プレイ動画に対する あるゲームメーカーの怒り:ゲーム業界とプレイ動画あれこれ

アダルトPCゲームメーカーAileのTwitterアカウントより、ニコニコ動画への同社ゲームソフト「relations sister×sister.」プレイ動画のアップロードについて怒りのTweet。

ただいま絶賛激怒中 本日Aile公式blogにて重大発表を行います 著作権に関する問題です Aileが潰れるとかではありませんよTue May 10 05:35:44 via Twitter for iPhone

正規購入ユーザーのゲームを楽しむ権利を貶める、愚弄する行為には徹底交戦します。不退転の決意というものを思い知って頂きますよ。いまさら削除しても無駄です。悪しからず!Tue May 10 05:45:38 via Twitter for iPhone

著作権侵害(知的著作権)のプロを味方にしました。割れより厄介な問題で「安易に」登録ユーザーが「無料でプレイ動画が見られる」というニコニコ動画へのプレイ動画アップについてです。対応の詳細は追って。Tue May 10 07:48:25 via web

今週は比較的ゆっくりなスケジュールが関係各所とのアポで一気に埋まってしまった。私の内部にあるROE(交戦規定)ではすでに交戦が認められている状況になります。一応警告はしたし、残すは宣戦布告の流れ。あとは法的根拠をカッチリ固めるだけ。結構疲れるなぁ・・・。Tue May 10 09:54:40 via web

このTweetに続き、同社ブログにて、ニコ動へのプレイ動画アップロードの件に関する詳細がアナウンスされた。

2011年5月9日にユーザから、「relations sister×sister.」製品版のプレイ動画がアップロードされているとの報告を受け、確認。ニコニコ動画の運営社ニワンゴに削除要請を行ったとのこと。さらに、以下のように続く。

2011/5/10 関係各所へ連絡、著作侵害への対応を相談。
平行して弁護士へ相談を行い、著作侵害となっている動画等を検証の上、刑事ならびに民事での訴訟について協議。

現状において同様の被害を受けているメーカー様も多数あるとのことで、合同にて複数の動画投稿者および管理会社への責任を問う訴訟を起こす可能性もありますが、本件においては単独訴訟として著作権侵害への罪を明白にする意向があります。

今後については、刑事・民事での訴訟問題が発生する可能性が高いため、一切の情報を公開しません。
訴訟によって裁判となり、判決が確定した場合は、結果を公表する予定です。

【重要告知】 ≪ Aile(エール)スタッフblog

要約すると、アップローダー個人に対して民事訴訟および告訴を検討している、また複数のアップローダーと管理会社(ニワンゴISP?)に対して、他のメーカーと共同訴訟を起こす考えもある、と。

後者の「管理会社」が何を指すのかよくわからないのだけれども、同様の被害に悩んでいるメーカーもいるので、共同訴訟を呼びかけていると言うところだろうか。確かに、規模の小さい会社が単体でやろうとしても限界があり、共同訴訟でなければ動きにくいというのもあるんだろう。

刑事事件化するのかは、正直よくわからない。既にオンライン上の著作権侵害の問題は、捜査当局のリソースを遙かに超えるほどに大きく、告訴したからといって必ずしも逮捕、起訴に至るとは考えにくい。その辺りは既に、著作権団体と警察と間で何かしらの調整がなされているだろうから、ノウハウを持っているところに協力を仰げるとよいのかもね。関係各所ってのはそういうところなのかしら。

また、訴訟に発展する可能性があるのでこれ以上の情報は一切出さない、とも。うーん、訴訟提起くらいはアナウンスしてもよさそうなものだけど…。

件のゲームと問題のプレイ動画はどんななの?

タイトルは「relations sister×sister.」、価格9,240円(税込)、ジャンルはコマンド選択式恋愛アドベンチャー(18禁)で、今年4月28日に発売されたばかり。同メーカーとしては初のタイトル。

同タイトルのプレイ動画は、OP動画等を除き、2011年05月07日17:58にアップロードされた1本のみ。そらくこれが問題のプレイ動画なのだろう。実況スタイルではなく、キャラクターの会話をすべて拾うかたちでプレイ動画を淡々と流している。メーカー曰く「製品版」とのこと。2011年5月10日午後3時過ぎの時点では、再生数345。その後、ニュースブログ等に取り上げられたためか、5月11日午前0時頃には再生数は1万を超えた。ITmediaの11日14時29分付の記事では投稿者により削除された、とのこと。権利者削除というかたちにはならなかったみたい。

10日午後5時頃のキャプチャ 既に今回の件についてのコメントがちらほら(再生数は501)

雑感

今回の件を売名だっていう人もあるけど、リスクやコストを考えたら全然見合うものじゃないと思うよ。どっちかというと、プレイ動画、実況動画に対する憤りがあって、ようやくリリースした自社の製品も同じ目に遭ってしまった、その怒りが原動力になってるんじゃないかな。

ユーザにとっては無数にある選択肢の1つでも、作り手にとっては何ヶ月も、何年もかかりきりになってようやく完成した作品だったりもするし、場合によっては経営的な面で唯一の命綱だということもある。

やる方は気楽にやっていても、やられる方にとってはいろんなものがかかっていることをお忘れなく。

プレイ動画に関するゲーム業界・関係者からのこれまでの反応

ユーザによるプレイ動画の勝手アップロードは今に始まった問題ではなく、これまでずっとくすぶってきた。ということで、ゲーム業界からのプレイ動画関連の発言や反応を以下に。あくまでも一部に過ぎないけどね。

ビジュアルアーツ*1 馬場社長

ニコ生での実況が多いとか。お客さんからは法的措置を強く求める声も。Mon Jun 28 14:39:26 via sobees

VAはそんな面倒ことしないだろう、という安易な思い込みは禁物だよ。私はクリエイターに泣きつかれたら、断固やる。ブランドさんがやってくれと言ってこられたら、やらざるを得ない。それが私の責務だからね。Mon Jun 28 14:49:31 via sobees

IPはニコ動さんが把握されてるし、ウチはニコ動さんとも取引あるのでやろうと思えばいつでもできるわけだけど、やってる人はそういうリスクをわかってやってるのですか? とても信じられない。Mon Jun 28 14:46:37 via sobees

確認するまでもないですね。苦労して作ったゲームを無料で公開されることを望むはずも無しRT @tenjyou_rio: @vavasyatyou ニコ生で著作権もやぶった上注意したにも関わらずやりつづけてVAにメールで確認してからじゃないとやめないとか言ってるの何とかしてほしいですMon Jun 28 15:11:19 via sobees

また、体験版の動画については、理屈ではOKだがさまざまな問題は残る、プレイ動画の配信については、権利者からの許諾を得れば問題はない、とのこと。

ALcot*2 宮蔵さん 空下元さん

動画投稿サイトの話がでたので、少し皆様にもご意見を伺いたいのですが、実況系は発売後時間が経ったものなら条件付きで許諾するのも有りなのかなぁ、と思うところがあります。皆さん実況系の動画についてどうお考えか聞かせてください。ちなみに、丸上げプレイ動画は今後もNG予定です。念のためwWed Oct 20 06:37:08 via ついっぷる/twipple

丸上げの定義は、素材(元ゲームの映像)に対し、UP主の感想や実況等も入っておらず、淡々とゲームの映像を流す映像を指します。ちなみに、みや速にUPした時にもありますが、体験版は無償公開されているので、丸上げしても問題ないと考えております。Wed Oct 20 06:56:28 via ついっぷる/twipple

