音楽産業のシステムは複雑だから単純化しちゃいけないのでは? + CD売上の内訳(補足)

とりあえず、昨日のエントリの補足とコメントへの返信です。
はてブ上で、CD売り上げの内訳は?という声がいくつかありましたので、それについて補足です。

CD売り上げの内訳

CDの内訳を・・・というご意見が多かったので、こちらのリンクを紹介します。私の認識としては、こちらのものにしたがっているという感じです。リンクなんかも充実してますね。

あと、音楽制作者連盟の発行しているフリーペーパー「音楽主義」の第17号にも内訳が掲載されています。

「最新号を読む」で読めます。もしくは以下のリンクで当該ページを直接読めます。

他にも調べてみると・・・

アジア市場では・・・

JASRACの手数料

それぞれの管理区分において定められています。
もうちょっとわかりやすくまとめているのが、こちらのサイト。

CDの場合、6%がJASRACの手数料として著作権使用料から差し引かれます。
また、JASRACが定めている著作物使用料分配規程も公開されています。

原著作者に渡る印税

原著作者(作詞作曲者)の得る印税については、こちらのサイトが非常に細かい部分まで計算方法を解説しています。

ただ、印税に関しては、音楽出版社と原著作者との間の契約によって決まるでしょうから、一律決まったという数字はないでしょう。多くのところで聞かれるのが、音楽出版社と原著作者(作詞家、作曲家合わせた分)を50:50で、というもの。簡単に切り分ければ、音楽出版社50%、作詞家25%、作曲家25%でしょうか。売り上げが上がればもう少し原著作者の得る割合が増えるみたいですが、契約ベースなのでちょっと込み入ったところまではわかりようがないです。桑田佳祐の印税率の話はよく聞きますが。
また、演奏家にも1%の著作隣接権に基づく使用料が入りますが、こちらもレコード製作者との契約で定められた印税率によって分配されるのでしょう。

コメントへの回答

前回のエントリにはてブ上でコメントいただいたものに、勝手ながら返答させていただきます。

id:sankaseki JASRACの業務の正当性を説かれているようだが、JASRAC批判の根底はこういう疑問じゃないでしょうか→「私がCD1枚に払った金額のどれくらいがアーティストに入るの?」&「JASRACの取り分の使い道を正確に報告してみて」

前者の疑問に対しては、上述したとおりです。個人的には極めて高額な手数料とは思えないのですが・・・。もし、算出方法やこの手数料に対して疑問、批判をするのであれば、その点についてクリティカルに指摘するのがよいのかなと思っています。また、こうした手数料が実際の個別の契約で何かしら手が加えられ、見えないような形で手数料を上乗せしている、ということであれば、そうした事実の積み重ねこそが必要ではないかと。
また、JASRACが管理している区分は、演奏、録音、出版、貸与、ビデオ、映画、CM、ゲーム、放送、配信、通信カラオケなどありますので、それぞれの区分ごとにどのような問題があるのか、ということを考えていく必要があると思っています。正確な数字が出しうるもの、正確な数字が出しにくいものがありますが、現状で正確な数字で算出しているのかどうか、曖昧な数字で算出しているのかどうか、ということには必ずしも対応していないように思えます。正確な数字が算出できないのだから、といいながら、そうした仕組みを作り上げることを避け、緩い徴収、緩い配分を行っているのであれば、それは問題だと思います。その辺については、考える必要があるかもしれませんね。。
後者の疑問に対しては、社団法人としてのJASRACのあり方の問題でしょうか。その辺の法律についてはよくわからないので、適正な指摘ならよいのではないでしょうか。

id:gyogyo6 JASRACが不透明だとして、そこよりも透明にやっている(はずの)他の著作権管理団体がなかなか使われないのはなぜなんだぜと思う。まだJASRACが実務面で「一番マシ」な存在なんだろうか

