に対し、WinMXを利用して音源を公開していた計44名の発信者情報開示請求を行う。
- ファイル交換ソフトを利用した 音楽ファイル不正アップロードユーザーの 発信者情報開示請求手続き開始(2004/11/15)
- ファイル交換ソフトを利用した 音楽ファイル不正アップロードユーザーの 発信者情報開示請求(第2回)(2004/12/7)
- ファイル交換ソフトを利用した 音楽ファイル不正アップロードユーザーの 発信者情報開示請求(第3回) (2004/12/27)
この情報開示請求に応じたISPからの情報により、音源を違法に公開していたユーザ5名との和解が成立。一人あたりの和解額は平均48万円となった。
2006年2月
■ レコード会社各社、音源を公開したWinMXユーザの情報開示請求
RIAJメンバー・関連会社21社がISP11社に対し、WinMXを利用してWinMXを利用して音源を公開していた38名の発信者情報開示請求を行う。
2006年5月、RIAJメンバー・関連会社14社は、この発信者開示請求に応じなかったISP3社に対し氏名開示を求める訴訟を起こす。2006年9月には氏名開示を明示じる判決が下されている。
- サービスプロバイダに対して 音楽ファイル不正アップロードユーザーの 発信者情報の開示を求める訴訟提起 (2006/5/16)
- 音楽ファイルの不正アップロードユーザー19名の 氏名等の開示を命じる判決下る(2006/9/25)
2006年7月
■ Winnyウィルス漏洩情報をもとに不正アクセスの男性、逮捕
「山田オルナタティブ」に感染したPCから漏洩した情報をもとに、インターネットバンキングの口座に不正アクセスをし、自身の口座に2度にわたって振込みを行なおうとした男性が逮捕。
また別の男性も、この「山田オルタナティブ」に感染したPCから漏洩した情報をもとにインターネットバンキングの口座に不正アクセスをしたとして翌月の8月23日に逮捕されている。このケースではログインしただけであった。
■ LimeWireより漏洩した個人情報をもとに不正アクセスの男性、逮捕
LimeWireにて誤って公開されていたファイルを入手し、その情報をもとにインターネットバンキングの口座に不正アクセスをした男性が逮捕。
2007年5月
週刊少年ジャンプ、週刊少年サンデーに連載中の作品をスキャンした画像をWinnyネットワーク上で公開していた3名の男性が、著作権法違反の疑いで逮捕。Winnyでの著作権侵害による逮捕は2例目となる。
2008年1月
■ Winnyユーザ、アニメの著作権侵害の疑いで逮捕、Winnyウィルス制作者も著作権侵害で
「アイドルマスター XENOGLOSSIA」「機動戦士ガンダム00」のビデオをWinny上で公開していたとして、著作権法違反の容疑で2名の男性が逮捕。また、Winny上でウィルスをばらまいていた男性も、そのウィルスにテレビアニメ「CLANNAD」の画像を使用していたことから、著作権法違反の容疑で逮捕された。Winnyによるユーザの逮捕はこれで3例目となる。
- Winnyによる3度目の公衆送信権侵害事件、3人を逮捕
- アニメ「CLANNAD」の画像を表示するウイルス、作成者を著作権侵害で逮捕
- 京都府警、ウイルス作成の大学院生を名誉毀損容疑で再逮捕
- Winnyウィルス制作者逮捕の経過、背景、問題点
2008年3月
■ Winnyユーザ、ソフトウェアの著作権侵害の疑いで書類送検
Winny上でゼンリンの「デジタウン」を共有していたとして、2名の男性が著作権法違反の容疑で書類送検された。
なお、このうち1名の兵庫県警巡査については、起訴猶予処分にされたことが明らかにされている。福岡地検は、偶発的にネットに公開されたものとして、故意に流出させた可能性は低いと判断した。
2008年5月
■ Shareユーザ、アニメの著作権侵害の疑いで逮捕
「コードギアス 反逆のルルーシュ R2」「機動戦士ガンダム00」のビデオをShareネットワーク上で公開していたとして、著作権法違反の容疑で3名の男性が逮捕。Shareユーザの逮捕はこれが初。
2008年9月
■ Winnyユーザ、劇場公開前の映画を公開し、著作権侵害の疑いで逮捕
日本では未公開の海外映画に字幕をつけて公開していたWinnyユーザの男性が、著作権法違反の容疑で逮捕された。公開前の映画のリリースによる逮捕は国内初。
なお、この男性に対しては、懲役2年執行猶予3年の判決が下されている。