@miyazo >実況動画 (本編丸上げは当然NGとして)個人的には、発売から数年経ったゲームの実況系って、中古市場が儲かるだけだと思ってるので意味ないかと。もちろん新作の実況は新作ってだけでNG。興味を持たせるためなら体験版がある(そのための体験版)Wed Oct 20 07:57:07 via web

@miyazo あ、MADは2次創作なんでありだと思います(むしろ、そういうので興味もって本編やってほしい)BGMや歌の丸上げはNG。アレンジも2次創作かなぁ(あくまで個人的な意見ってことで)Wed Oct 20 07:59:32 via web

ニコニコ動画へのアンケートの件ありがとうございました。乱暴ですが纏めると、一部を除き、否定派が殆ど、という形で、体験版動画はさておき、認めるべきではない、というご意見が多数でした。Wed Oct 20 13:02:53 via ついっぷる/twipple

私的に悩んでいたのは、動画をみつつコメント出来る、というニコニコ動画の特性に着目したもので、コメントをつけあうことでユーザーさんの間で意識の共有をしてもらったり、まだまだ知名度的に未熟なALcotというブランドを知って貰うことが出来るのではないか? という所でした。Wed Oct 20 13:06:12 via ついっぷる/twipple

ですが、色々とまだまだ難しい面も多く、やっぱり難しいですね。とりあえず当面は実況を含め動画のUPは禁止の方向で動こうと思います。ご協力ありがとうございました。Wed Oct 20 13:09:37 via ついっぷる/twipple

ユーザサイドからの反応は賛否両論ではあったが、否定的な意見、賛成であっても慎重な意見が多く、体験版を除く実況系動画の許諾は見合わせという結論に至った。否定的意見としては、単にニコ動ユーザが嫌いなんだろうなぁというものから、購入者として不愉快、メーカーとしてメリットがない、デメリットがある(動画だけで満足してしまうのでは?)、よいものと悪いものの線引き(とそのチェック)が難しい、など。
空下元さんは、プレイ・実況動画やBGM、歌のアップロードはナシだけど、MADはアリという考え。「趣味はTRPGニコニコ動画」というだけあって、自身の体験の中からMADは一定のメリットがあると思っているのかしら。あと、「発売から数年経ったゲームの実況系って、中古市場が儲かるだけ」というのは、「(好意的に解釈しても)」という前提置いた上での発言かもしれないが、ゲームのダウンロード配信が進む中では、一定の意味を持つのかもしれない。ほぼ動きのなくなった過去のタイトルであっても、MADであれ実況であれ新たな価値が付与されることで、再び息を吹き返すこともありうる。とはいえ、ゲームの内容によるかな…。ブランド強化やコミュニティの活性化に繋がることもありうるけど、実際どうなのかはわからない。

体験版のプレイ動画の投稿については、他のアダルトゲームブランドでも割と許諾(?)されているようだ。一例として、エスクード Escu:de)の規約を。

< 動画配信について >
当社が著作権を持つソフトウェアのプレイ動画および、音源を無断使用された動画配信の許諾は原則的に行っておりません。 著作物に関する公衆送信権は有限会社エレメントのみが有しており、MADと言われる動画や実況という形式をとっていたとしても、著作物を無断で使用している点において許諾しておりません。
ただし、体験版や販促動画に関しては、宣伝を主とする素材物という観点から、 非営利かつブランドの価値を毀損しない場合に限り、配信の差し止めを行わない事としております。
楽曲の耳コピーやアレンジ等、二次創作と判断される場合も同様です。

著作物について - エスクードオフィシャルホームページ

プレイ・実況動画、音源の使用、MADは原則不許可、ただし体験版や販促動画、二次創作は非営利かつブランドの価値を損ねない限り、見逃しますよ、というところかな。

ソラ代表 桜井政博さん

HAL研時代に『星のカービィ』を手がけたことから、「カービィの生みの親」ともいわれ、現在は3DS用ソフト『新・光神話 パルテナの鏡』のディレクターをつとめる桜井さん。ゲーム画面のキャプチャに関する話題から…

こちらに都合のよい解釈だけで考えるわけにもいかないですもんね。ネタバレや公序良俗に反することがなく、宣伝として望ましいものなら、メーカーは歓迎するかもしれない。だけど、何が望ましいものなのかはメーカーでないとわからない。黙認していても、実はイヤかもしれない。Tue Nov 16 06:21:08 via Saezuri

たぶんこういう話は、厳密に裏を取れば取るほど、禁止の方向になっていくのでしょう。本質はそこではないのは明らかだけど、想定外の場合を考慮し、最大限にセーフティがかかる方面になるもの。法務などに詳しい人、いかがでしょう?Tue Nov 16 06:22:06 via Saezuri

ここからゲーム実況等、プレイ動画の話へ。

法的なことを除く感情では、視聴者全員がエンディングまで遊んだのなら良いと思いますけど。最初の驚きを奪うのは反対。 RT @oka_mochiko: 桜井さんは、ニコニコ動画等にアップされている「ゲーム実況プレイ動画」について歓迎されてますか?あまり好ましくないと思われてますか?Tue Nov 16 12:23:32 via Saezuri

ただひとつだけ…。発売日早々、最後の展開などの動画をアップする輩は滅びればいいのに、と思う。『ゴーストトリック』など、シナリオが肝のゲームで平然とやられていることを思うと、人ごとではなく落ち込む。Tue Nov 16 16:00:24 via Saezuri

スタッフはおそらく何年もかけて、お客さんに驚きを見せようと頑張っているハズ。しかし小さな愉悦のために、お客さんが作品から受ける感情を激減させる。こうした現象が横行すると、もうRPGやアクションなども含め、シナリオ重視のゲームは作れないのでは、とさえ思う…。Tue Nov 16 16:02:02 via Saezuri

私のゲームはプレイヤーの遊びかたで大きく表情を変えるからまだマシ。だけど『スマブラX』でさえ、隠れキャラとか『亜空の使者』のムービーとかあるもの。隠れキャラに何が出るかわからない状態で挑戦者が現れるの、最高に興奮するんだけどなあ。Tue Nov 16 16:05:47 via Saezuri

封切りの楽しみは、人生でたった1回だけ…。それが一生忘れられなくなる心の作品であろうとも。Tue Nov 16 16:07:35 via Saezuri

桜井さんは、プレイ動画だけではなく、ネット上の書き込みも含め、プレイヤーの最初の驚きを奪う行為は許しがたい、という。シナリオが肝となるゲームですら、最後の展開まで投稿されてしまうことへの憤りもさることながら、その他のゲームでも隠しキャラなど作り手は「驚き」を用意している、それが失われることへの残念さをにじませてもいる。

作り手側として、法的な部分は当然のこととして、感情的な部分でも認められない、という強い否定のスタンスだと感じた。作り手としても、そしておそらくいちゲーマーとしても、この状況を憂えているように思える。

岸田メルさん(イラストレーター)

PS3用ソフト『ロロナのアトリエ〜アーランドの錬金術士〜』などアトリエシリーズの「アーランドシリーズ」のキャラクターデザインを手がけた岸田メルさん。どちらかというと、一ネットユーザとして「ゲームの生配信とか実況とかどうなのよ?」というTweet。

ゲームの生放送やってる人、作り手は買って遊んでもらうために作ってるんだから、罪悪感みたいなのをなくしちゃだめだよ。みんな見て見ぬフリしてるだけなんだから。Mon Mar 28 15:59:53 via Tween

