『音楽・映画好き』は海賊ダウンローダーでもあり得るし、購入者でもあり得る

英Ipsos Groupのメディア調査部門であるIpsos MediaCTは6日、違法に公開されている音楽や動画をダウンロードしているユーザーは、同時に合法的な音楽や動画の熱心な購入者でもあるとの調査結果を発表した。
 調査は1月から3月まで、欧米、ブラジル、ロシア、中国、日本、インド、UAEの計12カ国・6500人を対象にインターネットを通じて行われた。その結果、44%が音楽を、38%が動画を、BitTorrentなど「非公式」な方法で毎月ダウンロードしていた。

違法音楽・動画配信のユーザーは同時に熱心な購入者との調査結果

先日の"『音楽好き』は最悪の違法ダウンローダーでもあり得るし、最良の音楽購入者でもあり得る"というエントリにも通ずる話かも。

とりあえず…「非公式」の定義が良くわからんのだがYouTubeは入っていないってことでいいのかな?プレスリリースでもBitTorrentとかってしか書いていないのでわからないのだが、日本も調査に含めてるなら、BitTorrentじゃマズいだろうなぁ、とは思う。

って思ってたら、調査のもうちょっと詳しい概要(pdf)があるのね。そこだと

Use unofficial websites at least once a month to download or stream…

って聞き方しているから、ユーザの自己申告、認識次第って感じなのかな。で、実際のデータ見ると


プレスリリースには「44%が音楽を、38%が動画を、BitTorrentなど「非公式」な方法で毎月ダウンロードしていた」(翻訳はInternetWatchの記事より)ってあるけど、国によって大きくばらついてるんで、このまとめ方はちと乱暴かなと思う。もちろん、こういうデータをちゃんと使う人は詳細見るだろうし、あくまでも注目を集めるための煽りってとこかもね。

数字を見ると、平均よりも大幅に低そうなのは、英、米、仏、独、伊、日、一方で高かったのは露、中、平均周辺なのは西、伯、印、UAEか。ロシアもすごいがさすがの中国

ダウンロードできなかったとしても入手してた?

で、他の質問で気になったのは、「Would not have listened to the music track if not downloaded for free?」。音楽以外にも映画やゲームでも同様の質問をしていて、要は違法な手段でダウンロードできなくても、それを欲しいと思うかを知りたい、と。買うかどうか、という聞き方じゃないところとかがちょっとアレだが。ここでは、[聴いていなかったと思う/観ていなかったと思う/ゲームをしていなかったと思う]かどうか、という聞き方をしている。

結果、これらの質問にYES、つまり欲しがらなかっただろうと答える傾向が高かった*1のは、海賊率の低い傾向にある国(英、米、仏、独、伊、日)で、逆にNOと答えた*2傾向が強かったのは海賊率の高かった露、中。

この質問の回答者は非公式サイトユーザなので、その意味では条件は一緒なのだが、海賊行為が浸透している程度によって回答が異なっているようにも思える。海賊行為がより一般的な方が、それができなくとも欲しいってことなのかな?

それはともかくとして、この結果は逆に見れば、いずれの国においても非公式サイトユーザの6,7割が「「多分○○せずに終わっただろう」とは回答していないという状況なわけで。非公式サイトが、それ以外の可能性を抑制しているとも推測できる。

コンテンツにお金を支払ってる?

非公式サイトのユーザーの94%は、iTunes StoreNapsterなどの合法サイトも同時に使用しているのに対し、ユーザー全体平均では68%にとどまった。また、ストリーミングやダウンロードのために対価を支払うことに関しては、全体平均が55%だったのに対し、非公式サイトのユーザーでは69%だった。さらにCD購入に関しては、全体平均が44%に対し、非公式サイトのユーザーは62%に上った。

違法音楽・動画配信のユーザーは同時に熱心な購入者との調査結果

これは音楽だけではなく、映画でも同様の傾向が見られた、と。ただ、これは結果的にはそれぞれのコンテンツが好きな人は、公式サイト、非公式サイトのいずれも利用する傾向も高い、というだけかな。また、非公式サイトを利用する人の方が、ダウンロードやストリーミングに対しては親和的である一方、非公式サイトを利用しない人の中には非公式サイトどころか公式サイトを使用しない人もいるわけで、ダウンロード/ストリーミングに関して差が出るのも当然だろう。

この結果の売りとしては、海賊ユーザであってもお金を支払っている、というところにあるのだろうから、この辺の差異を殊更強調することもないかなとは思うけど。

コンテンツを知るきっかけは?

ラジオもテレビも映画もいずれも高い。いずれのメディアもまだ影響力はそれなりにあるというところか。ただ、ちょっと気になるのは、日本でのラジオ、映画のコンテンツの情報ソースとしての弱さ、かなぁ。特にラジオ。音楽を知る情報ソースとしてみられていない、というよりは、単純に利用されていない、ということなのだろうけれど。もちろん、4割程度なら悪くない、とも取れなくもないけどね。

雑感

うーん、購入頻度や購入額なんかも気になるけど、とりあえず、今回のデータからわかるのは、少なくとも海賊ユーザは必ずしも全く金を払ってないわけじゃなくて、一部では金を払っているけれど、一部では海賊ダウンロードしているっぽい、ってとこだろうね。

まぁ、音楽の場合は試聴代わりにダウンロードして聞いてみたけど、気に入らなかったから削除、気に入ったから購入、という人もいないでもないのだろうが、じゃあ、気軽に試聴することができるようになったとして、そういう人が海賊行為を捨てて、その新たに登場したオンラインでの『まともな試聴』を使うのか、という疑問もある。こういう調査結果からは、それもあり得るとは思うけれど、かといって海賊行為は良く慣れ親しんだ、人気のコンテンツに集中する傾向もあるわけで、一概にそうなるだろうとは言い難いところもある。

試聴以上の価値*3を海賊行為に見出している人もいるわけで、海賊行為を考えるにはそうした人の存在も考えなければならない。

*1:音楽で3割前後、ビデオで2割前後、ゲームで3割前後

*2:YESとNO以外に選択肢があったのかどうかわからない

*3:他にも絶版・絶盤を求める人もいるだろうけれど