BitTorrent:トラッカーを持ってなくてもトラッカーサイト?

とある記事を読んでふと思ったんだけど、トラッカーがなくともトラッカーサイトとはこれいかに。「.torrentファイルをダウンロード出来れば十分です」という方は別に気にしなくてもいい程度の話のちっさい話ではあるが…。

トラッカーサイト?

一部のBitTorrent解説記事、サイト、ブログなどで、このトラッカーサイトという言葉が使われているんだけど、そこでトラッカーサイトとして紹介されるBitTorrentサイトの中には、実際にはトラッカーを持たないBitTorrentサイトも多い。
たぶん、その言葉が広まった当時は、ほとんどのBitTorrentサイトが自前のトラッカーを持っていたんだろうけれど*1、少なくとも現在では、トラッカーを有していないBitTorrentサイトも多い。世界最大のBitTorrentサイトであるMininovaもトラッカーを運営してはいない*2。なのにトラッカーサイトと言われると違和感を覚えてしまう。とはいえ、私自身もトラッカーサイトという言葉の方を先に知ったということもあって、BitTorrentサイトはトラッカーを持っているものだと勘違いしていた時期があったり。
機能的側面からBitTorrent界隈の役割をカテゴライズすると、トラッカー、インデックスサイト(.torrentファイルをホストする)、メタ検索サイト、フォーラムなどに分けられる。もちろん、それらの役割が完全に独立していなくて、重複しているところがあるから、そして、それらの差異がダウンローダーとしてはそれほど大きいな違いではないために、トラッカーがなくてもトラッカーサイトと呼ばれることに違和感を感じにくいのかもしれない。
個人的にはトラッカーサイトではなくて、BitTorrentサイト(とかTorrentサイト)と言った方が勘違いを生まなくてよいのかなと思ったりもする。もちろん、BitTorrentサイトと言っても上述した4つを含んでいるのだから呼び名としては曖昧だと思われるかもしれないが、現状では、トラッカーサイトという言葉自体がそうした意味で使われているので、代わりに使ってもよいのかなと。
ついでではあるけれど、上記にあげた役割についてザックリを解説してみる。

トラッカー

新規接続者にピアのIPアドレスを教えるサーバ。誤って、インデックスサイトをトラッカーと呼ぶことも多い。

BitTorrent - Wikipedia

もうちょっと説明すると、.torrentファイルにはトラッカーへのリンクとファイルのメタデータが含まれていて、それをBitTorrentクライアントに読み込ませるとトラッカーに接続しにいって、他のピアの情報を取得し、ピア間でのファイル転送が行われることになる。トラッカーというのは、単純にこうした機能を持つサーバでしかなくて、サイトを運営せず、トラッカーのみを運営しているところもある。
ただ、The Pirate BayやSumoTorrentなどの大手トラッカーやプライベートトラッカーを運営しているところはインデックスサイトも併設していることが多い。本来トラッカーサイトというのは、こういったトラッカー+インデックスサイトを運営しているところを指していたのかなと思われる。

インデックスサイト

ここでいうインデックスサイトというのは、.torrentファイルをホストし、それをインデックスするサイト。たとえば、Mininova。ここはユーザがそれぞれ見つけた.torrentファイルをアップロードでき、それをインデックスしている。ただ、.torrentファイルはホストしているもののトラッカーは運営していない。もちろん、サイトによっては管理者のみが.torrentファイルを追加していくというスタイルもある。

メタ検索サイト

YouTorrentやPizzaTorrentのように、インデックスサイトがホストする.torrentファイルを複数のサイトにまたがって検索するサイト。たとえば、YouTorrentで検索すると、Jamendo、Vuze、BitTorrent、Legaltorrents、Gameupdates、Wortharchiving、BT.etree、Mininovaの6つのインデックスサイトがホストする.torrentファイルの検索結果を表示し、それぞれのサイトの当該ページへとリンクされている。

フォーラム

厳密に言うとBitTorrentサイトではないのかもしれないが、こういった形式のサイトも少なくないのであげておく。ユーザがそれぞれの.torrentファイルやそのシリーズごとにスレッドを立てるという形式のフォーラムが多い。専用アップローダや外部アップローダにアップロードされた.torrentファイルや、インデックスサイトにある.torrentファイルへのリンクが掲載される。.torrentファイル情報の共有という感じもする。

これらの違いが意味するもの

実際のところ、ユーザとして利用する限りにおいては、トラッカーを有しているかどうかという点や、.torrentファイルをホストしているかどうかという点はさほど問題にはならない。もちろん、.torrentファイルを作成しようとか、それをアップロードしようという時には区別しておかないとけいないのだけれども。
ただ、こうした区別というのは別の点で将来的には重要になってくることが考えられる。現在、The Pirate BayやMininovaといった大手BitTorrentサイトが訴訟に巻き込まれているが、それぞれの役割がどのように法的に解釈されうるのか、という点でその差異が影響してくるだろう。
BitTorrentサイトは、いずれも当該の著作権侵害コンテンツをホストしてないという点では直接的な著作権侵害を免れるものではあるが、現実には、現在BitTorrent上で行われている著作権侵害に関わっている部分があることは明らかである*3
トラッカーは著作権侵害コンテンツをダウンロード(orアップロード)するユーザに、別のピアの情報を提供し、その転送を可能にしているともいえるし、インデックスサイトはそれを可能にするための.torrentファイルをホストしている。メタ検索サイトはそうした著作権侵害コンテンツをダウンロードするための.torrentファイルを取得するための情報を提供するし、フォーラムも同様にそうした情報を共有する場となっている。
もちろん、現在のところは、トラッカーも、インデックスサイトも、メタ検索サイトも、フォーラムも、著作権侵害の幇助である、違法行為であると明確に認められてはいない*4。しかし、今後はこれらBitTorrentサイトの責任を問う裁判や、責任を負わせるための法改正といった議論がますます盛んになっていくだろう。そうした議論において、それぞれの提供する機能によって議論の内容が変わってくることを考えると、これらBitTorrentサイトの差異を理解しておくことは重要かなと思われる。

*1:この辺は完全に推測。

*2:第2位のThe Pirate Bayはトラッカーを有している。また、第3位のisohuntはisohuntとは別に運営しているサイトにトラッカーがある。

*3:全てのBitTorrentサイトが非合法のファイル共有に関連しているというわけではない。Jamendoは許諾を受けたCCコンテンツのみをBitTorrentにて配布しているし、YouTorrentはそうした合法的なコンテンツを扱うサイトのみをメタ検索の対象としている。

*4:一部そうした訴えはなされてはいるが