実況もね。Mon Mar 28 16:02:00 via Tween

せめて恥じらいを持ってこっそりやってください!Mon Mar 28 16:04:13 via Tween

いや、そういうことじゃないっす。作り手の思いを考えて下さいということです。堂々としないで下さいってことです。 RT @Filia_Ped: mellco 各種プレイ動画による影響はトータルでゲーム売り上げにマイナスに働く、がやっぱり最終的な統一見解なんでしょうか?Mon Mar 28 16:06:19 via Tween

@tekokiring 権利者がダメと言ったらダメなんですが、それは聞かないとわからないので、わからないことは堂々とやっちゃだめですということです。Mon Mar 28 16:10:20 via Tween

@ganjinn 1、不特定多数の目に触れる配信は友人宅でのプレイとは本質的に違います。 2、売り上げの問題ではなく、無断配信をする権利は基本的には消費者にはないのです。それを自覚した上でみんなで楽しんで下さい。Mon Mar 28 16:34:03 via Tween

そもそもやっていいものでもないんだし、やるにしてもせめて仁義を守ってはいかがか、明示的なルールを破っていることに自覚的であるべきではないか、というところか。

任天堂 岩田社長

2010年6月29日 定期株主総会にて。プレイ動画そのものについて問われたものではないが、それも含めた回答だと思う。

Q14:基本戦略の「ゲーム人口の拡大」と関連して、ファン活動と知的財産の扱いについて伺いたい。近年、任天堂のタイトルを題材にした同人漫画やオリジナルショートムービー、バンド、コスプレ、ウェブサイト、オーケストラなどが活発だが、こういう知的財産、ライセンスを脅かす恐れがある場合は積極的に取り締まるのか、それともファンの活動であるということでそのまま見守るのか。何か方針があればお聞かせ願いたい。
A14 岩田:まず、今のお話は非常に判断が難しい側面を持っています。知的財産を脅かす行為をあらゆる面で黙認しますとは、当然申し上げられませんし、一方で当社に好意を持っていただいて何かしただけで、まるで「任天堂は自分を犯罪者扱いするのか」というような対応もまた不適切かと思います。表現の中には、私どもの知的財産の品格をおとしめるような明らかに度を越えたものや、あるいは事実と異なるものと組み合わせてその知的財産の世界観を破壊してしまうようなものも当然ありうるわけです。社会との中で折り合いがつき、私どもの知的財産の品格や価値がおとしめられない表現かどうかというのが、一つの判断点かと思います。ただ、判断が非常に微妙な要素も持っておりますので、一律にこういう線を持って私どもはこの場合はこうしてこの場合はこうしますということは申し上げにくいです。
 そういう意味では、すべての点でこのことについてオーケーですとは当然申し上げられませんし、どんな小さなものでも、ものすごい勢いで対応できるかというとそれはまた現実的ではないと思うんですね。[…]ここは任天堂の知的財産の価値や品格を傷つけているのではないかということを感じられたお客様が当社の側に何らかの形でコンタクトをする窓口をはっきりさせることによって、[…]任天堂がその後適切な措置をとるという方向を探らねばならないなと思いますので、そのような対応をこれから考えたいと思います。

2010年6月29日(火)第70期 定時株主総会 質疑応答

ここでは、知財権に関わるファンアクティビティの評価ではなく、知財権を侵害しうるファンアクティビティへの対処の基準ないし優先順位について回答されている。

アトラス 『キャサリン

【キャサリンネタバレに関して】動画掲載サイト及び生放送動画等での、終盤ネタバレ動画公開の自粛を謹んでお願いします。また発売日前の動画公開は全編に渡り固く禁止させていただきます。一人でも多くの方にゲームを楽しんでいただけるよう、ご理解とご協力をお願いします #cathy_atlusTue Feb 15 09:21:35 via web

公式ウェブサイトにも「ネタバレに関して」という公式ブログへのリンクを設置し、発売日前の動画投稿・配信の禁止および、終盤ネタバレ動画投稿の自粛を呼びかけている。

サイバーフロントCivilization IV』

昨日10月1日より『ニコニコ動画』が新バージョンの『ニコニコ動画(秋)』に切り替わりましたが、ゲームメーカーの株式会社サイバーフロントが広告枠でユーザーにお礼と新作の告知をしていました。

 「いつもシヴィライゼーションをご支援いただきまして誠にありがとうございます。皆様が投稿されました動画を拝見する度、感謝の気持ちで一杯でした。この場をお借りして、改めましてお礼を述べさせていただきます。本当にありがとうございました」と嬉しい言葉が書かれています。

サイバーフロントがニコニコ動画でユーザーにお礼と新作の告知 | デジタルマガジン

Civilization IV』は、文明の勃興をモチーフにした歴史シミュレーション、ターン制ストラテジーゲーム。2005年の発売以降*3、未だに強い人気を誇る。

ニコニコ動画では、2chでおなじみのキャラクターが掛け合いつつ初心者向け解説を行うつー助教授のチュートリアル的動画*4シリーズ未経験者にもお薦め「Civilization4」プレイ講座)や、スパイ経済の人ことスパ帝が最高難易度で特定の条件で勝利を目指すネタの廃人動画(Civilization4 大商人経済)、マルチプレイでの戦いを、3人のプレイヤーの実況を編集し、マルチでの駆け引きをそれぞれの視点で楽しめる動画(Civマルチ Y対E対C 地獄 三元配信)などの人気シリーズを始め、たくさんの動画が投稿されている。

ローカライズ版販売元のサイバーフロントがお礼の広告を打ったのも、これらの動画が視聴者に購入を促した、コミュニティを活性化してくれたためだろう。最近ではDLC配信も当たり前のようになってきているし、購入後もコミュニティを活発にするのも戦略上必要なんだろうね。

これらの動画がメーカーにとってもよい方向に働いたのは、civ4が元々廃人育成ゲームの1つといわれるほどに中毒性が高く、既に一部で高い人気を博していたためでもある。そういう話を耳にはしたが、どういうゲームかよくわからないという人にとって、プレイ動画はゲームプレイの価値を毀損することなく、その魅力をわかりやすく伝え、自分もプレイしてみたい、コミュニティに参加したいと思わせるものとなったのだろう。

つー助教授はciv4に続き、Simcity4チュートリアル的動画シリーズを投稿している。Simcity4のプレイ動画もニコニコ動画では人気で、2003年発売と相当前の作品ながらもプレイヤーを増やし続けている。

EA Sports 『Tiger Woods PGA Tour 08』

こちらはこれまでのとはちょっと毛色が異なるかな。『Tiger Woods PGA Tour 08』というゴルフゲームに、水上でショット(ジーザス・ショット)ができるというバグがあり、それを茶化した動画がアップロードされた。

それから1年、EA Sportsは『Tiger Woods PGA TOUR 09』発売を前に、上記ビデオの投稿者宛にこんなビデオを投稿した。

「あれはバグじゃありません、タイガー・ウッズが凄すぎるんです」というところ。元々ちょっと笑える程度の、大して害のない*5動画だったということもあってか、それをうまいことキャンペーンに利用している。

プレイ動画という点では同じでも、スポーツゲームで、他愛のないクリップだという点では、『丸上げ』とは全く異なるけどね。

スタジオえどふみ(プロゲーム実況者)

ニコニコ動画でゲーム実況動画を投稿していたえどさん"こと江戸清仁さんと、ふみいちこと近藤史一さんのユニット「えどさん”&ふみいち」は、プロの実況プレイヤーとして2009年より活動している。