まず第一に、JASRACには60年かけて作り上げた演奏利用に対する徴収網/徴収力、放送利用に対する交渉能力の高さがあるのだと思います。これに新規参入組が対抗していくのは難しいのでしょう(参考:イーライセンスの管理範囲)。そのため、新規参入組みは、たとえば録音権やインタラクティブ配信に注力し、差別化を図ろうとしているのだと思っています。ただ、アーティストがより柔軟な著作権運用を考えていても、それを音楽出版社に譲渡してしまっているわけですから、音楽出版社の意向に従わざるを得ないわけです。そしてその音楽出版社は保守的です。現状は新規参入組がそうした保守的な音楽出版社からの信頼や魅力を得て信託されうるのか、という過渡期にあると考えています。また、演奏権の徴収ネットワーク、放送利用に対する交渉力を育てられるか、というところでもあるかもしれません。
そうした競争が働いてこそ、健全な市場になるのかなと思っています。ただ、1つ懸念しているのは、そうした競争が働いた結果、「一部」の著作権管理団体が暴走し、熾烈な取立てを行う可能性がないでもない、というところでしょうか。

id:shields-pikes 見事な論点のすり替え。「JASRACがアーティストから搾取」なんて批判はごく少数。ほとんどは「利用者から徴収した使用料はどこへ行くのか」という批判。JASRAC著作権管理を委託してない楽曲の使用料は、誰の懐に入る?

確かにこうした批判がたくさんある、というのは、こうした問題意識を持って積極的に著作権議論を注視しているために、過度に目立ってしまっているだけなのかもしれません。ただ、JASRACの使途が不透明な点についても問題がとは思っているのですが、そうした批判ばかりでもないような気がします。
それと、JASRACに管理委託していない楽曲の使用料は、使用者の未払いでは?とも思いますが・・・。ただ、包括契約時のレートはJASRACが支配的であればこそのレートですから、今後JASRACの独占体制が崩れていくのであれば、JASRACはそれにどう対応していくのだろうと思うところではあります。
また、論点のすり替えというわけではないですよ。前回のエントリでは、JASRACが問題あるというところをスルーしろといっているわけではなく、実際にこうした機能を持っているという前提で、改めて考慮する必要もあるのでは?という考えからのものです。また、音楽産業を語る場面においても、JASRACばかりに向けられていることに対しては、多様な論点のうちの1つだけが突出して注視されているようにも思えます。もちろん、JASRACを考えるのであればそれでよいのでしょうが、音楽産業を考えるのであれば偏った議論だなとも思います。

id:sippu JASRACが敵ではない。不透明さが敵なのだ。実際に何やってるかもっと広告すればいいの。それをやらないから悪いイメージがつく(同じものにされる)のではないだろうか?

あくまでJASRACのお客さんは著作権者ですから、その間でのコンセンサスが取れていればよいのかなと思ったりもします。ただ、その関係のパワーバランスが適切なものであるのかは疑問がありますよね。JASRAC音楽出版社の関係にも興味があります。著作権等管理事業法が施行されたときも、新規参入組への対抗策として、アクロバットとも取れる囲い込みをしましたし。

もう1つ思うのは、JASRACだけが悪者にされることで、批判をかわせている人がいるのではないかなぁと。持ちつ持たれつなのかなと思うところもあります。私にとって不透明さの温床は、JASRACだけではなく、レコード会社や音楽出版会社にもあるんですよね。

id:masayakato JASRACは叩きやすいけど、他にも叩く存在はあるよね、と言う話らしい。それは確かにそのとおりなんだけど、JASRAC以外は分け前の分配方法がなんとなく分かる反面JASRACは分配方法が全然見えないのが現実なのよねぇ。

そうそう、「他にも」というところがミソ。もちろん、分配方法の不明瞭さは問題で、その部分は批判すべき。その点で、週刊ダイヤモンドの記事はなかなかクリティカルな部分があると思ってます。また、「他にも」の部分って明瞭に見えるかもしれないけど、その基準ってのは「業界慣習」。そこに問題があるのでは?ということも今以上に問題視されてほしいなぁと思ってます。

id:API 日本のレコード会社がへたれなのは知ってるが法律を使って使用料を徴収しないと維持できないようなビジネスなら先は長くない。ネットに対応したビジネスモデルを確立しユーザーに金を払わせないと駄目だと思う〜ねw

