Jamendo、経営危機を脱しサービスの存続をアナウンス

以前、Jamendoが資金調達に失敗し、経営が傾きかかっているJamendo側はサービス継続のために模索を続けている、という記事を書いたが、その続報。アナウンスから既に1ヶ月近く経ってしまったが、今更気づきました。ごめんなさい。

sylvinusことJamendo CTOのSylvain Zimmerがフォーラム上でアナウンスしたところによると、Jamendoは新たなパートナーを見つけ、今後も運営を継続していくことが決定した模様。また、それと同時にJamendo自体の改革が行なわれるようで、それについても合わせてアナウンスされている。

ご存じの方も多いとは思いますが、私たちはJamendoの財政的な展望を安定させるパートナーと手を組むことになりました。厳しく、かつ数名のJamendoスタッフを解雇せざるを得ない状況にありましたが、(訳註:パートナーシップにより)今年の損益分岐の見通し(つまり、継続可能性)が立っております。数週間のうちに、私たちのパートナーを、そして「新たな」Jamendoチームを紹介することになるでしょう。

苦境に立たされ、自己反省を行なってきたことで、Jamendoのミッションが今まで以上に明確なものとなりました。アーティストに対しては自身の作品を管理、共有するための、リスナーに対しては最高の音楽を自由に探索するための、プロの方に対しては楽曲の商用利用に対する料金の支払いを伴うライセンシングのための、最良のプラットフォームたれ。つまり、持続可能なエコシステムを構築することです。

それが私たちのゴールです。では、どうやってそこにたどり着くのか。それに向けて、いくつかのアナウンスをさせてもらいます。

(Sticky) Great community-related news ;-) - The forum: General - Jamendo

以下、Jamendo CTOのSylvain Zimmerの発言概要。

Jamedo上の広告の除去

新機能やパートナーのバナーを掲載することもあるだろうが、基本スタンスとしては広告は掲載しない、アドフリーなJamendoを提供する*1Jamendoはこれまで、広告収入をJamendoで楽曲を提供しているアーティスト*2と50/50で分配してきたが、その利益に比して、ユーザのブラウジングエクスペリエンスに与えるネガティブな影響の方が大きかった。

また、このアナウンスの翌日に余談的に明かされた話ではあるが、Jamendo経由でドネーション*3した際、これまで手数料(?)としてJamendoが0.5ユーロを徴収していたのだが、これが廃止され、全額アーティストの元に行くようになった*4

オープンネス

他の音楽ウェブサイト、音楽アプリを見るに、音楽を自由に「浴びるように」聴くことが阻害されているように思う。従って、Jamendoはその逆張りする責務がある。以下詳細。

Jamendo Community Group

Jamendoをより民主的なものにする。Save Jamendoコミュニティを中心にJamendo Community Groupを立ち上げ、メンバーによる新機能に関する議論、投票を可能にする。スタッフへの質問、不具合などの報告も可能にする。そうしたインタラクションのため、インフォメーションセンターをセットアップ中。現時点でも不具合報告は受け付けているので、気がついた人はこちらまで。

コミュニティページのグループ機能、フォーラムもアップデートされる。熱心に活動するグループメンバーの声を拾い上げられるような形にする。

アルバムリリースプロセス

新規アルバムには、あまり評判のよろしくない「モデレーション」プロセスを経て公開を行なっているが、これもオープンにする。詳細はまだ決まっていないが、コミュニティが音楽に対する更なるコントロール権を持つ、という形にしたい。アーティストがよりよいエクスペリエンスを得ることができるようなツールをコミュニティに提供する。

グループメンバーに公開より1日ほど先立って、新規アルバムにアクセス可能にするという案もある。メンバーは音楽、アートワークに関わるさまざまな不具合、問題点を報告、改善することができる。メンバーによるレビューも受け付ける。

これについての議論は、Jamendo Community Groupにて行なっていく。早めに意見をもらえるとありがたい。

デベロッパAPI

これまでもJamendoの音楽を利用したアプリの作成を可能にすべくAPIを提供してきたが、サードパーティによるJamendoアプリを活性化するため、今後はこれをさらに強化*5する。デベロッパ・グループに対して、サポート、ドキュメント、コード・サンプルの提供を行なっていく。

TorrentとOGGの扱いについて

TorrentもOggも既にほとんど機能していないし、利用に比してあまりにコストフル*6である。そこで、これらについては「インテリジェントな」アプローチをとる。

1) Torrentについて。Jamendo公式のTorrentシーディングは停止する。.torrentファイルの生成、トラッカー機能は継続し、APIを通じてアクセス可能にする。シードの有無はユーザに委ねられる。アルバム自体はウェブサイトからダウンロードできるので、あえてBitTorrentでシード、ダウンロードしたいという人がどれくらいいるかは疑問視している。

2) Oggのサポートについて。フォーラム上でOggを支持する声があることは理解している。そこで提案なのだが、もしLinuxサーバを提供してくれるボランティアがいれば、そこをJamendoOggミラーとするのはどうか。こうしたボランティアが存在する限り、JamendoOggファイルの生成、アップロードは行なう。Jamendo自体がOggをホストすることはない。調整のため、「Ogg fans」というグループを設置する。

Jamendoコア・コンポーネンツのオープンソース

ランキングシステムを公開し、全ての人に実験、変更を可能にする。最終的にはその中から最良のものを選び、Jamendoに実装する。そうしたプロセスを経ることで、透明性が高く、より効果的な新たな音楽との出会いを提供することができるだろう。

翻訳システムのオープン化し、新規言語での翻訳、既存言語での翻訳ミスの修正を可能にする。コミュニティがより多くの国の人々を巻き込んで成長し、アーティストが世界中のオーディエンスへの露出を得ることの重要は感じている。翻訳システムのオープン化は、多数のオープン・ソース・プロジェクトで利用されている標準的なツール Pootleが採用されるだろう。

similar albums(似ているアルバム)"機能についても、同様の批判がある。similarity/recommendation(類似性/推薦)アルゴリズムのコンテストを開き、優れたものを採用したい。

タウンミーティング

現在議論中であるが、タウンミーティングなどを開催し、将来のプロジェクトなどを議論するような場も設置したい。

以上、Jamendo CTOのSylvain Zimmerの発言概要。

広告に関しては、Jamendo Proばかり掲載されていたので、どうしたんだろと思っていたのだけど、そういうことだったのか。広告、ドネーションはいずれも経営的には大きなウェイトを占めてはいない、ということでよいのかしら。Jamendo自体はJamendo Proによる収益で持続可能なサービスを構築することに注視しているような感を受ける。それが実現することを心から祈りたい。

*1:ドイツユーザに限っては、契約が残っているため、それが切れるまで広告は掲載される。

*2:希望者のみ

*3:5ユーロ/ドルより受け付け

*4:アーティストへのドネーションと同時にJamendoへのドネーションもしていたつもりだったのだが、どうしよう。Jamendoに直接ドネーション(Tシャツやグッズ購入)しなきゃいかんのかな。

*5:トップ・プライオリティの1つとまで明言している

*6:時間的にも金銭的にも