プロとはどういうことかというと…

まずゲームメーカーが、「新作ゲームの宣伝を安価かつ効果的に行いたい」、または「旧作ゲームの新しい楽しみ方を知ってもらいたい」という目的で、スタジオえどふみに自社の実況プレイ動画の制作を発注します。

えどふみの両者はこれに応えて動画を制作し、雑誌やWebサイトなどのゲーム媒体へ動画を納品。媒体側は自サイトのコンテンツとして動画を掲載するというわけです。

【レポート】ニコ動発"ゲーム実況"がビジネスになるとか! - 実況プレイヤー・えどさん”&ふみいちがプロ転向 (1) ビジネスモデルはどうなってんの? | マイコミジャーナル

メーカーの許諾を受けているのは当然として、クライアントの要望を叶える動画を作成し、ウェブ媒体等に納品する。なかなか大変そうではあるが、スタジオえどふみとして未だ活動を続けているところから察するに、未だ需要はあるのかな。(ニコニコゲーム実況チャンネル by Peace

公認実況動画ということではあるけれども、メーカーから実況者に金銭的な授受があり、マーケティングの一環として行われているという点では、上記の文脈のお話とはまた別のケースか。お金払って実況動画作ってもらうくらいなら、彼らよりももっと再生数稼いでる人もいるんだから、そういう人に自由に使わせればいいじゃん、という意見も見かけたが、趣味で製作するフリーダムなプレイ・実況動画と、仕事として依頼されてその制約の中で製作したプレイ・実況動画とでは全く異なると思うよ。

ゲーマーとプレイ動画

米国のゲーマーを対象にした2009年の調査では、「ゲームに関するオンラインコンテンツで、あなたの購買に影響を与えるものは?」との質問に、かなりの割合でプレイ動画という回答が寄せられている。

 調査対象は「週7時間以上ゲームで遊ぶ、13歳から35歳のゲームユーザー」で、データによると「ゲームに関するオンラインコンテンツで、あなたの購買に影響を与えるものは?」との質問に対し、55%のユーザーが「体験版」を「もっとも参考になる」と回答。以下、2位に「プレイ動画」(47%)、3位に「トレーラー(予告)映像」(37%)と続きます。一方で「プレミアムコンテンツ」「ポッドキャスト」「壁紙ダウンロード」などは、購買への影響力という点では弱いとのこと。

日々是遊戯:ゲーマーがもっとも参考にするのは、1位「体験版」、2位「プレイ動画」 - ITmedia Gamez

これについて、調査を行ったBLITZ Digital Studioは、以下のように分析。

「熱心なゲームプレーヤーはできるだけ早くゲームの情報を得たいと考えており、それが体験版を通じてのものか、それとも誰かのプレイ動画を通じてのものかはその際あまり関係ありません。マーケティング担当者はしばしば、見栄えのいい場面しか公開しなかったり、プレイ動画自体を公開しなかったりといった失敗をしますが、最近では動画の撮影が容易になったこともあり、ユーザーの動画がこれらの失敗を補っています」

確かに私も気になったゲーム、購入を予定しているゲームの実際のプレイ動画を見たいと思うことはある。指摘の通り、トレーラーは美麗なのだけれども、気になるところまで、例えばメニュー(画面)のシームレスさ、場面遷移時の読み込み時間など、実際のゲームの操作感などまではわからないものもしばしば。そういうときには、ゲームを実際にある程度の流れでプレイしている動画などがYouTubeにあると助かる。

ただ、購入の際に役立つプレイ動画の多くは、上記でいわれているところの「丸上げ」ではなく、実際にプレイしたときの感じが掴める程度の、レビュー的なプレイ動画だとは思う。

また、この調査でいうプレイ動画は必ずしもユーザ生成のものとは限らないようにも思える。たとえばGameTrailers.comのレビュー動画。レビューということもあってか、さまざまなポイントを詰め込んでいるため、普通にゲームをしてみたときの感じまではわかりにくくもあるが、トレーラーだけでは掴みにくい細かいところまで知ることができる。

チャレンジ

ゲームプレイ動画といっても、全編通して投稿する丸上げ的な動画もあれば、特定の部分のみを切り取ったネタばれ的な動画、ゲームの感じがつかめる程度のレビュー動画、解説を交えたチュートリアル/やりこみ型の動画、ゲームをほぼ素材として使用するMAD動画などさまざまある。

また、プレイ動画に対する反応を見ると、特に否定的な意見が多い。想定しうるリスクやデメリットが数多く存在し、現在の状況はそれを打ち消すというよりは、そうした懸念を補強しているところもある。特に、丸あげ、ネタバレを含む動画に対する懸念が強い。

リスクやデメリットの一方で、何がしかのメリットはあるのかもしれないが、それらは大抵結果論として見いだせる類いのもので、かなりの不確実性を伴う。CGMの無軌道さを考えると、仕方のないことではあるのだろうが、事後的にしか良し悪しを判断できない状況では、メーカー側としても事前の許諾には二の足を踏まざるをえない。

個人的には、ゲームプレイ動画や実況動画は興味深いと思っている。ますますソーシャルに向かうオンライン環境においては、ゲームに関わるコミュニケーションの1つのかたちではないかと思う。環境に適したコミュニケーションの重要性は、今に始まったことではなく、これからも変わることはない。それはときとして、サバイバルを左右するものとなりうる。

不確実なメリットと、目に付くデメリットやリスクがある中で、何がなんでも許容すべきだという「べき論」に持っていくつもりはないし、今のままで許

*1:多数のアダルトゲームブランド等を要するソフトウェア会社

*2:アダルトゲームブランド

*3:civ5が発売された現在でさえ

*4:初出は2007年11月、その後削除されたが現在は別のユーザがアップロードしている

*5:致命的なバグではない、ちょっと笑える裏技程度のもの

コンピュータエンターテイメント協会の『上げ底調査』にもの申す:「違法コピー対策が急務」って言いたいだけちゃうんかと

毎日jpにて「家庭用ゲーム実態調査:違法コピーやダウンロード1割超」というタイトルの記事を見かけた。

ゲームソフトの違法コピーや違法ダウンロードについて、「周囲で見かける」と答えた人の割合が携帯ゲーム機で17.4%、据え置き型ゲーム機では10.1%にも及ぶことがこのほど、ゲーム業界団体のコンピュータエンターテインメント協会CESA)が発刊した「2011 CESA一般生活者調査報告書」で明らかになった。

家庭用ゲーム実態調査:違法コピーやダウンロード1割超 - 毎日jp

違法コピー率が「携帯ゲーム機で17.4%、据え置き型ゲーム機では10.1%」だとしたら、そこそこ多いなと思うんだけど、「周囲で見かける」割合がそうだと言われても、多いのか少ないのか、そもそも「周囲で見かける」ことが何を意味しているのか、いろんなことがわからな過ぎて困る。

とりあえず、結論から先に書くと、どう見てもミスリード狙いの上げ底調査です、本当にありがとうございました。

調査の概要

とりあえず、調査の概要について調べてみることに。調査を行ったコンピュータエンターテインメント協会CESA)のプレスリリースによると、この調査は「首都圏・京阪神・その他の地域に在住する3〜79才の一般生活者」(有効回収数1,130サンプル)を対象に、その結果を「全人口へ拡大推計した」もの。『2011CESA一般生活者調査報告書』に掲載されている調査とのことなので、それ以上の詳細については、実際に購入するなりして確認するしかなさそう。

次に、問題の調査項目について。なんでこんな訳のわからない聞き方をしているんだろう?

