新しい著作権管理のカタチ?:角川、マッシュアップコンテンツの認定へ

 角川GHDホールディングス(角川GHD)は25日、動画共有サービス「YouTube」と協力。2月上旬を目処に、YouTube上に角川GHDの専用チャンネルを開設。アニメのプロモーション映像を配信したり、クリエイター発掘のためのキャンペーンを共同で展開することなどを軸とした、新規事業を発表した。

 同時に、YouTubeGoogleの協力を得て開発しており、角川GHDも開発に参加している動画識別技術の進捗状況も説明。「角川の作品の場合、感覚的には90%台の精度を実現」(角川デジックス 福田正社長)したことや、そのシステムを基にコンテンツプロバイダが動画掲載の可否や、広告配信と連動させた収益を上げるためのビジネスモデルの構築を進めていることも明らかになった。

角川グループ、公式アニメ配信など、YouTube上で新規事業発表

ネットの活用に対して積極的な角川だけにそれほど驚きはなかったのだけれども、著作権管理の柔軟性という点では、なかなかよい着地点かなと思う。このような交渉ができるのも、角川自身が電子指紋技術によるコンテンツ認証に関わってきた、というところもあるのだろう。この技術では、まず検体としてコンテンツを提供し、システムのリファレンスに登録する必要があるのだけれども、それすら角川はビジネスにしようとしているというのが非常に興味深い。

角川デジックスの福田社長は「今回開発されたシステムを利用したいというコンテンツプロバイダの方がいれば、ぜひお話をさせていただきたい」とし、日本で同システム利用に関するコンサルタントビジネスを展開する可能性を示唆した。

このシステムを利用する他コンテンツプロバイダはともかくとしても、少なくとも角川自身は、アップロードされフィルタリングに引っかかったコンテンツ1つ1つの認証の可否を行うという。
角川としてはプロモーションに役立つようなコンテンツであれば、喜んで受け入れるだろう。もちろん、コンテンツの本編をそのままアップロードするという行為は認めるということはないのだろうが(認められるようなコンテンツであれば、角川自身がアップロードしているだろうし)、角川のコンテンツのプロモーションともなりうる二次創作物に関しては、収益を分配してでも活性化したいという狙いもあるのだろう。
ただ、米国においてはフェアユースがあるため、単純に自らの著作物が利用されているというだけで、プロモーションの役に立たないからハイ削除、というわけにはいかないことも頭に入れておかなければならないだろう。
それはともかくとして、こうした動きが望ましいと思えるのは、これまでのコンテンツに関してよりは、今後のコンテンツに関してかなと思う。少なくとも、こうした方針を打ち出す以上、今後製作されるコンテンツは、このような利用を見据えた著作権処理を行えるよう段取りを整えるだろうしね。
もう1つ気になったところとしては、

福田社長は、「ニコニコ動画」を含む、他の動画共有サービスについても「YouTubeと同様の管理システムなどが用意されれば、拒む理由はない」と語り、現時点ではそうした整備が不十分であるとの認識を示し、「違法動画を掲載したまま逃げ続けるようであれば法的手段もとる」とした。

まぁ、YouTube自体、AudibleMagicの音声指紋技術を拒否していたわけで、必ずしも角川の絡んだ技術でなければならない、というわけではないだろう。ただ、こうした技術が存在する以上、これまでのような言い訳は通用しにくくなってくるわけで、それに対してどう出るかが気になるところ。
個人的には、こうしたビデオ共有サイト対コンテンツプロバイダの戦いは、結局は協調の道しかないと思うので、どちらも譲歩する必要はあるかなと思ったりもする。
ただ、この問題の根本にあるのは、違法にコンテンツをアップロードするユーザの存在だということは間違いないだろう。もう潮時だと思うよ、大目に見るのも、大目に見てもらえるだろうと思うのも。

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