ニコ動は報道には値しない?NHK、地震速報誤報ビデオをニコ動から削除

昨日のNHK地震速報の誤報のビデオがニコニコ動画アップロードされていたのだけれども、すぐさま削除されたらしい。
もちろん、公衆送信可能化権の侵害であるのだから、削除通知or削除することは何ら問題はないのだが、一方では「著作権者の失態を隠滅する行為」という可能性も無いわけではない。

とくに、公益性のある法人がしでかしたことで、もし昼間であれば相当の混乱が生じたであろうことだけに、この過剰なまでの反応は疑問です。

ニコニコ動画という場の性質からして成り立たないとは思うのですが、法の趣旨から考えると著作権が一部制限される可能性があるような場面のような気がするんですよね。

拒絶理由通知-まったり知財系: 著作権者による削除の妥当性

このような指摘は確かに同意できる。法の趣旨という点で、上記記事の筆者は著作権法第三十九条(時事問題に関する論説の転載等)、第四十一条(時事の事件の報道のための利用)を挙げている。確かに第四十一条は報道目的での著作物の利用の際には、目的上正当な範囲内において、著作権が制限されるとしている。

第四十一条  写真、映画、放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる。

確かに現状のニコ動をどう捉えるのか、という問題はある。ということで、問題のビデオを見てみよう。もう削除されてしまっているが、アップローダがどういう表現を用いてこのビデオをアップロードしたか、その辺を見てみる(改行は引用者が適宜行った)。

■1月13日2時11分くらいに北海道と九州で起きた地震(それぞれ震度4、震度2)の緊急地震速報
■本来なら地震の地域表示をする画像が出るはず
■地域表示がないのに全国で流れたらしい
追記:緊急地震速報NHKの間違いだったそうです。どうやら地震速報を流そうとして間違えたらしい)

ニコニコ動画(RC2)‐緊急地震速報

ビデオ共有サイトが報道と定義されうるのかは定かではない。ただ、このアップローダは少なくとも、何が起こったのかを知らしめるためにこのビデオをアップロードした、その点では間違いないだろう。もちろん、ネタ的な面白さを狙っているという意図は否定できないが、かといってこの動画自体はNHK誤報が実際にどのようなものであったのかを示すためのもの、とも考えられる。実際にアップローダはコメントとして、経緯を載せているわけでね。
また、ニコ動はYouTubeとは異なりエンベッドできないため、動画だけが一人歩きするということも無い。必ず上記のコメントと動画がセットで提供されることになる。
もちろん、これはNHKをバッシングしようとか、そういうことがじゃないんよ。ただ、実際にこういう事例は今後増えてくるだろうし、線を引くならきちんと考えないといけない問題だと思う。
正当な理由があるかどうか、それも問題になってくるだろう。その辺は現在実際に行われている報道と照らして考える必要があると思う。現在の報道以上に著作権に制限をかけるというのは考え物だし、かといって現在の報道以下の扱いをされるのはアンフェアだ。
また、今回のように、ユーザが気軽にアップロードできるのは基本的にはビデオ共有サイトということになる。とすれば、ビデオ共有サイト上への報道目的のビデオアップロードの是非はどう考えるべきか。ビデオ全体して報道が完結していることが条件になるのか、それともビデオを超えた前後関係あって成立するのであればよしとするのか。
なかなか難しいところだね。ただ、ビデオを超えた前後関係で成立するものを報道とみなして著作権を制限するのであれば、そうしたことが可能なプラットフォームが必要になる。前述したようにYouTubeでは簡単に文脈から切り離して利用することができる以上、問題は多いだろう。となると、ビデオ機能付の市民参加型報道プラットフォームみたいなものが必要になるのかな。Oh My Newsのようなサイトが自身でビデオサービスを提供するって感じ?もしくは、ビデオ共有サイトの側で、特定のサイトでのみ視聴可能な制限を設ける、とかね。そうなると、ビデオ広告orプレイヤーに広告が含まれることになるのだろうけど。
いろいろ考えさせられる問題だわね。
(追記)
ニコニコ動画は報道として認められないか? - 年末年始にJavaScriptでプレゼンツールを作ってみるのをあきらめた
こちらのブログにて、この件の解説を頂きました。勉強になるので是非。
なかなかに難しい問題です。