Winny普及が海賊版DVDを追い詰めている?

ウィニー普及が海賊版DVDを後押し? 隙間突く「かばん屋」 - MSN産経ニュース

このMSN産経ニュースを読んだのだが、どうにも理解しにくい内容になっている。タイトルはあたかもWinnyが普及したことが海賊版DVD販売を促進しているかのようだが、そういった記述は一切ない。

唯一関連していそうな記述は、日本国際映画著作権協会(JIMCA)関係者の

「今や違法映像はネット上から簡単に入手できるようになったが、ファイル共有ソフトの危険性を敬遠する人も多く、一部の地域では対面販売が続いているのではないか」

ウィニー普及が海賊版DVDを後押し? 隙間突く「かばん屋」 (1/2ページ) - MSN産経ニュース

という発言だが、これはおそらくWinnyを始めとするP2Pファイル共有を利用すれば、海賊盤業者に頼らずともお目当てのビデオ等が手に入るのに、それでも海賊版に手を出すのはどうしてか、という問に対する1つの説明にすぎないだろう。

フィジカル・パイレーツとP2Pファイル共有

個人的にはP2Pファイル共有がこうしたフィジカルな媒体を利用した海賊版業者に与えた影響は、彼らにとってポジティブな部分もあるし、ネガティブな部分もあるのだろうと思っている。

ネガティブな面はといえば、これまで非常に限定されていた海賊版の流通ルートが彼らだけが独占できるものではなくなったということ。誰しもがインターネットを利用して、海賊版ファイルを手に入れることができるのだから、当然と言えば当然。

以前読んだTorrentFreakの記事に廃業した海賊版業者の独白ともいえるような面白い記事があったが、そこに登場した海賊版業者は彼が廃業した理由を

「客になんで(海賊盤を)買わないか聞いてみりゃわかるよ、十中八九『これはBitTorrent、あれはLimeWire』って答えが返ってくるだろ。」

P2Pファイル共有が海賊業者を駆逐する:ある海賊業者の告白 :P2Pとかその辺のお話

と答えている。

一方で、ポジティブな面はといえば、海賊版作成に必要となるデータ*1をインターネット経由で入手することができるようになった、ということだろう*2。海外映画などは日本での劇場公開前から字幕を作ってくれる人たちまでいるくらいだし。とはいえ、誰しもがそうしたデータを*3簡単に入手できる時代である。それは誰しもが彼らと同じビジネスを営めることをも意味する。

実際、P2Pファイル共有から入手したデータをもとに、新たに海賊業に足を染める人もいる。かつてはウェブサイト上で、最近では取り締まりが厳しくなっているがオークションサイトで、カジュアルな海賊業を目にした人も少なくはないだろう。入手経路も、販路も、さらには(手広く海賊ビジネスを行なうでもない限りは)海賊版の製造もネットに繋がった1台のパソコンがあれば事足りてしまう。

結果として、海賊版販売を本業とする人にとっては、やはりこれもポジティブなようでネガティブなんだろうなぁ。

一応補足

Winnyが違法ファイル共有に使われているおかげで、海賊版業者が駆逐されました、めでたしめでたし、とはならないわけで、依然として問題は残っているし、以前に比べてより問題が深刻化しているともいえる。

あと、海賊版といってもいわゆるブートレグ*4とこの問題とは、若干背景が異なるので、全く同一に語るのは難しいかも、とは思う。

*1:ACCSはこれをマスターと呼んでいる

*2:産経の記事なるかばん屋なる存在が、この経路からマスターを入手しているのだとすれば、Winny普及が海賊版DVDを後押し、というのも、多少無理はあるが理解はできそうなものだが。

*3:違法性を考慮しなければ

*4:海賊盤