どうなるJamendo、スケールダウンして運営を継続?

先日、Jamendoが資金調達に失敗して経営が傾きかかっているという話題を紹介したが、今回はその続報。今のところ、今後の経営についての公式なアナウンスはなされていないものの、フォーラム上ではsylvinusことJamendo CTOのSylvain Zimmerがユーザからの疑問に答えている。

以下がそのQ&Aの翻訳。Jamendoの存続に関わっていそうな質問のみを抜粋した。ユーザ側の質問がえらそうな感じになってしまったが、複数のユーザが提示した質問を、別のユーザが編集してsylvinusに問いかけている、ということで。

財務状況/寄付について
サービスを維持するためには、どの程度のお金が必要か?寄付は(必要/歓迎/不要)のいずれか?

「サービスの維持」がサーバや基本的なサービスを指しているのであれば、10,000ユーロ/月です。Jamendoくらいの規模のプロジェクトとしては平均的な額でしょう。ただ、それに加えて人件費、関連経費がかかりますし、できることの幅を広げるためにはたくさんの人員が必要になりますから、そのコストはさらに増すことになります。若干の規模縮小は避けられませんが、より効率的になることで、我々は少しでも早く収益分岐点に到達し、「財務的独立」を確保できると思っています。個人的には、そこに到達するために大がかりなドネーション・キャンペーンを開始するのもよいかもしれないと思っています。実際、そうしなければならないのかもしれませんが、そこには問題もあるのです。Jamendoコミュニティが、アーティストに寄付するのか、我々に寄付するのかを選択しなければならなくなるということです。そのようなわけで考えなければいけないことはたくさんありますが、それでも寄付はもちろん大歓迎です。ただ、今のところは「何としてでも」(訳註: 寄付してくれと)訴えなければならないという感じではありません。

人員の状況
Jamendoに残るのは何人くらいになるのか?どのポジションが空くことになるのか?

今のところ、通知がいっている人も含めて、大部分のスタッフは残っています。もちろん、我々はできる限り職を失わせないよう尽力するつもりです。ただ、何人残るかについてはわかりません。また、空いているポジションは現在ところありません。

サイトの状況
現在の状況、つまり少数のスタッフで、どうやって既知のバグや不具合を修正するのか?

えぇと、先ほども述べたとおり、より効率的に、スマートにすることで、乗り切れると思っています ;-)

また、いくつかの機能もカットすることになるでしょう。特に、ほとんど使われていない機能、メンテナンスが大変な機能が対象になります。たとえば、Torrentのシードを停止するといってもそれほど思いがけないことではないでしょう?ただ、こうした機能のカットについては、事前にお知らせすること、それをバックアップするプラン(Torrentをバックアップするものだと、ウェブサイト上で「ダウンロード」ボタンを押せば同じZIPファイルが手に入るといったように)を用意することを約束します。またいくつかのコンポーネントのソースをオープンにすることで、皆さんの手で新たなアイディアを持ち込む、実現することを援助できるかもしれません。

ボランティア・ユーザの参加(たとえば翻訳)の可能性はあるのか?(フランス語以外の言語での記述、テキストの中には、理解しにくいもの、誤解を招くものがある)

エス。古くからのユーザの方は覚えているかもしれませんが、以前はコミュニティがJamendoのインターフェースの翻訳に参加していました。それが 1)エラーの修正、2) 未対応の言語の翻訳という形で復活することになると思います!!

展望
Jamendoの中長期的プランはどのようなものか?Mangrove*1との関係、Jamendoの売却については?

我々の唯一のプランはJamendoを存続させるプランを選択することです ;) そうしたプランはいくつか会議でも上がっていますし、現在はそれらプランの分析をし、すべての人にとって正しいプランを探し出すことに追われています。もちろん、プランを決定したときにはアナウンスします。ただ、サービスの継続を保証する申し出をいくつか受けていることも事実です。これはJamendoにとって良いニュースですから、これから数週間のうちに何が起こるのかを100%知っているわけではありませんが、幾分楽観的には考えています。