◎「周囲における違法コピー・違法ダウンロード」の存在予測、携帯型ゲーム機では17.4%、据え置き型ゲーム機では10.1%の割合で見かけると回答。

昨今深刻な社会問題となっている「違法コピー・違法ダウンロード」について、正確な利用実態が把握しづらいという特徴が挙げられます。そこで韓国で実施している調査手法を応用し、「周囲の違法利用」という評価 で一般生活者全体(1,130サンプル)に客観評価してもらいました。その結果、携帯型ゲーム機では17.4% の割合で、据え置き型ゲーム機では10.1%の割合で「周囲に違法コピー・違法ダウンロードをしている人を 見かける」との回答を得ました。本結果を踏まえ、今後の対策が急務であると考えられます。

CESA ゲーム関連調査報告書

要するに、違法コピー、違法ダウンロードの実態は把握しにくいので、「周囲の違法利用」という項目で聞いてみました、韓国でも実施している手法(を応用したもの)なので大丈夫です、という感じかな。韓国でやっているからと言って、その手法が妥当かどうかの判断するにはなんの足しにもならないのだが、それはさておきこの調査が明らかにしていることはなんなのかを、もう少し考えてみよう。

勘違いしてはならないのは、決して違法コピー、違法ダウンロードしている人の割合が、携帯ゲーム機で17.4%、据え置きゲーム機で10.4%というわけではない、ということ。

あなたの周囲に男性はいますか?

すごく極端な例。「あなたの周囲に男性はいますか?」という質問をしたとする。周囲には、家族、職場、学校、友人等を含むことにする。おそらく、「周囲に男性を見かける」と答える人の割合は、ほぼ100%になるだろう。でも、それは日本人に占める男性の割合が、ほぼ100%であることを意味しない。だって、「男性」を「女性」に変えて質問しても、ほぼ100%になるんだから。

男性と女性の比率は、だいたい50%*1。少なくとも、それくらいあれば、「周囲に○○な人はいますか?」と言う質問に「はい」と答える人の割合はほぼ100%になる。

というように、実際の割合と「周囲にいる人」の割合とでは、直感的に結びつけることの難しい、大きな乖離があると考えた方が良い。

実際の割合と周囲にいる割合

周囲に○○な人がいる可能性は、その人の持つ「対人ネットワークの大きさ(『周囲』の広さ)」と○○な人の実際の割合に依存する。

シンプルな例。私に20人の友人・知人がいて、Twitterの一般的な利用率が5%だったとする。その場合、私にTwitterユーザの友人・知人がいる可能性は100%。誰か1人はTwitterユーザということ確率(1-0.95^20)は64.2%。。

ではTwitterの利用率が1%だったとしたらどうだろうか。その場合、私にTwitterユーザの友人・知人がいる可能性は20%になる確率(1-0.99^20)は18.2%。

さらに、私に友人・知人が100人いたらどうだろうか。Twitterの利用率が5%の場合、Twitterユーザの友人・知人がいる確率(1-0.95^100)は99.4%。1%の場合でも、Twitterユーザの友人・知人がいる確率(1-0.99^100)は63.4%。

○○な人の実際の割合は不変であると仮定しても、対人ネットワークの大きさによって「○○な人が周囲にいる」可能性は大きく変化する。

CESAの調査で「携帯型ゲーム機では17.4% の割合で、据え置き型ゲーム機では10.1%の割合で『周囲に違法コピー・違法ダウンロードをしている人を見かける』との回答」が得られた、という結果も、こうした背景を加味して考えなければならない。「周囲の違法利用」率と「違法利用」率はイコールではないし、後者は前者に比べてかなり少ないと考えられる。

結局、回答者の持つ対人ネットワークの大きさ(周囲の広さ)が曖昧なままでは、本当に知りたいはずの「違法ダウンロード/違法コピー率」も結局わからないまま、となる。

なんでこんなめんどくさいことを?

少なくともプレスリリースでは、「違法コピー・違法ダウンロード」は「正確な利用実態が把握しづらい」とされている。考えられる理由としては、「違法利用してますか?」と直接聞くと、実際にそうしていたとしてもウソの回答をする(社会的に望ましくない行為を正直に答えない)から、というところか。

それもわかるんだけれども、回答者の匿名性を保証し、正直に回答できる環境を整えて、その上で「回答者本人の違法利用」について回答を求めるのがまっとうなやり方ではないかな。もちろん、それでも回答に偏りが出ることも考えられるけど、バイアスがかかりやすい項目であることに留意しつつ、結果を報告したっていいわけで。

でもそれができなかったのは、「本結果を踏まえ、今後の対策が急務であると考えられます。」という文言を載せることが、最初から決まっていたからじゃないのかな。邪推かもしれないけれど、インパクトのない数値やしょぼい数値では「ゲーム業界やばいんです!早期に対策を!」と求めるための根拠としては弱い、上げ底調査でもいいからインパクトのある数字を出せ、というところかも。もちろん、ゴシップ紙のように鼻息荒くインパクトを求めるという感じではないのだろうけれども、それなりの数字じゃないとまずいよなぁ、というプレッシャーはあっただろう。(そもそも日本の人口全体を母集団に設定してる時点で、インパクトのある数字なんて出せるわけないんだけどね。)

そんな政治的意図を背景にして、ミスリードしやすそうな項目が選ばれたんじゃないのかなと。毎日jpも本文では「『周囲で見かける』と答えた人の割合」だとはしているものの、「家庭用ゲーム実態調査:違法コピーやダウンロード1割超」なんてタイトルつけてるくらいだしね。完全にミスリードです。

また、直感的なわかりにくさも相まってか、この報道を見た人たちからも「割れ厨1割もいんのか」といった反応もちらほら。完全にミスリードされてます。

結局、この調査で何がわかったの?

正直なところ、何もわかってないに等しいのでは…?「本結果を踏まえ、今後の対策が急務であると考えられます。」と主張されているものの、何をどう踏まえれば対策が急務なのかもよくわからない。

本当に知りたかったのは、「正確な違法コピー・違法ダウンロードの実態」のはず。頭から「正確な利用実態が把握しづらい」と言い訳しておいて、「曖昧な利用実態を把握」することに何の意味があるのだろうか。

*1:実際には女性の方がやや多い

米Amazon MP3、ヒットシングルを1曲56円にディスカウント!何を狙ってるんだろうね

Gizmodoが米Amazon MP3のヒットシングル・ディスカウントの話題を取り上げているのだけれども、ちょっと気になる点があるので、ちょこっと書いてみる。

Amazon MP3ストアでは人気の楽曲の値段が従来の89セントから20セント安くなり、1曲69セント(約56円!)になりました。

さらにアマゾンでは1500ものアルバムを5ドル(約406円)で期間限定販売しています。

明らかにアップル対抗にしか見えません。アップルはメジャーな楽曲は1.29ドル(105円)で販売しています。

これはもう、iTunesではなくてアマゾンで音楽を買う日がやってきたという感じですね。

米アマゾンのMP3ストアでは1曲56円で曲が購入できるように : ギズモード・ジャパン

これは元ネタのLA Timesの記事「Price war! Amazon launches 69-cent MP3 store for top-selling tunes」の論調をそのまま引っ張ってきたというところなのかな。