2008年11月
eMuleを利用し、児童ポルノを「海外ユーザらに提供する目的で所持していた」として、3名の男性が児童買春・児童ポルノ禁止法違反(提供目的所持)容疑で逮捕。この逮捕は、児童ポルノ撲滅のため、日本を含む世界74カ国がICPOと協同してファイル共有ソフトを利用した児ポ動画共有ユーザの世界一斉摘発の一環として行なわれたとみられる。
国際的児童ポルノ摘発オペレーション、日本でも「児童ポルノ提供目的所持」で3名を逮捕
■ LimeWireユーザ、児童ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕
LimeWireを利用し、児童ポルノビデオを公開していた男性が逮捕。長野県警のサイバーパトロール中に同ビデオを発見、捜査の結果、逮捕に至った。
■ Shareユーザ、テレビドラマの著作権侵害の疑いで逮捕
フジテレビドラマ「太陽と海の教室」をShareネットワーク上で共有していたとして、著作権法違反の容疑で男性を逮捕。これ以外にも、フジテレビやTBSのドラマ51作品、全128エピソードを公開していたことが明らかにされている。また、この男性は2ちゃんねる上で放流予告を行なっていた模様。なお、このケースの捜査・検挙に関わったのは京都府警ではなく、警視庁であった。
Share・著作権・警視庁・1名
2009年1月
OpenNapサーバ「うな鯖」を運営し、同クライアント「うたたね」を利用して児童ポルノを共有していたとして、管理人の男性が児童ポルノ禁止法違反で逮捕された。なお、サーバの管理によって逮捕されたわけではなく、管理人個人が提供目的で児童ポルノを所持していたことによる。
またこの報道において、前年の2008年に、「うたたね」を利用して児童ポルノビデオを交換していた5名が児童ポルノ禁止法違反で逮捕・起訴され、そのうち4名に有罪判決が下されていたことが明らかとなっている。
2009年2月
■ Winnyウィルスにより盗撮画像流出、撮影者の男性を逮捕
Winny暴露ウィルスに感染したPCより漏洩した盗撮画像がネット掲示板等で話題となり、PCの所有者であり盗撮画像を撮影した男性が出頭、県迷惑防止条例違反で逮捕された。
■ Winnypユーザ、児童ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕
Winnyの匿名性を強化したファイル共有ソフト「Winnyp」を利用し、児童ポルノを公開していたとして男性が逮捕。1日にのべ30GBにも及ぶ児ポファイルをアップロードしていたとみられている。この男性は当初eMuleを利用して児ポファイルを共有、サイバーパトロール中の捜査員にも提供していたものの、報道でeMuleユーザの摘発を知り同ソフトウェアを削除していた。男性は調べに対し、「14歳以上はダメだ。eMuleは児童ポルノ動画を収集する最高のツールだ」などと供述している。
Winnyp・児ポ・埼玉県警・1名
■ Shareユーザ、児童ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕
Shareを利用し、児童ポルノを共有していた男性2名が児童ポルノ禁止法違反で逮捕された。Shareネットワークでの児童ポルノ公開による逮捕はこれが初。
2009年3月
■ レコード会社各社、ISPに対しWinMXユーザの情報開示請求
RIAJメンバー企業10社がISP2社に対し、WinMX上で音源を違法に公開しているユーザ4名について、情報開示請求を行なった。RIAJは、IMによる警告を無視したことからこれらのユーザを悪質であると判断し、開示請求に踏み切ったという。
2009年7月
■ Shareユーザ、アダルトゲーム無修正改造版を公開、わいせつ物陳列容疑で逮捕
アダルトゲームソフト「レイプレイ」の無修正改造版をShareネットワークにて公開したとして、男性1名が逮捕された。この件は当初、著作権侵害の容疑での捜査が進められていたものの、より過激な内容に改造されていた点を重視し、容疑をわいせつ物公然陳列容疑に切り替えて立件したという。
ただ、この件については、「なぜレイプレイなのか?」という疑問がある。これについては、「レイプレイ」の内容が海外、国内で問題視されており、それを受けての恣意的な検挙ではないのか、との批判がなされている(主に私から)。
Share・わいせつ・京都府警・1名