世界のレコード産業:2010年も進むCD離れ デジタルも伸び悩み

IFPI(国際レコード産業連盟)が、年次レポート『Recording Industry in Numbers 2011』を公表した。世界のレコード産業、マーケットの2010年を振り返るレポートだけに、非常に興味深くもあるのだが、お値段750ユーロもするのでさすがに手がでない。ということで、このレポートについて報じたニュース記事などを参考にして、2010年のレコード産業をざっくりと俯瞰してみるよ。

と、本題に入る前に気になったのがこの表紙。デコボコの球体の上のロゴはみんな、音楽配信/ストリーミング/ネットラジオだね。何となくわかっただけでも、Spotify Rhapsody MOG RdioeMusic 7digitalwe7bandit.fmWIMPなどなど。

Global Recorded Music Sales 1997-2010

やはり2010年もphysical、CDセールスの下落傾向が続いた。

  • 2010年、世界のレコード産業trade revenuesは前年比8.3%減の159億ドル。
  • physical salesは前年比14.2%減。2007年の13.4%減、2008年の13.8%減、2009年の11%減とダダ下がりが続く。2006年と比較すると43%減。
  • digital salesは前年比5.3%増。2009年の11.7%増、2008年の37.2%増に比べると成長は鈍化。2006年と比較すると116%増。
  • performance rightsは3,800万ドル増(4.6%)の8億5100万ドル。報告、徴収基盤等の整備により、さらに成長する分野となる可能性も。

各国のレコードセールス

比較的安定したかのように2009年から一転、2010年はレコード市場がぐらつき始めた。

  • 米国:2009年の10.7%減に続き、2010年も10.0%減。physical/digital比は共に49%。digital salesは1.2%増、伸び悩み?mobileの『急落』が響いたのだとか。
  • 英国:2009年の1.9%増から、2010年は11.0%減。2009年には世界第三位だった英国、2010年は米国、日本、ドイツに次ぐ第四位に。
  • フランス:2009年の2.4%減から、2010年は5.1%減。
  • ノルウェーSpotifyやWiMP等合法デジタルサービスがあるも、2009年のの0.7%の微減から、2010年は7.5%減。
  • スウェーデンSpotifyのホームで、海賊版対策法(IPRED)が2009年4月に施行されたスウェーデンでは、2009年の11.9%増の後、2010年は7.1%減。
  • オーストラリア:2009年4.3%増の後、2010年12.4%減。

その他、Billboard.bizの記事で気になった辺りを。

現時点で比較的CDセールスを堅持しているということは、失うものがあるということでもある。たとえばドイツでは、フィジカルセールスの「反発」が歓迎されているが、フィジカルからデジタルへの流れは不可避である。いずれ転落する日が来る。

とはいえ米国を見るに、digitalの成長率が1.2%にまで落ちる一方、physicalは-10%程度の落ち込み。digital 対 physicalが半々になったと言っても、physicalの落ち込みによるところが大きい。これが米国にユニークな現象なのか、それとも他の国に撮っての未来予想図なのかはわからないのだけれども。

アンチパイラシー法を施行した韓国、2009年の10.4%増に続き、2010年も11.7%増。韓国はphysical 45%に対し、digital 55%。韓国アンチパイラシー法施行後のポジティブな変化は、IFPIレポートでも強調された。アンチパイラシー法導入の検討にあたって一考の価値がある結果だろう。

いわゆる韓国版スリーストライク法の施行後、音楽セールスが上向いたという韓国。これは興味深い。もちろん、スウェーデンのIPREDのように、施行から半年程度で効果が薄れてしまったケースもあり、単純にアンチパイラシー法の施行による単一の効果とは断定できない。たとえば、サービス/ユーザへの取締りの強化やサービス/ペイメント等の質の向上、さらに韓国のdigital優位の状況も作用したかもしれない。さまざまな要因を踏まえなければならないだろうが、考慮する価値のある結果なのかもしれない(とはいえ、個人的にはネット切断には反対、ノーティス&ノーティスと取締りの強化で対応すべきだと思う)。

もう1つ、paidContent:UK)によると、IFPIは聞き放題サブスクリプションサービスなどの新たなリテイル・モデルが、音楽産業の再成長を促しうると期待、そのようなサービスとして、全世界に1,000万人以上のユーザを抱えるいわゆるクラウド型の音楽ストリーミングサービスSpotify、 Rhapsodyを挙げている。

Spotifyは、米国には未進出ながらも、欧州で1,000万人以上のユーザを抱え、プレミアムユーザも100万人を突破している。一方のRhapsodyは米国で成長を続け、無料アカウントはないながらも有料ユーザが75万人を突破している。

こうしたクラウド型音楽サブスクリプションサービスにどの程度の期待をかけているのかは少しはかりかねるけれども、今伸び盛りの期待の領域をレポートに載せるのはお約束なところもある。特に全体として縮小傾向が続いているので、少しでも明るいネタを載せておきたい、と。moblieではスマートフォンへの移行も進み、Ringtonesが終わりに向かっているのもあって*1、moblieの「A new hope」みたいなかたちで載せているのかもね。

余談

実際にこのレポートをご覧になった方、感想や気になった点などなど聞かせてもらえれば幸いです。