私もその辺は常々思っていることなんですが、使用料が徴収できることで広がるビジネスってのもないかなと最近は思ってるんです。たとえば、音楽配信なんかでの視聴って30秒という、ほとんど買おうかどうか迷っている人以外には役に立たないものですよね。でも、そうした視聴がフルで聞けるとしたら、アレもコレもといろいろ聞いてみたくなるんじゃないかなぁと。ただ、そうしたやり方は商用ストリーミングにあたり、使用料も相当なものになるので現実的ではないでしょう。ただこれが現状の規定よりも低いレートで利用できれば、そうしたサービスも可能になるのかもしれません。これをタダでやらせろ、というとヤダ!といわれちゃうかもしれませんが、使用料は払います、楽曲の売り上げも上がるかもしれませんよ、という交渉次第ではうまくいくかもしれません。こうした利用に限りレートを低くする、ということが現実に受けれてもらえるかどうか、そうした柔軟な管理/徴収は可能であるのか、というハードルは高そうですけどね。
・・・「ね。」ばっかりが多いのは、表現力の問題です・・・。マイルドな物言いにしようとすると、表現力の壁が・・・。皆さんに指摘されて、耳が赤くなりました。気になって仕方なかった人、ごめんなさい。でも読んでくれてありがとう。

id:a_katu JASRACがしている「いらん事」は何か、正しく知ろうと言うお話。

消去法の一選択肢でしかありませんが、意図としては「正しく知ろう」という部分にあります。

id:irose 数字が全く出てこない。「円(お金の単位としての)」も「%」も出てこない。/「率」は出てきたけど、ここをサラっと流しすぎですね。つまり*6と*9が問題。

趣旨としてはJASRAC擁護でも批判でもなく、著作権の譲渡、著作隣接権問題に目を向けてくれ、ってところだったので、スルーしました。/上記で補足しました。

id:otsuneジャスラックの取り分はいくらか知っていますか(r)プロの音楽家はこのことを指摘すれば,確実に仕事がなくなりますのでジャスラックの問題を追及できません

前回エントリのコメント欄ですね。私も違和感を覚えました・・・。コレに関しては後述します。

id:himagination 最低使用料5,000円/月は高いと思います!

この辺の設定も議論されるべきでしょうね。確かに1件にごとに処理が必要になりますから、最低使用料を設定する必要があるのでしょうが、それが高いことで利用が阻害されているのであれば、処理の低コスト化、円滑化によってコストを下げ、それによって広範な利用を可能にすることで、利益につなげられるのかもしれません。

id:ore_de_work JASRACは影武者で本体は別にあるという話し?_?

JASRAC「も」問題あるし、他にもでかい問題があるよ、って話でした。

id:y_nagata JASRAC批判の一部は間違ったものですよ、というお話。問題の切り分けは確かに重要だが、最大の問題点である組織の不透明さについて触れていないのには作為的な何かを感じる。

その辺は、ほんの少ししか触れていないですが、作為的にです。悪意ではないですが。意図としては、ステレオタイプ的なJASRAC像をいったん取り払って、その上でもう一度音楽産業の中で起こっている問題を見直してみてほしい、という考えがありました。
また、JASRAC関連の話題では、ほとんどが批判的な主張で、異論があまりないので、そこに異論的なものをぶつけようとも思って書きました。異論/反論に対する反論こそが、よりクリティカルなものになるのではと考えてました。また、こうした作為的な書き方をしたのは、JASRACに対しての部分よりは、音楽出版社、レコード製作者、レコード会社に関する記述のほうが、強かったかもしれません。

id:mokkei1978 合法的な契約関係だから問題なし、という主張に読めて賛成できない。文化の発達にとって著作権がどうあるべきかという視点から、現状の契約関係の是非を判断すべき。

そう、私はこの点にこそ問題を感じています。そして、そのための視点や指摘はどこに向けられ、それがどうあるべきかを考えてほしいのです。
同様の指摘をmuta's mac scribblingさんからいただきました。