Item 19: Message from the team & news on Jamendo - The forum

それから一週間後、Sylvain Zimmerは再びフォーラム上に現れ、

数日のうちに、良いニュースをアナウンスすることになると思います。

Item 27: Message from the team & news on Jamendo - The forum

さらに、彼のブログでも

この数ヶ月はあまりにクレージーだった。もうすぐJamendoのビッグニュースがでるよ。

TEDx PARIS tomorrow ! Join us with the livestream :) | Sylvain Zimmer

と述べている。ただ、それから10日以上たった現在でもその「ビッグニュース」はユーザに届けられてはいない。1月29日以降も、sylvinusはコメントを続けられているものの、直接Jamendoの経営に関わるQ&Aはなくて、フォーラム上での議論は主に運営とスケールの話が中心になってきている。

今のところは、まだよくわからない、というところかなぁ。規模を縮小して乗り切る、という方向性は示されているものの、具体的にどういったプランで経営、運営を進めていくのかが公式にアナウンスされない限りは、安心はできないかなぁとは思う。

余談: Ogg配信停止の議論

最近のsylvinusのコメントの中で、規模縮小の一環としてOggのサポートをどうするか、という点に触れているのだが、最近ではこの話題が一番の盛り上がりを見せている。

Oggストリーミングがここのところ聞けません。これについてのアナウンスはされていませんが、多くのユーザが利用できずにいます。

Ogg用のハードディスクが壊れてしまい、今はFLACから再エンコード作業を行なっています。ただ、Oggファイルの人気が『極めて低い』ため、実際のところ、あまりプライオリティの高いタスクにはなっていません。2009年の利用比率はMP3が99.5%、OGGは0.5%でした。Oggのディスク容量やコストが0.5%で済むのであればよいのですが、実際にはMP3以上にディスク容量が必要ですし、エンコードやメンテナンスにも同じくらいのコストがかかります。

さて、我々はOggのサポートを継続すべきでしょうか?私自身はオープンソースの強力な支持者ですが、このケースでは、MP3の特許がもうじき失効することOggの利用が極めて少ないこと、、ウェブサイトでも「人気の」モバイルデバイスでもOggがサポートされていないことを考えると…、正直なところ、Oggのサポートの継続を正当化するのは難しい。単にコミュニティのイメージを良くするためだけにサポートするのも馬鹿げたことです。

そこで2つの可能性が考えられます。

*ほとんど誰もOggのことは気にかけてない、その場合、我々はOggのサポートを止める
*多くの人がOgg Virbisを望んでいる、その場合、我々はOggサポートを継続するためのドネーション・システムを構築する。ともすれば、コミュニティがサーバを管理する形になるかもしれない。

これについてはもうコミュニティ次第です!

Item 40:Message from the team & news on Jamendo - The forum

MP3関連の特許問題があったがゆえにフォーマットとして制限を受ける。そこでMP3に代って自由に利用できるパテントフリーなフォーマットとしてOgg Virbisの開発が進められてきた、という背景があり、Oggサポートの停止に対してはフォーラム上でもネガティブな反応が複数見られている。この問題が一筋縄にはいかないのは理解できるが、この状況にあって、あまりに理想を求めすぎるのもどうかなとは思うのだが。

Oggのサポートの問題については、私も大好きなJosh Woodwardがフォーラムにコメントを投稿している。曰く

個人的には、ウェブサイトが理想を追い求めて崩壊に至るよりも、実利的に生き延びることを選択した方が良いと思う。ハードウェアプレーヤーがOGGをサポートしていないんだから*2、マス*3にとってOGGは無いも同然。また不可逆ファイルのフォーマット変換は音質を悪化させる。ほとんどの人が、たとえ無料であっても、何としてでもコンテンツを手に入れようとは思ってないということをJamendoはよく理解している。マスにJamendoを利用して欲しいと思うなら、彼らが望むものを提供しなきゃいけない。

Item 15:Message from the team & news on Jamendo - The forum

同感。ただ、この意見に対しては、別のあるユーザから「中国、台湾製PMPOGGをサポートしている、あなたのいうマスは妄想にすぎない」とか、「不可逆だからフォーマット変換で音質が悪化する。JamendoFLACで提供すべき」とか斜め上の反論が寄せられている。んー、理想は押しつけるものじゃないと思うけどなぁ。

*1:Jamendoに投資しているベンチャーキャピタル。MangroveとのシリーズBラウンドで資金調達に失敗したことが今回の騒動の引き金になった。

*2:少なくともiPodはサポートしていない

*3:ほとんどの人たち