米AmazonMP3が0.69ドル・ディスカウントを開始したのは、ケイティ・ペリーE.T. feat. Kanye West』、ジェニファー・ロペス『On The Floor』、レディ・ガガ『Born This Way』、ブラック・アイド・ピーズ『Just Can't Get Enough』、リアーナ『S&M』など、人気ヒットシングル204曲iTunes Storeではほとんどが1.29ドルで配信されている曲だとか。

LA Timesの話の筋としては、音楽配信市場のマーケットシェアは、iTSが70%なのに対し、第2位のAmazon MP3はわずか10%、Amazonは何とか挽回していこうとしている、Appleは2009年から人気のシングルを0.99ドルから1.29ドルに事実上の値上げを行った(正確に言うと、レーベルが0.69ドル、0.99ドル、1.29ドルから選べるようになった)が、2009年まで配信回数を伸ばし続けてきた音楽配信市場は、2010年にはわずか1%の成長率*1とあった、Amazon MP3の値下げがAmazonとレーベルのどちらが主導したものなのかはわからないし、値下げによってロイヤル・カスタマーを生み出すのか、安売りに飛びつくチェリーピッカーを呼ぶだけなのかもわからない、ただ、重要なのは69セントで楽曲を売れるかどうかではなく、音楽ダウンロードに年間平均46ドルを費やす平均的なリスナーに69ドル使ってもらえるかである、そしてこの価格競争の勝者は、誰あろう音楽の購入者だ、というところ。

そういう見方もあるのかもしれないなぁとは思う一方で、音楽配信市場の成長率の鈍化については、市場の成熟、一段落(あとはゆるゆると推移していく)という見方が強いように思う。シングルの配信回数こそ頭打ちになってきたとしても、セールスでは2010年は8%増で値上げによって利益は増えている。裏を返せば、購入者も値上げを許容している、とも取れる。

レーベルにとって、音楽配信の価格の柔軟性は、1つの悲願であったところもあるし、それによって利益を増やしている現在、デジタル配信ユーザの掘り起こしや更なる活性化を求めて、あえて価格競争に突っ込んでいくというのも考えがたい。

IFPIが現状の音楽配信の更なる拡張ではなく、RhapsodyやSpotify、Rdioなどの比較的新しいサブスクリプション・サービスをフィーチャーしたのも、オプションとして次のブースターになり得るという期待をもっているからだと思う。

というか、そもそも同じ曲なのにAmazon MP3とiTunes Storeで価格差がある時点で、レーベル都合と言うよりは、ストア側の都合だよね。値下げしてメリットがあるなら、Amazon MP3でもiTunes Storeでも値下げできるわけだし、あえてレーベルが片方だけを値下げする理由は、Appleの支配力を削ぎたいってくらいしか思いつかないな。たとえそうであっても、やっぱり価格戦争ではなくて、プラットフォーム戦争ということになる。

じゃあ狙いは何なのさ

個人的には、Amazon MP3が主導してディスカウントしてるんじゃないかと思っていて。Billboard.bizによれば、Amazonは通常レートの支払いさえすれば、独断でディスカウントできるとのこと。利益なし、場合によっては売れれば売れるほど損をするのかもしれないけれども、それでも何かしらのメリットがあるんだろう。Amazon MP3のてこ入れという線もあるけど、おそらく、その目的はAmazon Cloud Drive潜在的なユーザを増やすことにあるんじゃないのかなと。

ripple_zzz これって対アップルじゃなくて対音楽業界でしょ。要はクラウドプレーヤーでの交渉戦で制空権取ろうって感じ。

はてなブックマーク - ripple_zzzのブックマーク

id:ripple_zzzさんも、上記のGizmodoの記事のブクマコメントにて、これは価格戦争ではなくて、クラウドプレイヤーとしての布石だと指摘している。その点については同意なんだけど、狙いとしては対音楽業界というよりも、やはり対Apple、そして対Googleだと思う。

Amazonは先日、Amazon MP3で購入した楽曲や手持ちの楽曲をクラウドに置けるCould Driveというサービスをローンチした。これに対し、レコード産業からは、勝手にクラウドに置かせてアクセスさせるんじゃない、ちゃんとライセンス契約交わせ、とのお怒りのお言葉を頂戴している。こうした動きがあって、その牽制として今回のディスカウントがある、というのはなきにしもあらずだとは思うんだけど、重要度としては低いんじゃないかなと。

もっと重要なのは、同じ領域にAppleGoogleが進出しようとしていることではないかと。AmazonAppleGoogleというゴリアテが真っ正面から乗り込んでくるとなれば、ルールが定まるのは時間の問題でしかない。ルールが決まるのを待つにしても一悶着あるのは目に見えているし、どのようなルールになるにしてもすべてのプレイヤーがいずれそのルールに従わざるをえないのであれば、とっとと乗り出して、先行クラウド・コンテンツ・プレイヤーとしての優位性を確保しにいった方がいい。ルールはあとからついてくるってなもんで。

「たかだか音楽をウェブストレージに保存できるだけでしょ?そんな無理するほどのことかな」、と思われるかもしれない。クラウド・プレイヤーとしての優位性を確保することは、これからのデジタル・アクティビティの基盤になることを意味すると考えている。いずれ、音楽だけではなく、ありとあらゆるものが置かれ、デバイスやプラットフォームの別をこえ、さまざまな方法でアクセスできるようになっていくだろう*2

そこまでのものだからこそ、Amazonは先手をとったんじゃないかなと。

ちなみに…

Amazon Cloud Driveは、5GBのウェブストレージであれば無料、20GBで年間20ドル、50GBで年間50ドル…とかかっていくんだけど、Amazon MP3でアルバムを購入すると、無料5GBから20GBにアップグレードしてくれるキャンペーンなんかも展開している。期間は2011年12月31日まで。また、Amazon MP3で購入した楽曲については、このストレージ容量とは別に扱われるとのこと*3

余談:いま値下げは必要か?

ここまでいろいろ書いてきたけど、Billboard.bizもだいたい同じような論調。2009年のiTSの実質値上げ以降も収益は増大しているし、消費者からの反発もない、RIAAの「2010 Year-End Shipment Statistics(pdf)」を見ても、2010年にはボリューム(ダウンロード回数)こそ前年比2%の伸びに留まっているが、収益では12%増を記録している、という。

0.99ドルと1.29ドルのどちらが売れているか、という点に言及しているのも興味深い。1曲平均1.18ドルというところから、1.29ドルは全体の63%、0.99ドルは37%ではないかと推測している。値上げによる影響については、短期的利益をもたらすものの、長期的にはネガティブ、レコード産業にとってのAIGボーナス問題のようなもの、との批判の声もあるが、2011年第1四半期に入ってもシングルダウンロードは8.6%アップ、アルバムダウンロードは14.9%アップ(Nielsen SoundScanより)と、消費者からは現在も許容されている、CDの下落をカバーするとまではいかないが、一部の悲観論ほどは悪くないんじゃないか、としている。

私も同感で、消費者に手の届く範囲の価格設定であれば、手を伸ばしたいと思える作品である限り、購入されると思う。相場を安くすれば買ってくれるってわけじゃあない。逆に、高いから買わないってわけでもなくて、PC向け音楽配信利用者にとってはバカみたいに高く思える着うたフルだって、バカ売れしてたわけだしね。

もちろん、Steamのように時折ディスカウントを行い、手を伸ばしきれなかった人にもう一度アプローチするのはアリだと思う。動きの止まりかけた準新作や動きの止まっている旧作、新作リリースに伴う旧作の掘り起こしなど、いろいろやりようはある。ただ、その効果もそれなりの相場があってこそ。消費者としては短期的には安ければ安いほどいいのだけれども、それで潰れてしまっては元も子もない。