これらのことを不条理だと考えるのであれば、自らのコントロール可能な形で原盤を製作する必要がある。つまり、コストもリスクも全て自分が負わなければならない。

JASRACがアーティストから搾取しているという誤謬 - P2Pとかその辺のお話@はてな

といったアーティストが著作権著作隣接権を譲渡しているのだから・・・という部分に対して*1

現実にはレコード会社と契約している時点で、アーティストが原盤利用権を主張したり、著作権のすべてを譲渡しないでアーティスト活動を継続することはほぼ不可能だ。
ある非常なメジャーレーベルではエントリーの段階で「楽曲の権利は全て会社に帰属する」という契約書にサインさせられる。
これを拒絶することは「メジャーデビューする意志がない」と見なされる。

OS運用記録2月3

まさにこうした問題がアーティストと著作権の問題における最前線なのだと思っています。確かにこうした枠組みは、企業として利益を上げるためには必要なシステムなのかもしれません。しかし、それは適正なバランスの元で取り交わされている契約なのでしょうか。
アーティストのメリットは?デメリットは?レーベルのメリットは?デメリットは?パワーバランスによってデメリットを押し付けられていないか?ハラスメントなのか、必要不可欠な仕組みなのか、どちらなのか?システム全体の改革が必要なのか、それとも契約内容の変更によって修正できるのか?別の枠組みは構築できないのか?そのためには何が必要?何が足りない?いろいろな疑問が湧いてきます。
こうした問題は、レーベルや音楽出版社、マネジメント側がどうこう公にいうことはまずありえませんし、一方のアーティストは契約相手のこともあり、公に物申すことも難しいでしょう。また、そのような束縛から脱した人たちの主張を耳にすることもありますが、そのような情報は有益なものであると同時に、完全に利害が対立or独立している関係にある、という状況も加味しなければなりません。
結局のところ、リスクヘッジとして権利譲渡を要求すること、それによってアーティストが受けるメリット/デメリット、個々のプレイヤーとのパワーバランスによって過度に要求が押し切られていないか、などの問題を精査する必要があるのではないでしょうか。力関係の弱いプレイヤーが犠牲となって成り立っている状況は不健全で是正されるべきだと思っていますが、現状では独立独歩でやっていくことがあまりにも難しいことを考えると、それぞれにフェアな状態で寄り合える環境を作ることが至近的なゴールなのではないでしょうか。確かに私もアーティストをこそ保護すべきだ、と考えていますが、かといってそれを過剰に推し進め、産業の規模が縮小してしまうことになれば、それはそれで、アーティストのためになるのか、という疑問も湧いてきます。その上で、将来的に新たなモデルが存在しうるのか、ということを考えるのもよいのではと思っています。

JASRACがあっても、実際に楽曲の利用はそれぞれの権利者を利用者が調べ上げて、直接交渉しないといけないのは同じことだ。
JASRACが合理化したのは音楽の録音などを放送で利用するとか、飲食店でBGMとして利用するとかそういう時の事務手続きを簡素化しただけの話だ。

OS運用記録2月3

また、こうした状況を生み出している原因の1つには、音楽著作権管理における競争がなかなか進んでいないからではないかと感じています。よりスムースな利用によって、更なる利益を生み出してくれる団体であればこそ、著作権者もそちらの信託しようという気になるでしょうし。
ただ、少し混同されているかなと思われるのは、ご指摘いただいた部分は、まさにJASRACがかかわっていないところであり、原盤権等の著作隣接権がレーベル等の手元にあり、そこに個別に交渉していかないといけないということです。こうした部分も、著作物の利用を妨げている一因となっています。もちろん、それぞれの企業にはそれぞれの企業の求める利益があるのでしょうが、どこまで著作権法のもと保護されるべきかどうかという点では考える余地はあると思っています。
もちろん、そのスムースさにおいて。JASRACはまだまだ問題が多いでしょうが、この文脈では、特に原盤権管理と比して、著作権管理は窓口が存在し、申請を出せば許諾を得られるという点で、まだ評価できるというところです。著作権管理団体は、正当な理由なくして、その利用の許諾を拒むことはできませんから。
また、「JASRACは唯一効率的に集金を可能にする手段」という表現はYESでもありNOでもあります。NOである理由は、著作権管理団体はもはやJASRACだけではないということです。私は著作権管理団体間の競争が進むことを期待しています。YESである理由は、上でも述べたとおり、演奏権などの管理は、実質的にはJASRACに信託しなければ使用料を徴収することが難しいということにあります。

