児童ポルノサイトの広告潰し、なんだろうが…
児ポサイトへの広告掲載を仲介していた代理店の社長が逮捕されたようで。
児童ポルノ画像投稿サイトに、成果に応じて報酬を支払うアフィリエイト広告を仲介してサイト運営を支えたとして、神奈川県警少年捜査課などは1日、大阪府豊中市の広告代理店社長の男(40)を児童買春児童ポルノ禁止法違反(公然陳列)ほう助容疑で、横浜地検小田原支部に書類送検する。違法サイトの「資金源」との指摘もある広告収入に踏み込み、広告代理店を立件するのは全国初となる。【吉住遊】
アフィリエイト広告:代理店社長立件へ 神奈川県警 - 毎日jp(毎日新聞)
「資金源」というと何だかでかい悪の組織のような気もするけれど、結局は携帯向けサイトなわけで。携帯サイト運営の資金を経つ、というよりは、児ポサイト運営のインセンティブを削ぐって感じなんじゃないのかしら。
この件は昨年10月に摘発、検挙された児ポ画像*1投稿サイト「さくらんぼ女学院」に絡んでのもの。このサイトはそれなりに有名なサイトだったはず*2。
当時の報道では
これ(引用注:平成17年5月の開設から平成20年10月の摘発)までに約6155万件のアクセス数がある人気サイトだったという。主に広告で収入を得ており、「金もうけのためにやった。広告代理店と契約を結び、いいときで月に60万円ほど稼いでいた」と供述している
児童ポルノ投稿サイトの開設者ら逮捕 - MSN産経ニュース
とあるように、広告収入を目的としていたことが伺える。
捜査幹部によると社長は昨年5〜7月、広告主に働きかけて携帯電話の児童ポルノサイトにアフィリエイトのグラビア広告を掲載させ、広告料2万1千円をサイト管理者(44)=同幇助罪で罰金刑=に支払わせた疑いがある。
asahi.com(朝日新聞社):児童ポルノサイトに広告仲介容疑 大阪の社長を書類送検 - 社会
とのことで、ここでの支払いは全体から見るとごく一部、それも一時期のものになるのだろうけれど、それでも立件に踏み切ったというのは、児童ポルノサイトだとの認識があった、ということなのだろうか。ただ、
サイト管理人の男(44)=同ほう助罪で罰金刑=は、別に開設した適法サイトを装い広告主と契約していた。
アフィリエイト広告:代理店社長立件へ 神奈川県警 - 毎日jp(毎日新聞)
ということを考えると、代理店側がどのようなサイトに広告が掲載されているのかは判断できなかったのではないか、とも思える。代理店社長は「コンピューターに登録しているサイトが膨大でチェックできなかった」という。また、毎日新聞の取材に対しても
−−人気サイトだったから、広告掲載を依頼したのでは。
児童ポルノ:アフィリエイト広告の代理店社長立件へ 違法サイト乱立助長 /神奈川(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
それはない。プログラム上も、そんな設定はない。
としている。
実際、3ヶ月で2万1千円くらいの支払いではそれほど目立ったサイトというわけでもないだろうし、サイトとしては多額の利益を上げていたとはいえ、複数の代理店経由で広告を掲載し、合計すればかなりの金額になっていた、というところだろう。でもそう考えると、他の代理店が同サイトの広告を掲載させていたことについてはどうなるのだろう?
神奈川県警は
代理店は内規で、児童ポルノなどを例示し「ふさわしくない広告掲載サイトにサービス提供を拒否できる」と定めるが、内規を守るために必要な措置を講じなかったことから、県警は違法性を問えると判断した
アフィリエイト広告:代理店社長立件へ 神奈川県警 - 毎日jp(毎日新聞)
としているのだが、「内規」を守っていないからダメってこともないと思うんだが…。単純に、児ポサイトに広告を掲載させて、報酬を支払ったことがダメだってわけでしょ?
落合弁護士も指摘しているように
この種の広告仲介に当たり、代理店による審査は行われるはずですが、どこまで審査できるかという問題、限界がある上、審査後の当該サイトの内容変化(例えば、当初は、子供の成長を見守るほのぼのとした地域サイトであったものが、その後、児童ポルノサイトに変貌してしまったなど)をどこまでフォローできるかという問題もあるでしょう。
2009-04-01 - 弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」
広告掲載のための初期のサイト審査だけではなく、継続した監視が必要にもなりかねないし、登録サイト以外での掲載もできないようにしなければならない。神奈川県警のいう必要な措置とはどういったものなのだろうか。
うーん、確かに児童ポルノサイトの撲滅に向けての努力は必要なのだけれど、その矛先によっては今後様々な問題を生み出しかねないよねぇ。
個人的な雑感なのだけれど、携帯向けの広告、とりわけアダルト広告は、騙しリンクなんかに支えられている気がするなぁ。結局は過渡期だからこそ、何とかやっていけるのであって、利便性が高まれば自然に淘汰されるものかなと。
余談
問題のあるサイトとそのサイトへの広告の掲載は、何も児ポサイトの問題だけではなくて、たとえばBitTorrentサイトなんかでも問題になったりする。現状では、BitTorrentサイト(トラッカーサイト、Torrentホスト/検索サイト、Torrentメタ検索サイトなど)ではGoogle Adsenseの表示は許されていないし、広告の掲載を拒む代理店も少なくない。また、コンテンツ産業の側からそうしたサイトに広告を掲載する企業への圧力があったりもするらしい。ただ、BitTorrentサイトの方は児ポサイトとは異なり、完全に黒ではないので、広告掲載の法的是非の前に、サイト自体の是非が問われる方が先なのだろうが。
さらに余談ではあるが、世界最大手のTorrent検索サイトMininovaは
2007 年の Mininova の収益は 103 万 7 ,560ユーロで、これは Mininova の Web 広告や、動画共有サイト「Snotr.com」からの収益やアフィリエイト、ツールバーの提供などによるものだそうだ。また、一見すると Mininova は著作権者に無断でアップロードされたコンテンツをダウンロードするための Torrent ファイルを大量にホストしているように見えるが、実際には Torrent ファイルはホストしておらず、また Mininova は著作権を侵害するコンテンツの削除要求も受け入れている点が Pirate Bay とはことなる点だそうだ。このことから Mininova の Niek Van der Maas 氏は「この収益は問題になるようなものではない」と述べているとのこと。
BitTorrent 検索サイトは海賊行為で収益を上げているのか - スラッシュドット・ジャパン
かなりの収入があるのだろうなぁとは思ったけれど、これほどまでとは。まぁ、Mininovaはオフィスもある会社なので、そう考えると大した額ではないのだが。