*1:SoundScanのデータ

*2:また、慎重に扱われなければならないものではあるが、ユーザがどんなファイルを持っているか、という情報を手にすることにもなる。

*3:同じコンテンツならアチコチにコピーする必要はない、ってところなのかもね。

インディペンデントクリエイターの資金調達を助けるKickstarter、2年で急成長を遂げる

ローンチから2周年を迎えたKickstarterが、自社ブログにて、この2年間の統計について公表しているよ、というお話。

Kickstarterは、クリエイターとファン・支援者とを繋ぐ、ソーシャルなマイクロ・ファンディング・プラットフォーム。クリエイターは、自身のプロジェクトを立ち上げ、同サイトのページでプレゼンテーションし、投資を募る。投資を申し出てくれた支援者やファンには、その額に応じた(金銭以外の)「何か」(特典)の提供を誓約する。目標調達額に到達すると、誓約は成立し、支援者/ファンからクリエイターに資金が提供され、その後、クリエイターからファンに資金に応じた「何か」が提供される。

インディペンデント・クリエイターにとって、プロジェクト実現のための資金調達は、たとえ回収の見込みがあったとしても、現実的には難しい。そこで、クリエイターとファンとを直接繋ぎ、プロジェクトの実現を支援させ、クリエイターもファンもハッピー、というのがこのKickstarter

そのKickstarterが、この度2周年を迎えた。同社はそれを記念(?)して、Kickstarterのこれまでの統計を公表してくれた。

(さっくり見たい方は、TechCrunchの記事「一般参加の出資サイトKickstarter, 2年で20000プロジェクトに$50Mを超える出資申し出あり」がオススメ)

月間誓約(Pledged)額 (April 2009 - March 2011)

まずは、月間のトータル誓約額のグラフです。このグラフは累積ではありません。(プロットされてはいませんが)4月の誓約額は3月以上となりそうです。

高解像度版

月間プロジェクト・ローンチ数 (April 2009 - March 2011)

開始されるプロジェクト数も同様に上昇しています。3月には2,000をこえるプロジェクトが開始されました。4月はさらに増えている見込みです。

高解像度版

誓約・回収額の合計

誓約額トータル: $53,107,672
回収額 (成功したプロジェクト): ~$40 million
非回収額 (成功しなかったプロジェクト): ~$7 million
進行中 (現在投資を受付中のプロジェクト): ~$6 million
回収率: ~85%

Kickstarterはオール・オア・ナッシング投資モデルにて運営されています。投資を受けるためには、どのプロジェクトも目標額に到達しなければなりません。以下の円グラフから、このモデルがうまく機能していることを示しています。

投資を申し込まれた5,300万ドルのうち、資金調達に成功したプロジェクトにより回収されたのが4,000万ドル、また、現在進行中のプロジェクト(現在、投資を受け付けているプロジェクト)が600万ドルとなっています。残る700万ドルは、回収されなかった金額となります。申し込みはあったものの、目標額に達しなかったプロジェクトです。

さらに、資金調達が終了したプロジェクトについてみてみましょう。投資を申し込まれた4,700万ドル(回収4,000万ドル + 非回収700万ドル)のうち、およそ85%の資金(4,000万ドル)が回収されました。この85%の回収率は、この2年間、ずっと安定しています。現在進行中のプロジェクトの600万ドルについても、この85%の回収率が予想されます。

それでは、Kickstarterプロジェクトの成功率を見てみることにしましょう。

プロジェクト統計

ローンチされたプロジェクト: 20,371
成功したプロジェクト: 7,496 (43%)
不成功のプロジェクト: 9,700
進行中のプロジェクト: 3,175

およそ43%のKickstarterプロジェクトが、資金調達に成功しています。プロジェクトの成功率は、40-45%の間で安定しています。この数字が「良い」のか「悪い」のかは判断しにくいのですが、私たちがKickstarterのコンセプトを練っていた段階では、5%くらいの成功率を見込んでいました。それを思うと、非常に良い兆候だと思います。

また、43%の成功率と、85%の回収率の違いについても注意しなければなりません。これは、誓約の大多数が成功したプロジェクトに向けられていることを意味しています。一方、目標額に到達しなかったプロジェクトのうち、21%は1度も投資を受けずに終わっています。

資金調達の成功に至る臨界点はどこにあるのでしょうか。1つ以上の誓約を得たプロジェクトは、成功の確率を52%へとジャンプアップさせます。しかし、資金調達がどの辺りまでいけば、プロジェクトの実現を確信できそうなのでしょう?

高解像度版

資金調達目標の30%に到達したプロジェクトでは、90%以上が成功しています。上記のグラフでは、線が緑色になるほど、プロジェクトの成功率が100%に近づいていることを意味しています。

ローンチした20,000のプロジェクトのうち、目標額の90%に達しながらも、不成功に終わったプロジェクトは、たった1つでした。

さて、次はカテゴリーごとの資金調達額を見てみることにしましょう。

高解像度版

映画が2,000万ドル近くにまで達し、群を抜いています。続く音楽は、1,300万ドルをこえています。13のカテゴリーのうち10のカテゴリーが、100万ドルを超えています。

カテゴリー別の誓約額
アート: $3,184,732
コミック: $943,118
ダンス: $645,492
デザイン: $3,601,851
ファッション: $554,048
映画: $19,717,790
食べ物: $1,583,063
ゲーム: $1,052,557
音楽: $13,094,547
写真: $1,679,361
出版: $2,732,501
テクノロジー: $1,748,109
劇場: $2,570,503

映画と音楽があまりに突出しているので、このリストは少し歪められて見えるかもしれません。劇場プロジェクトに250万ドル超、ダンスプロジェクトに60万ドル、コミックプロジェクトにおよそ100万ドルという数字は、誇らしく思えます。

バッカー(支援者)数

バッカー: 591,773
リピート・バッカー: 79,658

リピート・バッカー数は、2つ以上のKickstarterプロジェクトを支援した人の数です。これは私たちにとって、非常に重要な数字です。Kickstarterの「サプライ・サイド」を意味するのですから。彼らは単に友達のプロジェクトを支援するだけではなく、何か支援すべきものを探す人たちなのです。中には、50ものプロジェクトを支援している人もいます。Kickstarterスタッフはその好例と言えるでしょう。Kickstarterスタッフ全体で、1,590のプロジェクトを支援してきました。(私たちの給料がどこに注ぎ込まれていったかわかります。)

The Kickstarter Blog - Happy Birthday Kickstarter!

この2年間で、インディペンデント・クリエイターの7,500のプロジェクトに、4,000万ドル(32.5億円)*1が投資された、というのもすごいなぁと思うんだけど、それ以外の数字も実に興味深い。

85%の回収率と43%の成功率の差は、上記の記事にもあるように、人気のある、またはファンの多いプロジェクトに投資が集中し、そうではないプロジェクトには向かないことを示唆している。もちろん、成功したプロジェクトの方が、額が大きくなるのは当然なのだが、個人的には思っていたよりも以上の数字だったので、ちょっと驚いた。

1つ1つのプロジェクトを見てみないと結論づけることはできないのだけれども、やはりある程度のファンベースを抱えているクリエイターが強いのかもしれないなと思った。

あともう1つ気になったのは、リピート・バッカーの存在。これが多いか少ないかは判断に困るけれども、1割を超えているというのは、私が想像していた以上に多くて、これも驚いた。出会いの場ともなっているのかもしれないし、支援すること自体がある種の楽しさを生み出しているのかもしれない。

Kickstarterは、ファンクラブ・モデルの派生形と捉えられているかもしれないが、個人的には、活動を広めるためコアとしても働きうるものだと思っている。次のステップのためのね。

*1:うち5%がKickstarterの手数料?

