音楽レコード市場、10年前よりは縮小しているけど20年前よりは大きいよね

このグラフ、世界のレコード市場規模を示すグラフとして、Life is beautifulGIZMODO米版)などが取り上げて、結構話題になっている。でも、このグラフを見たときの焦点や印象って、人によって違うんだろうなと思う。
こういう風にみれば、

CDの売り上げがiTunesなどのデジタル・ミュージックでは補うことができない速度で急行下していることが良く分かる。[...] 米国で暮らしている身としては、音楽に関してはPandora、映画に関してはNetflix、の提供するストリーミング・サービスで十分で[...]、CDやDVDどころかデジタル・コピーすら自分で持つ必要がなくなりつつあるというのが実感。[...] この状況はサステイナブルとは全く言えない状況で、今後どう展開して行くかを読むのは非情に難しい。

Life is beautiful: デジタルでは補いきれないCDの売り上げの急速な落ち込み

あれれ、でもその原因は一体どこにあるんでしょうかね? 最近の若者は音楽を聞かなくなってきたんでしょうか? 昔みたいにアルバムCDが売れなくなってきたんだって指摘もありますけど、もしかしてヒットを飛ばせるような名曲のリリースが減ってきたのが深刻な市場低迷の要因でもあるのでは...なんて厳しい意見まで出てきているようですね〜

CDが売れなくなった...のではなく、そもそも売れる名曲が激減? : ギズモード・ジャパン

こういう見方になったりもするのかもしれない。

ただ、もっと長いスパンでみてみると…

現在の世界のレコード市場規模は、80年代以前よりは大きいんだよね。もちろん、物価の上昇もあるにはあるだろうけど、90年代以前に比べたら大きくはなってるんじゃなかな。市場規模が小さいよりは大きい方が良いのかもしれないけど、たとえCDが減少していったとしても、その分デジタルに移行するわけで、市場がゼロに向かっているというよりは、圧縮されているのかなという印象。

確かに、2000年前後の右肩上がりだった市場規模を見据えた産業を維持することを考えると、現状と見通しはサステナブルな状況ではないのかもしれないけど、大きくなりすぎた産業が市場の縮小に耐えきれない、ということでもあるんだろうなと。

我々を取り巻く環境や状況の変化とともに、大衆の娯楽としての音楽の価値、重要性は*1以前ほどではなくなってきているように思える。あなたの限られた時間の中で、私のブログなんぞをご覧いただけているのも1つの証左かもしれない。

補足

Life is beautifulの記事は、デジタルコピーの購入すら必要としない、ストリーミングサービスで満足できている現状があって、さらに市場規模の縮小も進んでいて、そんな状況で大丈夫かってお話なので、今回のエントリとはまた違う視点です。

一方のGIZMODOの方は「おまえは何を言ってるんだ」って感じ。「ヒットを飛ばせるような名曲のリリースが減ってきた」って、60年代、70年代、80年代は名曲が少なかったわけでもないし、90年代の最盛期だって売れ線=名曲ってわけでもなかったでしょ。日本版独自の分析みたいだけど、なんだこれ。

あと、グラフが投稿されたflickrのコメントでは、RIAAソースのデータだし、メジャーだけをあつかってんじゃないの?RIAA非会員のレーベル、インディペンデントは入ってないんじゃないの?なんてツッコミも。世界のレコード市場だから、RIAAだけじゃないにしてもメジャーを扱っている、ってところはあるかも。ただ、グラフがどのデータを参照しているかがわからなかったからなんとも。

そのflickrコメントで見かけた改変グラフもなかなかおもしろかった。

Lies, Damn lies and statistics
だいぶ印象が変わるね。

市場規模がもたらす影響:新譜数とデビュー数

市場低迷がもたらすネガティブな影響についてはしばしば言及されているけれども、活況だった時代は何から何までよかったのかというとそうでもない。

これは日本レコード産業における1990-2007年のCD新譜数、デビュー歌手数の推移なのだけれども、これを見るともっともCDが売れていた時期に両社ともに落ち込みを見せている。また、日本レコード協会が公表した最近のデータからもレコード不況が叫ばれるこのご時世になって、新譜数、デビュー歌手数が増加していることが伺える。

まぁ、こうした相関をもたらしたであろう要因については、いろいろ考えが浮かんでくるところではあるが、あまり確信が持てる感じでもないしなぁ。それと、これはあくまでも相関に過ぎないので、何か別の因果が働いている可能性もあるし、現在と20年前とのデビュー組数が同程度だと言っても背景となっている要因が異なることも考えられる。この当たりの事情をご存じの方がいれば、是非ともコメントいただきたいところ。

もちろん、新譜数、デビュー歌手数とレコード市場規模との間に、何かしらの関係があったとして、だからレコード不況の方がいいよねってわけではなくてね。

*1:相対的に