不便だからこそ「結果的に」良いということもある

便利であることは望ましいことではあると思う。しかし、そこにある種のジレンマをはらんでいるのであれば、便利であることは必ずしも良いとは言えないかもしれない。言い換えれば、短期的な利益を求めれば、長期的な利益を失するというケースでは。

貯金箱

たとえば、私たちが子どものころ*1、一度は利用したことのある『貯金箱』を考えてみよう。なぜ人が貯金箱を利用するかというと、一般的な答えをしては「お金を貯めたいから」だろう。「長期的な目標」がお金を貯めることである。貯金箱にお金を貯めている、という目標を忘れていなければ、せっせとお金を貯金箱に収める。小銭が余っているときにとか、1日いくらと決めてとか。

でもしばしば、ちょっとした小銭が必要になることもある*2。もちろん、財布の中に小銭があれば良いのだが、いつもいつもそうであるわけではない。そんなとき、ふと、貯金箱の中に小銭がある、ということを思い出すだろう。

そこで貯金箱からお金を取り出すことになれば、短期的な利益を得ることができるだろう。しかし、その一方で「お金を貯める」という長期的な利益を損ねることにもなっている。短期的な利益と長期的な利益とを天秤にかけなければならない。

しかし、人はただ単純にその2つを天秤にかけるわけではない。大抵の貯金箱はそれほどお金が取り出しやすい構造になってはいない。マンガに出てくるようなブタの貯金箱であれば割らなければ取り出せないし、「○万円貯まる貯金箱」は缶切りで開けなければならない。割ったり開けたりすればお金は取り出せるようになるが、貯金箱としての機能を失うことにもなる。また、取り出せる構造のものであっても、ゴム蓋を外して貯金箱を振って中身を取り出すものだから取り出しにくいし、人によっては1円、5円、10円なども適当にぶち込んでいるので、大きい硬貨を探すのも面倒ということもあるかもしれない。

結果的に、貯金箱の機能を失うのは勿体ない、面倒くさいという理由で、小銭を取り出すことを諦めれば、短期的な利益は充足しないものの、長期的な利益は守られることになる。もちろん、どちらの利益もそれほど重要なものではないだろうけどね。

あなたにとって大切な利益は?

ここであげたのは、長期的な利益を優先したいが、短期的な利益によって誘惑されてしまうというケース。長期的な利益をそれほど求めているわけではないので、短期的な利益を優先させたい、という場合には異なる話。その場合には、取り出しにくい貯金箱ではなく、もっと取り出しやすい*3構造を持った貯金箱である必要がある。

あくまでも、長期的な利益の方がプライオリティが高いのであれば、短期的な利益を損ねることになってでもそれを抑制するような不便さが「結果的には」役立つこともある、というお話。

*1:ともすれば今でも

*2:ある程度の年齢になったらそういうこともなくなってきたが、子どものころはしばしばあった。

*3:たとえば1円、5円、10円…と硬貨ごとに貯めることのできる貯金箱のような、必要な額だけすぐに取り出せるもの。短期的な利益を優先させているが、長期的な利益を全く望めないというわけではない