コメントへの返信

前回のエントリのコメント欄にいただいた一部コメントへの返信をさせていただきます。

akira
ぼくは,プロの作詞家でした.書いている方は,いったい一曲が売れた場合の著作者の取り分を知っているのでしょうか?日本の音楽出版社ジャスラックの取り分はいくらか知っていますか.知ってしたらこんなことは絶対書けません.ただ,プロの音楽家はこのことを指摘すれば,確実に仕事がなくなりますのでジャスラックの問題を追及できません.きちんと取材して数字を示して書いてください.大切なのは気分的な問題でなく,数字の問題です.
勇気ある方,誰かちゃんと取材して書いてください.お願いします.

上述したリンク先にあるような内容ならば、理解しております。ただ、それ以上の個別の契約において、何か問題があるのであれば私は知りません。
勝手なお願いではありますが、akiraさんが作詞家として音楽出版社と契約された経緯や、その契約内容(特に契約期間やその更新の主体、分配の割合)、またその楽曲の出荷枚数、音楽出版社JASRACとの契約内容、プロの作詞家としての活動において、音楽出版社に対して、ジャスラックに対して不満に思った点など差し支えのない程度で教えていただければ幸いです。
また、ジャスラック問題への指摘がどういった理由でタブー視されているのかを教えていただけませんか?たとえば音楽出版社JASRACとの関係から、音楽出版社側が圧力をかけているのでしょうか?
確かに数字の問題(つまり契約とその履行の問題)であることは理解していますが、それについて知りうる、述べることができるのは、契約の当事者でしかないのです。そして、勇気が求められているのは、取材する側だけではなく、取材される側でもあるということも考えてください。もし、週刊ダイヤモンドの記事が正しいのであれば、なぜ敗訴したのか、その背景も考える必要があるでしょう。
そして、名誉毀損に当たらない範囲での事実の公表であれば、インターネットを利用して、ある程度可能であると思っています。

d:id:hemon
う〜ん、もう少し現場で実際に何が起きているか調べた方がよくないですか?
下記のアドレスが参考になると思います。
実際にアーティストとJASRACで何が起きているかと言うことが。
http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0606/12/news005_2.html

結局そこで語られている問題というのは、音楽出版社とアーティストの契約関係、そこにかかわってくるレコード会社という構図が根本にあるのではないでしょうか。
また、JASRACに関する問題点の指摘としてクリティカルな部分は、

 だが音楽著作権にまつわるすべてが、新規事業者に任されているわけではない。著作権等管理事業法では、音楽著作権を4つに分けた。「演奏権等」「録音権等」「貸与権」「出版権等」である。これを「支分権」という。

 e-Licenseなど新規参入の管理事業者は、このうち「録音権等」のみの管理しか行なうことができず、そのほかの権利に関しては相変わらずJASRACが独占的に管理している。このため、管理事業法本来の趣旨が発揮できていないといった批判も強い。

ITmedia +D LifeStyle:「補償金もDRMも必要ない」――音楽家 平沢進氏の提言 (1/4)

という箇所でしょうか。このような独占管理体制の存続は、できる限り抑制されるべきだと考えています。
もう一方、コメントいただいた方を。

一般人A

  1. ジャスラック著作権料として徴収したお金から活動費等支出している事が批判されています。
  2. ジャスラック著作権料を過去に遡って徴収する際のその金額の算出方法が批判されています。
  3. 著作権料を著作権者に配布する際にサンプリング方式と称するドンブリ勘定で上位ランキング者にだけ分配していることが批判されています。
  4. ジャスラックが管理している楽曲の管理方法が批判されています。(楽曲をユニークに特定できない為)
  5. ジャスラックが屁理屈振り回す為にジャズ喫茶等音楽聞かせるところが激減しました。
  6. テレビなんかのCMでクラシックからのアレンジ物ばかりが目立つようになり、消耗品ではない楽曲は出なくなってしまいました。

