PeerCastを利用し劇場公開前の映画を配信した男性、逮捕される

P2Pストリーミング配信ソフトPeerCastを利用し、日本では劇場公開前の映画「ウルヴァリン: X-MEN ZERO」を配信したとして、愛媛県警愛媛県在住の35歳の男性を著作権法違反(公衆送信権の侵害)の容疑で逮捕した。

YOMIURI ONLINEによると、容疑者の男性は今年6月28日午後10時25分から約50分間、PeerCastを利用し字幕付の同映画を自身のウェブサイトから配信、不特定多数のユーザに閲覧可能にした疑い。

動機については、「最新映画を見せたかった」(47NEWS)、「営利目的ではなく、自分が配信した映画を世界の誰かに一緒に見てほしかった」(YOMIURI ONLINE)と供述しているという。

PeerCastを利用した違法配信での逮捕は、全国でも初めてのことだという。

ライブストリーミングによる著作権侵害

先日、海外でも似たようなケースがあって、今年3月21日にペイパービューのボクシングの試合を無断で再配信し、2,377人のユーザに閲覧させたとして、ライブストリーミングサイトUstreamがボクシングプロモーター企業Square Ringから訴えられている(via NewTeeVee)。

こちらはユーザではなく、サービスを提供するUstreamに対して。メディア向けに送付されたUstreamからのコメントには

Ustream is serious about complying with the copyright laws and the Digital Millennium Copyright Act and we’re aggressively taking short- and long-term steps to work with the content industry to meet their needs. We believe the Square Ring lawsuit does not have merit and that we’re fully protected by the Digital Millennium Copyright Act Safe Harbor provisions.
Ustream著作権法、およびデジタル・ミレニアム・コピーライト・アクトの遵守に真摯に取り組んでおり、短期的、長期的にコンテンツ産業の要望に応えるべく尽力しています。このSquare Ringの訴訟には利点はなく、私達はデジタル・ミレニアム・コピーライト・アクトのセーフ・ハーバー条項に守られているものと信じております。

Ustream Sued by Square Ring for Copyright Infringement

とある。
一方のSquare Ringは、3月21日以前からUstreamに削除ツールの提供、またはUstreamスタッフによる監視によって、違法な配信を回避するよう書簡で求めていたものの、Ustream側はその要請を無視したのだという。また、削除ツールに関しては、Ustreamではない別のサイトでは提供されているのに、と。

Ustream以外のライブストリーミングサービスでそうした削除ツールを提供しているというのだろうか。大手だと他にはJustin、Stickam、Livestream(旧Mogulus)などがあるが、そのいずれかなのだろうか。訴状を読んでも書いていないので、ちとわからないのだが、YouTubeも提供しているんだから、というわけではないのだろう*1

事前に対策を講じるよう申し入れていることからも、原告の側はUstreamを利用してペイパービューのライブ映像を再送信されることを知っていた、つまり以前から頻繁にそのような利用がなされていたというところなのだろう。おそらく、それは国内的にも国際的にも注目のスポーツイベント、ライブイベントの再配信というかたちで行なわれてきただろうし(たとえばワールドカップ、オリンピックなど)、今後そうした目的での利用はライブストリーミングサービスの普及に従い、ますます増加の一途をたどるだろう。

こうしたライブストリーミングサービスは、YouTubeなどとは異なり、その場限りでの著作権侵害であるため、追跡することが難しく、対処しがたいものかもしれない。もちろん、事前に再配信されることが予測できる場合、定期的に海賊ライブストリーミングを行っている場合には、ある程度予測できるものではあるが、その実際にストリーミングされているリアルタイムで尻尾を掴まなければならない、という点で大きく異なる*2。もちろん、その反面、利用者もリアルタイムで視聴しなければならないために、YouTubeなどと比べると、いわゆる「被害」もそれほど広範囲にわたるものではないのだが。

今回の日本のケース

YouTubeのように、サービス側が対処しうるものであれば、その矛先はサービスに向かうのだろうが、PeerCastの場合はユーザが主体であるため、その責任はすべてユーザに向かう。さらに、そこで流されるコンテンツが公開前だったり、公開中のものであれば、やはり看過できないということになるのだろう。

ちなみに、今回の「ウルヴァリン: X-MEN ZERO」は日本では劇場公開前*3ではあるが、海外では公開済みであり、一部の国では既にDVDが販売されている*4。当然のことではあるが、既にBitTorrentでも流通しており、それを入手し、字幕がつけられたものが、PeerCastにて配信されたのだろう。その入手元は…日本国際映画著作権協会(JIMCA)の萩野正巳・広報室長が「ウィニーよりシェアのほうが怖い」と言い切るShareなのかな

*1:YouTubeライブストリーミングではない

*2:以前にNewTeeVeeのLizだったかJankoだったかが、こんな記事を書いていたんだけど、どの記事だったのか失念してしまったので、見つけた/知っている方は是非教えて下さいまし。

*3:とっくに公開されてるものと思ってた

*4:R5もの。ちなみにWorkprintも出回ったことでちょっとした騒ぎもあった。