私がスリーストライク法に反対する理由

先日お伝えしたフランスのスリーストライク法案が、上院でも可決され、スリーストライク法を後押ししてきたサルコジ大統領の署名を経て成立することとなった。

この法案は、違法ダウンロードユーザーに2度警告し、3度目の違反でそのユーザーのネット回線を切断するというもの。High Authority of Diffusion of the Art Works and Protection of Rights on the Internet(Hadopi)という新たな政府機関を設け、この機関が違法ダウンロードユーザーの身元を突き止めて警告する。2度警告を受けても違反を続けたユーザーは、最高で1年間インターネット接続を停止される。さらにブラックリストに載せられて、別のISPに移行したり、新しいアカウントを取得したりできなくなる。

違法DLでネット切断の「スリーストライク法案」、仏議会で可決 - ITmedia News

実際に、違法ファイル共有に関係していない人に対しても、著作権侵害警告を送付している段階にあっては(PDF)、スリーストライク法がもたらす負の側面を強調せざるを得ない。

アンチパイラシー団体の思惑は単純だ。BayTSPを始めとする違法ファイル共有ユーザトラッキング企業に調査を依頼し、そうして得られた情報を当該機関に送付すれば、自分たちの仕事は終わり、しつこい違法ファイル共有ユーザは政府機関がインターネットから遮断してくれる、という寸法。

しかし、某かの誤りがあって、無関係のユーザを違法ファイル共有ユーザに仕立て上げてしまう可能性も存在する。そういった場合、誰が責任をとり、誰にペナルティが科されるのだろうか?インターネットへのアクセスは市民権の1つであるとする欧州議会のスタンスを私は支持するので、その脅威をはらんでいる同法に対しては否定的なスタンスをとらざるを得ない。

また、たとえ当該のユーザが違法ファイル共有を実際に行ったことで、3度の警告を受け、インターネットへのアクセスを遮断されたとしても、問題は依然として存在する。確かに、違法ファイル共有を行っていたのだから当然だ、という気持ちもわからないでもないが、では、その家族まで同じ罰を受けることまで是とすることはできるだろうか?

父親が違法ファイル共有を行っていたことで、子供やその妻まで再考で1年もの期間、インターネットアクセスを奪われることも、現実に起こりうる。1世帯に複数回線を引いている世帯などほとんどないだろう。

さらに、スリーストライク法は、これまで著作権団体が請け負ってきたアンチパイラシー活動を社会が引き受けるということでもある。それもまた、ある種の問題を引き起こしかねない。

依然ドイツでは、アンチパイラシー団体による刑事訴訟を利用した著作権侵害ユーザの特定方法が問題になった。違法ファイル共有ユーザを特定するために、著作権団体はIPアドレスだけがわかっている氏名不詳のユーザに対して刑事告発を起こし、それによって判明した氏名をもとに民事訴訟を起こす、といった手法を濫用した。その欠課、検察当局にかかるコストが甚大なものとなり、結局、検察当局は被害が甚大ではないケースを取り扱わない方針を発表することとなった。

もちろん、これが再現されるわけではないだろうが、スリーストライク法が施行された暁には、当該機関であるHadopiに数千、数万、それ以上のIPアドレスが寄せられることになるだろう。それでもHadopiは、1つ1つのケースについてリソースを割き、間違いがないかどうか精査し、正しく通知されているかを確認することができるのだろうか?割かなければ、市民権の軽視とも言えるし、割けばかかるコストは莫大なものとなる。

私は何も違法ファイル共有ユーザに罰を下すなと言いたいわけじゃない。むしろ、海賊行為問題の解決には、よりよいサービスの実現だけではなく、ユーザに対する法的対処が必要だと考えている。しかし、現時点でも法的な対処は可能であり、それをショートカットするだけで、多くのデメリットを生み出しうる法律を支持することはできない。

確かに、違法ファイル共有によって法廷に立たされ、厳格な判決を受けるよりならマシとも考えられるだろう。しかし、スリーストライク法は、違法ファイル共有ユーザが法廷に立たされることを回避するための施策としてはあまりにデメリットが大きい。

私は、罰を科すならば裁判によらねばならないと信じる。これを刑罰ではないと叫んだところで、実質的な刑罰に他ならず、それを民間のアンチパイラシー団体と政府機関とが行うということに懐疑的にならざるを得ない。