便宜上、リストとさせていただきました。批判すべきところは批判したほうがよいと思いますので、バスバスやるといいと思いますよ。
1.に関しては社団法人として、ということでしょうか。ちょっとその辺の事情は不勉強ゆえわからないところもありますが、役員報酬等の問題とも絡んでくるんでしょうか。2.に関しては同感です。もっとうまいやり方はないもんかと思ってしまいますが。もちろん、JASRACにしてみれば、そうでもしないとばれるまで無契約でいいや、という人が出てくるでしょ!ってところなんでしょうが、それでも納得のいかない部分があります。3.については、週刊ダイヤモンドでも軽く触れているところですね。演奏に対しての徴収は、どの曲が利用されたかわかりえない、という前提でそうしているのでしょうが(4.の部分ですね)、利用された楽曲を特定することでこそ、適切な著作権使用料の分配が可能になるのだと思います。また、こうした演奏に対する特定によって、現行の方式とは異なる使用楽曲数に準じた料金の請求も可能となるでしょうから、適切な徴収のためには必要なステップではと思っています。また、そうした方式をJASRAC以外の著作権管理団体にこそ実現してほしいなぁと思っています。もし、一部の著作権者のみが優遇されているのであれば、それを不満に思う層はより利益を約束してくれる管理団体に信託するでしょうから。5年、10年で実現するかどうかも難しい話ですが、そうなってくれることを願っています。5.は、利用料率の設定の問題でしょうか。屁理屈がどの辺の事を指しているのかはわかりませんが、ある意味ではジャズ喫茶のような場所で楽曲を利用してもらうことも著作権者の利益に繋がるわけですから、それが難しい状況を作るというのは、本末転倒な感があります。そうしたケースでは、どういった点が問題であるのか、理不尽であるのかを考える必要がありますね。6.に関しては、JASRACにつながる部分というのは、ちょっとわかりませんでした。ごめんなさい。

終わりに

前回のエントリは、印象に基づくJASRAC批判はやめてもっとクリティカルな視点が必要だ、著作権の譲渡の問題、演奏家、レコード製作者の著作隣接権の問題に目を向けよう、という趣旨の元に書きました。システムが悪いのか、運用が悪いのか、それともそれほど大きな問題ではないのか、そうした点を考える上では、印象だけで話を進めるのではなく、実際どうやってその世界が回っているのかを知る必要があります。アーティストとのさまざまな契約が、全く問題がないとは思っていない、というスタンスではありますが、それもまた、どういう点で?という事実の積み重ねがあってこそなのだと思っています。
もちろん、前回のエントリはほんのさわりの部分を外から見たときの話でしかありません。議論のエントランスにすらなっていないかもしれません。それほど、一般の人にとって複雑な構造を持つ音楽産業の問題を考えるのは、大変だということです*2。もちろん、既に理解している方に向けて、ではなく、よく知らなかった、へぇ〜といってくれる人に向けて、正しい認識でJASRACを批判している人に向けてではなく、誤解に基づく視点からJASRACを批判している人に向けてのエントリでした。
そのスタンスについては、id:NOV1975さんが的確に表現してくれてます。

こうした文章を書けるように心がけたいものです・・・。
常日頃から、アンチパイラシー眼鏡でしか考えられない著作権団体等に対してその眼鏡はずして見直してみろよ、と批判し続けているからこそ、そんな私がアンチ著作権団体眼鏡、アンチJASRAC眼鏡をかけ続けていてはいけないのだと思う次第です。人間だもの、都合のいい方向にバイアスをかけちゃうけど、それを修正できるのも人間だもの。なので、

id:corpvs id:heatwave_p2pの記事だからこそ、意味がある。

こうしたコメントをいただけたのは、素直にうれしかったです*3
日ごろから読んでくれている方、たまに読んでくれている方、いつもどうもありがとう。

*1:ちなみにこの部分は、自分で書いてて嫌になった部分。はてブに「書いててストレス溜まった」と書いたのは、この辺のことです。一人でも多くの人に自発的に「ん?」って思ってほしかったのです。

*2:少なくとも、一般人である私を基準にした場合ですが

*3:泣きそうになったわ・・・