音楽業界にアニソン旋風が吹き荒れているらしいので、シングルCDチャートについて考えてみるよ

音楽業界に“アニソン旋風”が到来中だ。音楽チャートの上位をにぎわすアニメソングが相次ぎ、有名ミュージシャンがプロデュースするアニソン歌手も登場。

カナダ人女性が歌手デビューへ アニソン旋風、海越えて(フジサンケイ ビジネスアイ)

という記事を読んで。『旋風』とかいう言葉を聞いた時点で雲行きが怪しいなぁと思えるのだけれど、それは置いといて。この記事への反応として、痛いニュース等を見てるとなかなか面白かった。色々と気になるところもあるのだけれど、今回はシングルCDチャートが以前と比べてどう変わったのか、というお話でも。

8 名前: さやえんどう(鹿児島県)[sage] 投稿日:2008/11/01(土) 16:03:37.95 id:xcJ3+5RW
×アニソン旋風到来
○業界の規模が縮小したからランキングに現れるようになっただけ

たぶん、半分は当たってるんだろうなぁとは思うけれど、業界全体の縮小だけの話にしてしまうのもちょっと問題があるかも。シングルCDチャートが既にヒットチャートの指標として妥当ではないという部分もあるので、ここで言えることはシングルCD市場の変化と、それに関連する変化のいずれか、もしくは両方によって、アニソンがチャート内に現れるようになった、というところだろう。もちろん、業界の縮小もその中に入るのだろうけど、ちょっと大味な感じもしないでもない。

シングルCDを巡る変化

シングルCD市場の変化として、1つには単純にJ-POPブームが終わったということがあるだろう。90年代後半のように、猫も杓子もヒットチャートを気にするという時代ではなくなってきているように思える。もちろん、ブームは過ぎ去ったというだけでその需要が無くなったというわけではなく、依然として国内音楽市場の中ではJ-POPと言われるものが多数流通している。もう1つの変化としては、音楽の聴取スタイルの変化があるだろう。若者がみんな携帯で音楽を聞いているというわけではないのだろうが、少なくとも音楽聴取の1つのスタイルの中に*1着うたが組み込まれているという状況でもある。結果的に、シングルCDの購入が着うたのダウンロードによって代価されている可能性も考えられる*2
いずれにしてもシングルCD市場の縮小によってこうした状況が生み出されている。シングルCD市場が縮小しているのは、RIAJのデータなどでも示されているし、オリコンのチャートを見ても少なくともチャート上位層の売上枚数が減少してることが見て取れる*3
とりあえず、オリコンのシングルCDウィークリーチャートを見てみる。なお、オリコンのチャートは「音楽・映像ソフトを販売している全国約3020店の小売店(CDショップ、各専門店、レンタルや書籍等を扱う複合店、家電量販店など)、インターネット通販、CDショップを通したイベント会場等の売上調査をもとに、全国の週間売上推定数を算出したもの」である。
まず、今年2008年11月第1週のシングルCDランキングを見てみると


出典:2008年11月第1週の邦楽シングルランキング情報:ORICON STYLE

この7位の堀江由衣 「バニラソルト」がこの週のアニソンの最上位となるのだろうか。推定売上枚数は13,099枚。
では、この枚数で、音楽バブルと言われていた頃であったら、どれくらいのランクになるのだろうか。1999年のデータで見てみることにする。


出典:1999年11月第1週の邦楽シングルランキング情報:ORICON STYLE

大体この辺り。20位台後半。トップ50を紹介するカウントダウンTVならテレビでも放送されていたかなというところ。
さすがにこの時期は数万を売り上げないとトップ10に入ることも難しかったろうが、最近だとたまに1万枚を売り上げていなくても週間シングルCDチャートのトップ10にランクインすることもできる。トップ50でも3千枚程度を売り上げればたぶん入る*4。デイリーだと数百枚*5。要は、どれだけ初動に集中させるかを考えれば、チャートに入れることは、以前ほどは難しくはないのかもしれない。最近だとチャートに長居するような曲もそれほど多くはなさそうだし。

オリコンシングルチャート眺めてて思ったこと

なんだかんだで、今でも1位をとるような曲って、音楽バブル全盛期のころでも(タイミングさえ良ければ)1位を取れるだけの枚数を売り上げていたりする。ちょっと驚いた。大半がジャニーズなのだけれど、最初の週に10万〜20万枚とか。ただ、その一方でそれ以下のランキングの人たちの売上枚数がだいぶ下がっているなと感じる。

39 名前: タコ(宮城県)[] 投稿日:2008/11/01(土) 16:10:15.92 ID:tt+6lha1
音楽自体の話題性が無くなり
特定のアーティストに対するファンが減った。
だから売れない。
アニソンはアニメのファンが買うから減らない。

たぶん、特定のアーティストのファンが大幅に減ったというよりは、『特定のアーティストのファンというほどではないけれど、好きになったからシングルCDを買う』という層がだいぶ減ってきているのかなと。そうした層が、かつてのリリース週に50万枚を売り上げるようなシングル*6売上の背景にも、トップ10下位の人たちのシングル売上の背景にもいたんじゃないのかな。
では、そうした層はどうなってしまったのか、というところが問題なんだろうけれど、単に以前ほど熱狂的ではなくなってしまった、とか、着うた等音楽配信に移った、とか、少子化の影響を受けてそうした層の母数自体が減少したというところなのかもしれない。
「アニソンはアニメのファンが買うから減らない。」というのはなかなか興味深い。ただ、この辺は門外漢の私なんぞが語るよりも、別のもっと詳しい方の意見の方が良さそうなので、今回は割愛。

*1:たとえ着うたをダウンロードしている層であっても、通常のリスニングスタイルがそれだと言えるわけではない。

*2:あくまでもシングルCDにおいてはそう思っているというだけで、これがアルバムCDにおいても同様であるとまでは言い切れない。

*3:全体として縮小傾向があるのかどうかは保留。ヘッドが押し下げられているだけで、テール部分は変わらない、と言うことも考えられる。

*4:3千枚といってもそんなに簡単なことじゃないんだけどね。実際の話。

*5:もちろん、これはオリコンが対象にしている店舗じゃないと集計されないのだが

*6:B'zなんかはそうだったね