ゲームバーが著作権侵害警告でゲームオーバー?何とかならんもんか…

都内のTV Game Cafe BAR『ファミコンシティ』が、同店Twitterアカウントにて、著作権協会(ACCS?)から警告を受けて閉店するとのアナウンスを行った。


いずれ詳細について報告してくれるとのことだが、どういった警告を受けたか、という点についても気になるところ。

この話題についてまとめられたTogetterをみると、「やっぱりな」という反応や「名前(ファミコン)がダメだったんじゃ?」という反応がちらほら。コメント欄では@ex_hmmtさんが上映権の問題では、との指摘。やっぱりその辺なのかしら。

今年2月にも、宿泊客にゲーム機・ゲームソフトを貸し出したとされる神戸市内のホテルが著作権法違反(上映権侵害)の容疑で摘発されている。ゲームの画面をホテル館内のテレビに無断で「上映」し、任天堂カプコンコーエーの上映権を侵害した、と。

件のファミコンシティも、「お酒を飲みながらTVゲームが楽しめるお店」として、FC、SFCPS3PS2NDSPSPN64GC、SS等ハードや周辺機器を用意し、各種ゲームソフトを貸し出していた模様。状況としては、摘発を受けたホテルと同様といえそう。

もちろん、名前がまずかった、というのもありそうだし、最新機種を取りそろえていること、この手のゲームバーが増えてきたこと*1なども、警告に至る一因となったのかもしれない。

漫画喫茶とかネットカフェでも貸し出してるよ?

漫喫やネットカフェの中には、ゲーム機を設置したり、ゲームソフトを貸し出している店舗がある。中には無断で貸し出しているところもあるのかもしれないが、2002年にCESA(コンピュータ・エンターテイメント・ソフトウェア協会)とJCCA(日本複合カフェ協会)との間で、ゲームソフトの業務利用(上映)に関する取り決めが交わされ、TVゲーム許諾システムというルールに即したゲームの貸し出しが行われている。

JCCAのウェブサイトには、許諾ゲーム一覧が掲載されており、ざっと眺めてみたところ、PS2、PS、NDSの一部のゲームソフトのみ、許諾されているようだ。NDSソフトは、今年に4月から許諾されることになったとのこと。複合カフェとしては、現在のところJCCA加盟店のみの許諾になっているとか。

◆許諾店はJCCA加盟のみ
DSソフトはJCCA加盟店のみに許諾されます。許諾ソフトのパッケージには、許諾の証であるシールが貼られています。
また、非加盟店舗によるDSソフトの貸し出しは著作権違反となります。ゲームメーカーの著作権団体であるACCSコンピュータソフトウェア著作権協会)が、違法店に対し取り締まりを行う予定です。

JCCA-日本複合カフェ協会

この「違法店に対する取締り」とファミコンシティへの警告が直接繋がっているかはわからないけれども、業務形態は違うとはいえ、ルールに則ったゲームソフトの貸し出しが行われている以上、放ってもおけないというところもあるのかも。

ゲームバーあれこれ

テレビゲーム系のゲームバー*2というと、所謂レトロゲームをコンセプトにしたお店が多いようなイメージ。ゲームバーのウェブサイトをあちこち見て回ってみたが、8bitをフィーチャーしたところが多い。

ただ、ゲームバーと一口に言っても、店のコンセプトとしてレトロゲームをフィーチャーしているだけのところもあれば、実際にゲームをプレイできるところもある。また、店舗側で用意しているハードも、懐かしのハードのみ揃えているところもあれば、最新ハードまで用意しているところもある。また、貸し切りに限って、現行ハード&ソフトの持ち込みがOKなところもあった。ゲームソフトの貸し出しに関しては、持ち込みのみOKなところもあれば、各種ハードのゲームソフトを用意し、プレイできるところもある。それぞれお店によってまちまちな模様。

ちょっと気になったのは、GAME BAR A-Buttonが今年1月にWiiとDSを店内から撤去していたこと。

様々な事情を考慮しまして、任天堂製の現行ゲーム機は全て撤去いたします。

また、Wiiにつきましては、貸切営業時に限り、お客様による本体及びソフトウェア持ち込みの場合はプレイしていただけます。

Wii及び、ニンテンドーDSを完全撤去します - A-Button営業日誌

ちなみに同店はゲームソフトの貸し出しは行っていない。「様々な事情」がなんなのかまではわからないが、少なくとも現行ハードを貸し出すのは状況的によろしくないと判断したのかな。

何とかならんもんか

Togetterまとめへの反応を見てみると、「何とかならんもんか」という反応も少なくない。私も同感だ。

最近では、みんなで楽しめる系のゲームも増えて来つつある。とはいえ、みんながみんな、誰かの家に集まってワイワイやれるわけでもない。ゲームバーみたいなところは、気軽に集まって、みんなでゲームを楽しめる場にしていくこともできるんじゃないかなと思う。ゲーム人口の維持、開拓を考えても、そうした環境を整え育てていくことは、ポジティブになりはしても、ネガティブに働くとは考えにくい。

ところで、上述した神戸市内のホテル摘発では、権利者の告訴に至った背景を、警察は以下のように説明している。

「ゲームソフト業界の処罰意識は、とても高いものがありました。ソフトを作るのには多額の金がかかっており、貸し出しを見逃すとビジネスに差し支えるということです」

ホテルがゲーム無料貸し出し これで逮捕はやり過ぎとの声 : J-CASTニュース

うーん、ゲームソフトの施設内貸し出しがビジネスに差し支える…というのはいまいちピンとこない。ホテルでのご休憩やゲームバーでの数時間で、もう買わなくていいやーというくらいに遊び尽くせるわけでもないし、むしろゲームとの接点として有益なんじゃないのかなと思ったりもする。

もしくは、ゲームソフトの施設内貸し出しもビジネスとしてみていて、これから拡張していくつもりだった、だから見逃せないのだ、ということなのかもしれない。もしそうなのであれば、方向性としては望ましいと思ったりもする。最近、みんなで楽しめる系のゲームソフトとして大々的に売り出されているのを目にするにつけ、カラオケボックスとか、複合レジャー施設とかにあってもいいのになー、としばしば思う。みんなで誰かの家に集まれるシチュエーションは割と限定的だけど、外で行けるところがあるならやってみたい、ってそこそこ需要はあると思うんだけどね。個人的には、どんどん最新作に触れさせた方が良いと思うよ。そんな簡単に遊びきれるものじゃないでしょ?

とはいえ、何ともならなそうなところも…

ゲームバーの多くは、ファミコンとかレトロゲームをコンセプトにしているところが多いって書いたけど、20年以上も前にリリースされたファミコンのソフトの権利処理を今更やるってのを考えると、なかなか難しいなぁと思ったりもする。何とかならんもんか。

個人的には、セガの過去ハード*3とソフトを取りそろえたゲームバーとか行ってみたいよ…。

*1:少なくとも10年前に比べたら

*2:テレビゲーム以外にも、ボードゲーム、カードゲーム系のゲームバーもある。

*3:スーパー32Xとか