今どきの高校生もCDを購入するし、レンタルするし、友だちからも借りてるよというだけの話

高校生がCDを「マスター」と呼んでいるという都市伝説はどうでもいいとして、今どきの高校生(というか最近の若い世代)たちは、CDを購入・レンタルもしないで、友だちから借りてPCに取り込んでいるだけのかを考えてみるよというお話。「高校生は、音楽CDのことをなんと呼ぶか?」という記事の」はてブコメントでそういった指摘がいくつかあったので私も気になった、ということで。
CDの貸し借りってのは今に始まった話じゃないし、貸し借りしあってテープ、MDに録音するってのも当たり前だった気もする。それでも、CDを買う奴もレンタルして録音する奴も結構いたと思うし。
でもって、

回覧が終了したら、そのCDはポイ。
もうパソコンに取り込んだから、不要なのです。

高校生は、音楽CDのことをなんと呼ぶか?:小鳥ピヨピヨ(a cheeping little bird)

というのも、若い子を過度にデジタルエイジの申し子的な存在にしてる感じがして、すっきりしない。CDプレーヤーの利用頻度が低くなってるというのはありうるけど、捨てるかねぇ…。「クラスの子全員に回覧して貸します。」というのも、実際考えにくいけどねぇ。もちろん、今どきの高校生がCDを購入しない、レンタルもしない、なんてことは断言されていないんだけど、そういった感じ(友だちから借りて済ませちゃう)を出そうとしてるのかなぁと思える。

日本レコード協会 2007年度「音楽メディアユーザー実態調査」

憶測ばかりでものを言ってもしょうがないので、実際のデータを見てみることにする。RIAJは毎年音楽メディアユーザ実態調査を行い、縦断的なユーザ動向の変化を公表している。
調査方法としては、エリアサンプリング、質問紙による面接留置き自記入式でそれぞれの年齢層各150人(男女それぞれ75名)を抽出しているので、方法にそれほど大きな問題があるという感じはしない*1
この音楽メディアユーザ実態調査では、デジタルメディアに関する設問も多く、上述した件を考える上で有用なデータが記載されている。今回はこれをベースに考えていくことにする。

p.34 デジタル携帯オーディオプレーヤー利用経験

Q.デジタル携帯オーディオプレーヤー(ハードディスク型<iPodなど>・メモリ型)を利用したことがありますか。(○は1つ)

出典:日本レコード協会 2007年度「音楽メディアユーザー実態調査」

これは上記の設問に2択で回答してもらったもの。(足せば100%になる。男子高校生が100%を超えているのが気にはなるがそれはそれとして。)オレンジ色は全体平均より5ポイント以上高い箇所を示している。
これを見ると、中学生〜大学生でほぼ半数以上が携帯プレーヤーを利用したことがあるということがわかる。
ただ、この設問でよくわからないのは、オーディオプレ−ヤー機能が搭載された携帯電話も含まれるのかどうか。それによって、回答の印象が大きく変わってしまうので、気になるところ。

p.36 デジタル携帯オーディオプレーヤーで聴く音楽の録音ソース

Q.あなたは「デジタル携帯オーディオプレーヤー」で聴く音楽を何から録音していますか。(いくつでも○)

出典:日本レコード協会 2007年度「音楽メディアユーザー実態調査」

こちらの設問は、「デジタル携帯オーディオプレーヤーを利用したことがあると回答した人」を対象に行ったものとなる*2
これを見ると、購入したCD、レンタルしたCD、友人から借りたCDが主なデータの入手元であることがわかる。ばらつきがあるので一概には言えないが、中学生〜大学生の間では、購入・レンタルしたCDからのリッピングが多く、それに次いで友人から借りたCDからのリッピングが続く。
とはいえ、友人から借りたCDからのリッピングの割合を見ると、中学生〜大学生の間では、男子中学生がやや低いものの、それ以外ではおよそ半数近く(4割から6割)が行っているといえる。

大雑把にまとめるよ

本当は細かく計算していった方がいいんだろうけど、わかりにくくなるし、ぶっちゃけ面倒なので、大雑把にいくことにする。
「デジタル携帯オーディオプレーヤー」を所有している人が5割程度であり*3、その中で、友人からCDを借りてリッピングしている人は5割程度だとすると、この年代層全体としては、4分の1くらいの割合になる。
もちろん、携帯オーディオプレーヤーをもってなくても貸し借りしている人はいるだろうけれど、それを加えることで、この割合が大幅に増加するとも考えにくい。私がこの世代だった頃を思い返すと、多いとも少ないとも言いがたい数字ではある。

余談:データ抜いたらCDポイなのかはわからなかったけれけど

p.36のデータを眺めていて思うのは、(携帯プレーヤーを持っている人たちだけの数字ではあるけど)、CDを買ってないとか、レンタルしてないってわけじゃなさそうだよね。もちろん、これは「経験がある」ってだけなので、購入頻度、購入枚数を見るなら、これじゃ足りない部分もある。その辺は、p.16「2007年市場の概要:CD購入率」とか、p.17「過去半年間のCD購入枚数」、p.18「過去半年間のCD購入枚数」(推移)を見るとよさげ。*4
過去半年の購入率を見ても、中学生は相対的にやや低めではあるけれど、この年代の子たちも、半数くらいはCD買うし、レンタルしてることがわかる。購入枚数を見ても、経験的な感覚からは、シングルは減ったのかな?と思えるけれど、アルバムはそんなに大幅に減ってるだろうか?と思える*5。シングルに関しては着うたの影響もあるのかしら。
数字と自分の経験だけで判断するのも危険ではあるけれど、我々が思い描く『デジタルエイジの申し子』というイメージに沿って、そのデジタル環境に最適化された『今どきの子』像を作り出しちゃうのもアレだなぁと思ったり。

*1:人口構成比に応じて重み付けしている、場所は都内という点、設問項目や解釈、提示というでバイアスがかかる可能性もあるという点も注意が必要。ただ、調査は信用ならんと過度に拒否しちゃう人もいるけど、明確な根拠がなければそれもまたバイアスがかかってるってことを意識しないといけないですよ。

*2:なのでサンプル数は各年代・男女ともばらばら。ただ、さくっと計算すれば各層のサンプル数はわかる。たとえば、p.34の設問で利用したことがあると回答した男子大学生は61.2%。なので、それぞれ各年代*性別層はそれぞれ75名なので、75*0.612でサンプルは46人ということがわかる。なお、網掛けしてある箇所はサンプル数が少なすぎた部分。

*3:実際には「利用したことがある」、だからね!

*4:ただ、p.18のはばらつきがあるので、単純に継時的な傾向を読み取るのは難しいかも。

*5:ただ、現在音楽産業の低迷はアルバムセールスの落ち込みによるところが大きい。(参考:音楽統計からみるCD、携帯配信、PC配信の推移